第十四話 夏は虫の来店が多すぎます
オークは奈々子の気合いに気圧されたのかまだ動いてこない。
さてイキってみたもののどうするか。
相手は身長2メートル手には棍棒のような物。
片手で持っているし引きずってないってことは両手じゃなくても振り回せるんだろう。
棍棒の長さは1メートルくらい。
対して私は拳のみ、かなりのリーチ差になる。
だが棍棒は基本的に振り下ろしか振り回すカチ上げるの3パターンくらいしかない。
しっかり動きを見て素早く懐に入ればリーチ差は関係なくなるが左手が空いている。
もし正面の懐に入って打撃が全く効かなかった場合空いてる左手で掴まれたらその瞬間終わりだ。
それなら狙いは相手の右脇腹。
相手の間合いギリギリに入り右からくる棍棒を避けて死角に入り脇腹を叩く。
よしそれで行こう。
「スゥゥ…ハァーーー」
空手の呼吸で集中力を上げる。
そしてジリジリと奈々子はオークの間合いギリギリまで近づく。
「ブォア!」
奈々子が間合いに入った瞬間オークは棍棒を振り下ろした。
シュッ!
「オルァ!!」
奈々子は足に集中して強化魔法をかけ棍棒を交わした一瞬でオークの死角に入り狙い通りの右脇腹に正拳突きを叩き込んだ。
「ブォーー」
バキバキバキバキッドーーン!
「…え?」
「ナナコさん!?」
体長2メートルあるオークが文字通り吹っ飛んでいった。
これには奈々子も驚きでありアインツはドン引きであった。
いやいやいや怖っ!
いくら身体強化魔法って言っても限度があるでしょ!
全力で人なんか殴った日には弾け飛ぶんじゃないか…。
「てかこれやったか?」
「ブォアーー!!!」
オークが怒りながら戻ってきた脇腹を庇っている為効いてないわけではなさそうだがあれだけ吹っ飛んだにもかかわらず全然生きていた。
「とんでもなくタフだな」
そうなると意識を奪うしかないんだが首の位置は遥かに上。
またボディを打って顔を下げさせるかあるいは…。
ドォーン!!
奈々子が考えている最中にオークは棍棒を振ってきた。
ブンッ!ブンッ!
オークは棍棒を振り回すが奈々子には擦りもしなかった。
「ブァッ!」
イラついたオークは振り回すのをやめ奈々子に向かって振り下ろす為大きく振りかぶった。
その瞬間。
シュッ!
奈々子はまた一瞬で距離を詰めた。
「せぇい!」
重心のかかっているオークの右足ふくらはぎを身体強化魔法をかけて全力で下段廻し蹴りをした。
ダァン!!
「グガァー!」
オークは叫びながら膝をついた。
奈々子はそれを見逃さずに下がった顎を狙い左廻し突きを全力で叩き込む。
「チェスト!!」
ボギッ!
頸椎の折れる音がした。
「……」
オークの身体がゆっくりと前に倒れてくる。
ドサンッ。
「……」
奈々子はしばらく拳を握ったまま動けなかった。
「うぉー!
ナナコさん!
凄いです!
たったお一人でオークを圧倒するとは!
信じられないほどの速さと力でした!」
「あ、ありがとうございます。
でもそんなに余裕ではなかったです。
今も手は震えているし…生き物を殺すの初めてだったんですよね」
「……ナナコさん今すぐ割り切れとは言いませんが生きる為には何かを殺すことは多々あります。
普段の食事ですら私たちは何がしかの命を頂いているのです。
ましてやモンスターは放っておけば誰かが襲われるんです。
あなたは正しいことをしたんです。
そして生き残ったんです。
それをどうか忘れないでください」
「スゥゥ…ハァーーー。
そうですねありがとうございます」
「とりあえずオークの生死の確認をしましょう。
まだ息があれば止めを刺さなければなりません」
「そうですねまだ気を抜くのは早かったですね念のため私が確認しますのでアインツさんは下がってください」
奈々子は倒れているオークを確認した。
呼吸なし脈なし。
よし、死んでる。
「アインツさん大丈夫です」
「わかりましたではそちらに行きますね」
アインツが手に小刀を持って走って向かってきた。
「えーとその小刀はなんですか?」
「オークの魔石を取る為です」
「魔石とは?」
最後まで読んで頂きありがとうございます!




