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なりわい!冒険者です。 ~冒険者は冒険に非ず。魔物は少しものこらない。~  作者: あおぞら えす


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絡まれたので、絡めてやります!


 ジャスト・ドラムから北西の町、ギルティマ・スロンは極めて大きなドワーフ・ギルドがある。ギルドは町に一つあるのが常識だが、ドワーフ・ギルドは町の東と西の二つ存在する。二つのギルドは敵対しており、どちらのギルドも最も優れた素材で精錬すると謳っている。

 ただ、冒険者ギルドに素材を下ろせば、二つのドワーフ・ギルドは軒並みその冒険者をこきおろし、商品を売ろうとしなくなる。かといえば、どちらかに商品を卸せば、片方で買えなくなるのだ。そして、今後の買い物も、町によっては東と西のどちらかに下ろしたことが分かれば商品を売り買いできなくなる。

 難儀な町として有名だった。


「それにしても、冒険者カードを更新したいって言ったから、冒険者の宿を目指したけれど・・・。」

「ん?なんだ?」

キリはラゴットの側から離れない。

「精錬を見るのは町中ではやめたら?」

スズは呆れたように、言った。

「えー?だって、俺の師匠だからなー。みないとだめだろー?」

キリの物言いはふざけている。が、実際に見て、自分の力の一部にしたいという欲求は、ある。

「キリもこれぐらいなら、簡単でしょ?」

ラゴットは、ぷくっとほっぺたを膨らませ、怒ったように言う。が、別に怒っていないのはお互いに理解している。

「だってなー・・・。あ!ラゴット。今度はこの前精錬した『効果持続薬』を造ってくれよ。あれ、他にも応用できそうでさー。」

「キリって、どこでそういうの思いつくっすか?」

「そりゃ、魔道士だからさ!なんかこんな風にしたらどうだろ?って考えて・・・。」

「ふーん?でもそういうのはいいっすね!今度、やってみようっす!」

 二人の世界に入っているのを、いい加減、呆れて、スズは魔法を使って、二人の会話を遮るために風を起こした。

「あ!」

「あーあ。」

二人は、すぐにスズを見て、お互いに笑い出した。

「もう!キリ!行くわよ!ラゴットも!」

スズも楽しそうに笑って、二人を風を使ってほぼ強制的に自分についてこさせた。キリもラゴットも楽しそうに風に遊ばれた。

 その様子を見ていた人間は多い。その光景がただ事ではないのに、いつもの光景だと錯覚してしまうのは、噂に聞く魔道士スズが一緒にいるからだろう。

 スズが有名であったのは、第一世界に入る前の話だったが、戻ってきてからも、やはり有名になり噂がすぐにたった。スズは自分が有名だろうがなかろうが、あまり頓着しなかった。だが、ラゴットとキリという仲間ができると、あえて二人と歩調を合わせた。キリは確かに強いし、精霊のハーフという切り札がある。良い意味でも悪い意味でもその切り札がいろいろな場面で使う必要があるだろう。ラゴットに関してもドワーフのハーフという切り札がある。それはキリと一緒だが、キリと違うのは強くはない。魔法が使えるわけでもない。魔導だって使えない。その代わりに精錬という技術を持っていて、旅する仲間の一人になってくれたことは心強い。それに加えて、キリとラゴットの波長はよくあっている。二人がお互いに支えになっているのだろう。

 スズは、自分が有名人だろうが、そうでなかろうが、二人の仲間を守るために、自分を犠牲にしても良いと考えている。スズが今まで出会った守るべきものは、玉座に座る妹、だけだった。彼女の周りの敵を全て自分に向けるために動いた。それが妹の知るところであったとしても、それを貫いた。

 スズにとって唯一の守るべきものが、敵になったその時、スズは国を出た。スズにとって、彼女の真意をくみ取ることは造作ないことだった。妹がスズを敵と言った理由がスズを守るためだと知っている。姉妹が憎み合う構図を嗤ってみている貴族は、スズが国を去った事を喜んだ。愚かだ。スズがいないその国に、未来がないことを、妹は知っていた。青い瞳で精霊の婚約者。その事実は、国を傾けさせる。

 

 キリが、精霊の泉で起ったことを、スズに語って聞かせてくれた。精霊は、自分の愛した者を手放せない。スズの婚約者は今もスズを探しているだろう、と。呪いのように、精霊が欲しいと思った相手を、決して忘れないのだ。

