それでも
……やっぱり、“ソウマ”には色々と頭のネジが外れてるというか、自分の心配をしなさすぎる所があるらしい。そして、……あまりにあっさりとした結末すぎて、なんだか悲しい。
現に、目の前にいるキャプテンは、自らの死の事なんて気にも留めずに、功績について悠々と語っている。
なんだか、胸の奥のざわめきを誤魔化したくて、俺はその音を聞いていた。
ようやくイルカの国に辿り着いて、船から下ろしてもらった時には、ソウマさんは元に戻っていた。
「いや〜、それにしてもすごいキャラ変でしたね」
「……内側で見てたけど、結構恥ずかしかった……」
「……でしょうね。そういや、何かありそうなんですか?」
イルカの国はやっぱり色々と違うようで。狐の国より蒸し暑すぎるし、店で売ってる食べ物もなんだか見慣れない。
「……暑いね」
ソウマさんは俺の質問が聞こえていなかったのだろうか?まぁいいけど。
「そうですね……」
俺はソウマさんの後ろをゆっくり歩く。顔は見えない。でも、やたらと歩くのが遅い。
「……大丈夫ですか?」
「ん?……あ、うん」
なんだか返事も覚束ない。俺は不安になってソウマさんの横まで行って表情を見る。
「……ソウマさん?」
ソウマさんは遠くを見るばかりで。このまま消えてしまいそうだった。だから、俺は耳元で、
「クンさん」
途端にソウマさんはこちらを向く。
「え、あ、うん。どうしたの?」
「大丈夫ですか?、」
「……ごめん、ちょっとボーッとしてた」
「なら良いですけど、」
本当は、ちゃんと教えて欲しい。俺に話して何か変わる訳じゃないけど、俺の前でくらいは吐き出して欲しい。……重いか。
ソウマさんは歩いて行く。多分、フォニックス……特にフウワさんの元に、一刻も早く戻りたいって想いがあるんだろう。
俺よりずっと小さいその背中に、どれだけのものを背負っているのか、俺は知らない。
でも、ちょっとくらい背負わせて欲しいと思うのは、傲慢だろうか。
まだ歩みは止まらない。
胸の奥のざわめきが、さっきよりも鮮明にやって来る。それと同時に、頭が氷のように溶けるような心地がした。
ソウマさんが足を止めた場所は、一見なんの事もない湖畔だった。
「着いたよ、ありがとう」
「ですね」
……ありがとうの返し方が分からない。どういたしましてと言えば良いのに。
「……コウ」
「なんですか?」
「帰りたかったら、コウだけでも帰る?」
それは、きっと今日一日思い悩んでいる俺に対する優しさ。でも……なんだか悲しかった。




