英雄
「で?なんでライオンのお前がここに来たかった訳?」
「貴様、俺の様な人間が自国しか知らず生を終えるとでも思ったか?阿呆も大概にしろ」
「なっ……。それぐらい分かって聞いてんだよ!」
「そうかそうか。まぁ、阿呆の為に優しく、特別に教えてやろう」
その台詞には少し腹が立ったけど、ここで乗ってしまえば思う壺だ。
「そうかよ。おありがたいこった」
ソウマは楽しそうに武勇伝を語り出した。
軍人の次男坊として生まれ、そのまま親の様に軍人となった。本人はそれを誇りに思ってるみたいだ。
で、初めての戦争でここら辺の島々を舞台に戦い、大いなる武功を立てて死んだ……と。
「どうだ?貴様の様な人間では十回生まれ変わってもこんな経験はできまい!」
「別にいらねーよ、そういう類の経験は」
「変わった奴だ」
「俺はソウマさんの役に立てたらそれで良い」
「ほう……余程気に入っているらしいな。俺にはこの子狐の良さなどさっぱり分からんがな!」
「一言二言余計だ!あとソウマさんはもう成人してるぞ!」
「……これでか?」
「……言いたい事は分かるけど、本人も気にしてるんだよ」
「……そうか」
どうやら、全く人の気持ちを理解しようとしない様な奴ではないらしい。
「言っとくけど、ソウマさんはすげーんだからな?そりゃ、お前と比べたら弱いかもしれないけどさ……根性と優しさだけは、誰にも負けねぇ」
ソウマはニヤリと笑った。
「貴様、随分とこの狐に惚れ込んでいる様だな。……まぁ、久しぶりに面白い奴に会った。からかい甲斐があって助かる」
「なっ……」
最後の言葉にはカチンと来たが、今回のソウマには、どこか芯がある気がした。
この男は、周囲の環境の影響を大いに受けながらも、あたかもそれを自ら選び取った様な英雄伝に変えて見せたのだ。
『ソウマ』たちは、不遇な運命に流され、行き場の無い感情を膨らませた結果ソウマさんの体を乗っ取れるまでになった存在だと思っていた。でも、それはちょっと違った。
運命に流されても尚、自分を見失わず最期の最期まで闘い抜いた英雄だっていたのだ。
ソウマは辺りを見回していた。
「なぁ」
思わず、その背中に声をかける。
「どうした、阿呆」
「お前は、カッコイイよ」
「貴様も少しは見る目が養われた様だな。まぁ、貴様には一生追いつけまい」
「そーですか。俺は俺らしく、俺の人生を満喫してやるだけだ」
「阿呆の考えそうな事だ」
「あと俺は阿呆じゃない。コウだ」
「何を言う。阿呆は阿呆だろう」