 だから、スズのいない国は、きっと、もう、ない。精霊が怒り狂い滅亡させている可能性がある。


「なぁ、スズ!」

キリは風を自ら操って、スズの横に降りた。

「なに?」

「気になっていることがあるんだ。」

風の中もがいているラゴットを振り返ってみて、

「この世界に国はないのか?」

そのまま、スズに首を傾げて尋ねた。

「・・・国?そうね・・・。」

キリの疑問はスズも一番最初に考えたことだ。

「そんなものはございません。」

と、唐突に話を割って、声をかけられる。

 背の高い女性だ。明るいオレンジの長い髪に、綺麗な赤い瞳。背中には大きな弓を背負っていた。

「はじめまして、若い方々。わたしはセーファ・ルアン。冒険者ですわ。」

セーファはじっとスズを見つめ、すっと、手を差し出した。

 スズは差し出された手を見て、特に気にした風もなく、セーファににこりと微笑んだ。

「・・・。あなたは、魔道士スズでよろしいかしら?」

セーファは手を戻し、スズに強く尋ねる。

「・・・そういえば、キリ。今日の宿を決めた方が良いと思うのだけど。」

スズは一切、見向きもせず、キリに話しかけた。

「それならば、わたしの泊まっている宿に、まいりません?」

セーファがしつこく話しかける。

 キリは面白そうに、スズをみている。実際、スズがここまで無視するということは、関わらない方が良いということだ。キリだって、興味がない、あるいは関わらない方が良い相手は、とことん、無視して話をしない。スズがそれをする様は見たことがないので、なかなかの見物としてみていた。とはいえ、話しかけるほど愚かではない。一方のラゴットは以前、風と戯れている。スズが関わらせることを避けるために、いまだに風の中なのだ。


「いい加減、お話しを!してくださらない?」

ついに、セーファが怒号をあげる。それを聞いてか、一人、男性が近づいてきた。腰に剣の鞘を下げている。剣士だろう。

「どうした、セーファ。」

男性はセーファと同じぐらいの背丈で、並ぶと壁のようだ。スズは一切関心を抱いていない。

「こちらの方々が、お話ししてくださらないの!」

明らかに顔を赤くしており、男性に甘えている。

「・・・スズ。俺、ずっと不思議だったんだ。」

「うん?」

「道具も使ったりするってのは、やっぱり、魔法使い系って少ないんだな。」

キリは納得したように頷いた。それにスズが咳き込んで笑い出した。

 二人は剣や弓、銃といった道具は使わない。使う理由がない。ただ、第一世界に剣を使う男がいたのを二人は思い出す。ただ、彼も剣と共に魔法や魔導を用いた。剣を用いての戦闘は派手で面倒だと零していたのを思い出したのだ。とはいえ、剣士ではないのだから別に剣を持つ必要はなかった。

 スズは杖を持つことはあるが、基本は何も持たない。魔法と魔導を使える時点で、魔力を杖に練り込むような動作は必要ない。キリにいたっては、自分が魔力の塊だ。杖なんてあっても邪魔だ。

 さて、目の前の二人は、弓と剣を使う冒険者。彼らが仲間を求めて話しかけてきたのは間違いない。特に弓を扱うだろうセーファにとって、魔道士であるスズは欲しい存在だろう。

 彼らにとって、魔道士や魔法使いは裏方の存在。例えば、弓の威力を上げてもらったり。残念なことに、そういう存在としてしか考えていない。


「わ、わたしたちのこと、笑いました!?」

セーファが敏感に悪意を感じ取り、叫ぶ。

「ふふ、ふふふふ。キリ、とりあえず、冒険者の宿に向かいましょう。」

スズは笑いを噛み殺しながら、キリに告げる。

「いや、笑いが怖い!」

キリはスズの噛み殺せていない笑いにツッコミながら、歩き出そうとした。

「待て。」

そこにやはり、二人の壁が立ちはだかった。

「・・・邪魔。」

スズは、すっと無表情になって、告げる。セーファは真っ赤な顔が戻り、苛立ちを隠そうともせずに、

「さきほどから、声をかけていたでしょう?!話を聞いてくれないなら、どきません!」

と、怒鳴る。スズは耳を塞いでうるさいと言いたげにする。

「あのさ、用事があって話しかけたんだ。聞いてくれないか?」

男性は、少しだけすまなさそうに、声をかける。

「話を聞く理由がこちらにはありません。」

スズはあっさりと、きっぱりと、断った。

「なにも話しておりません!内容を聞く、ということは必要でしょう!」

セーファの必死さをみて、キリは欠伸をした。そもそも押し問答しても無駄。スズもキリもそろそろ、面倒になっている。

「必死に求めているのに、聞く気もないっていうのは、どうかと思うぞ。」

男性もだんだん苛々し始めている。スズはそんな彼らを一切見向きもせずに、キリに視線を向けて言う。

「ね、キリ。」

「ん?」

「私、そろそろ、限界。」

スズが、ようやく諦めてキリに手で何かのジェスチャーを送る。

「え?あぁ、良いけど。おーい、ラゴット!」

ラゴットは風に守られている。二人の会話を見ていたが、声をかけられて、

「なんっすか?」

と応えた。

「お前の持っている中で、一番強力な『効果持続薬』を貰えないか。」

ラゴットは、キリの一言ですぐに理解した。

「ほいっす!」

ラゴットは自分のポケットからとある小瓶を出して渡した。

 キリはそれを手に入れると、にっこりと笑い、

「じゃ、お二人さん、さようなら!」

と言って、瓶を地面に割った。瞬間、もわもわっと煙が立ちこめ、セーファと男が咳き込みながら、怒声上げていた。

 スズとキリはそのまま走り去り、ラゴットも風の守りに守られながら連れて行かれた。



 二人は冒険者の宿に着くと、ざわざわとごった返している建物の中の一つ、冒険者カード更新カウンターの前に来た。

 カウンターの前には人はいないが、大きな岩が置かれ、そこに冒険者カードとその横に手をかざす何かの装置が置かれている。滅多に更新しないか、してもたいして上がらないから人がいないのかは、わからない。

