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第38話 新しい扶助台帳
事件の処理が一段落すると、私は新しい扶助台帳の様式づくりに着手した。
今回は最初から、消しにくい形で作る。
受益者欄には本人確認日を併記。停止・変更は理由書添付必須。月末には公会堂で読み上げ、写しを公証室と修道院に二重保管。倉庫鍵は修道院長と受益者代表が一本ずつ持つ。
「代表は私たちで選んでいいの?」
マルタが驚いた顔で訊く。
「あなたたちの生活の台帳です。選ぶのも当然です」
受益者たちは相談の末、マルタとブルーノを共同代表に選んだ。成年で、字が読めて、何より黙らない二人だ。
私は新しい帳簿の一頁目へ、アーデルハイト伯爵夫人の設立趣旨を転記する。
『扶助は生活の再建を支え、沈黙を買うためのものではない』
その横でフリーダが小さく笑った。
「最初からこう書いてあれば、変な実務家が嫌がりますね」
「嫌がらせるために入れるの」
答えると、皆が少しだけ笑った。
正しい仕組みは、派手ではない。
けれど一度整えば、誰か一人の善意に頼らずとも回り続ける。
私はインクが乾くのを待ちながら、ようやく胸の奥の重みが少し軽くなるのを感じていた。




