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第18話 鉱山権の真の相続人
辺境へ戻った私は、その足で領都の公会堂へ向かった。
王都公証院の決定書と、修道院の養子縁組証書、そして相続税台帳の復元版。必要な紙は全部揃っている。あとは正式な継承宣言だけだ。
公会堂には鉱山労働者たちも集まっていた。彼らにとって、名義の問題はそのまま賃金と生活の問題になる。
「イザーク・ヘルマン」
私は壇上から名を呼んだ。
「故ハルトムート・ヴァイス子爵の正式な養子として、鉱山権の第一継承者であると認めます」
イザークはしばらく動かなかった。やがて深く頭を下げ、掠れた声で言う。
「……俺一人で持つつもりはありません。子爵様が残した補修基金も、採掘夫の家族手当も、そのまま守ります」
その言葉に、会場のあちこちから安堵の息が漏れた。
ディートリヒは領主として監督権を引き受け、私は新しい相続証明書と基金管理契約をその場で作成した。誰かの思惑で消されかけた未来を、今度は正しい書類でつなぎ直す。
式が終わった後、イザークが私へ近づいてきた。
「あんたが来なければ、全部奪われてた」
「私一人では無理でした」
そう言って、私は少し離れた場所に立つディートリヒを見る。
彼は相変わらず表情が薄い。けれど私が視線を向けると、ほんの少しだけ頷いた。
あの小さな仕草が、今は誰よりも信じられる。