 キリは躊躇なく、カードを置き、そのまま手をかざした。難しい操作もないからか、最初は何も起きなかった。だが、徐々に岩が浮き上がり、すごい音が鳴り響き、慌ただしくギルド職員が駆けつけて、あたふたと書類を出したり、別の職員が他の職員を呼んだりしている。

 岩が元の位置に戻る頃には、数人の職員がカウンターの前に立っていた。

「なんてこと!一番下のレベルから、一番上に・・・!!!!」

一人がカードを確認して、震えて立ったまま気絶した。

「わー、キリ。やったね!」

スズが棒読みでキリを称えた。ちなみにラゴットはそうなるだろうなーと考えていた。

「うーん・・・。面白いな、この装置。」

キリは装置に興味を持った。ラゴットはそうなるだろうなーと考えていた。

 三人がそれぞれの感想を抱いたところで、キリはカードを受け取って、冒険者の宿を出た。出るときはいろいろな人がじろじろと見ていたが、三人の醸し出す雰囲気で声をかけられる強者はいなかった。

 ただし、出た途端、あの二人が待ち構えていた。当然だが、二人の顔が黒くなっているのは先ほどの道具のせいだ。良い感じに未だにひどい顔だ。

「さ、さっきのことは許してあげる!だから、話を!」

「許すも何も、別に、戦っても良いですよ?」

スズは少し楽しそう。なんなら鼻歌を口ずさんでいた。ラゴットは先ほどのアイテムの結果を見て満足そうに納得している。キリは次はなんの道具を使うか考えていた。

「た、戦う?!そんなことをして、誰も喜びません!」

セーファは首を振った。それはそうだ。戦って喜ぶのはスズやキリだろう。

「じゃあ、勝ったら話を聞いてあげる。」

スズはようやく、そう告げる。すると、剣を携えた男性が前に出た。

「では、俺と。」

男性が鞘から剣を抜いた。綺麗な黒い剣だ。

「一応、名前を名乗ろうか。キリだ。」

 スズが前に出ようとして、キリが遮った。キリもたった今、最高レベルになったのだ。スズが待ったをかける理由はない。

「キリ!道具はいらない?」

ラゴットが後ろから尋ねる。ラゴットはキリの魔法や魔導を見る機会があまりない。その辺の魔物を倒しまくるぐらいには強いことを知っているが、彼が持つ魔導をまじまじとは、見せてもらっていない。スズですら魔導と魔法を使って倒す。キリが魔導だけで戦うことが多いと知ってからは、より、キリの魔力を見たいのだ。

「・・・あぁ。」

キリは目の前に立つ男性をじっと見た。

「オーヴェンだ。」

彼、オーヴェンはそう言うと刹那、キリに切り込んだ。その瞬間恐ろしいほどの魔力がオーヴェンの剣に注がれた。彼の剣が魔剣だということに、このとき、ラゴットは気がついた。そして、ラゴットは、はじめて他の魔力操る存在を知った。

 キリは魔導を使った。唱える時間はいつも以上に選んだ。相手の持つ魔剣は、精霊が魔力の祖だと知っていただろうか。もしそうなら、相手が最も苦手な相手だと気づかなかった。キリは魔剣を操作した。自分が望む場所に向かうように。剣はオーヴェンの手から離れ、スズの手に渡った。それはもう、一瞬だ。瞬く間に移動し、キリは、

「ガイロス。」

と魔導を唱えた。地面から蔓がのび、二人を締め付けた。

「きゃぁ!!」

「くっっ!!!」

二人がじたばたと暴れる。

「け、剣を返せ!」

オーヴェンが剣を見る。スズはいつの間にか手にした魔剣をじっとみて、

「キリ。私、剣士にはなりたくないわ。」

そういって、剣を元の鞘に戻した。それもまた、魔導だ。ラゴットは二人の仲間を交互に見た。お互いがすべてシナリオの通りになったみたいだった。

「ラゴット!いきましょ。」

スズはにっこりと笑ってラゴットを引っ張った。

「っす。」

ラゴットも大きく頷いて走り出した。二人の背中は大きくて、温かい。スズはラゴットとキリ以外の仲間を欲しない。ラゴットは仲間だと、もう一度自認した。



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