第31話 減刑嘆願と新しい依頼
翌朝、公証机の上に二通の封書が置かれていた。
一通は、やはりレオポルトからの減刑嘆願。もう一通は、前日の相談会で集まった受益者二十六名の連名による新しい依頼書だった。
『信託財産の仮差止めを求めます』
私は先にレオポルトの手紙を開いた。相変わらず美しい言い回しで、自分は軽率だったが悪意はなかった、どうか昔の縁に免じて証人になってほしいとある。
末尾の文言を読んで、私は金庫室で見た透かし紙を思い出した。
『事情を酌量し、将来給付をもって調整願いたい』
この回りくどさ。療養契約や払出指図書の末尾と、妙に似ている。
「王都で使っていた文案を、こっちでも誰かが流用している」
私が言うと、フリーダが眉をひそめた。
「気取った責任逃れの文章って、案外出身地が出ますね」
私は嘆願書を閉じ、未開封箱へ戻す。返答は変わらない。
「私はもう、誰かの都合を整える証人にはなりません」
その代わりに取ったのは、連名依頼書のほうだった。
二十六名分の署名は、震えていても確かに本人のものだ。しかも全員が成年で、自らの生活を守るために仮差止めを求めている。
私は新しい様式紙を広げる。
「ではこちらを優先します。仮差止証書を起案しましょう」
ディートリヒが机の向こうで頷いた。
「領主命令も添える。もう証拠を逃がさない」
過去から来た紙は未開封箱へ。今を守る紙は、私の机の中央へ。
その順番は、二度と間違えない。




