表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/40

第18話 鉱山権の真の相続人

辺境へ戻った私は、その足で領都の公会堂へ向かった。


 王都公証院の決定書と、修道院の養子縁組証書、そして相続税台帳の復元版。必要な紙は全部揃っている。あとは正式な継承宣言だけだ。


 公会堂には鉱山労働者たちも集まっていた。彼らにとって、名義の問題はそのまま賃金と生活の問題になる。


「イザーク・ヘルマン」


 私は壇上から名を呼んだ。


「故ハルトムート・ヴァイス子爵の正式な養子として、鉱山権の第一継承者であると認めます」


 イザークはしばらく動かなかった。やがて深く頭を下げ、掠れた声で言う。


「……俺一人で持つつもりはありません。子爵様が残した補修基金も、採掘夫の家族手当も、そのまま守ります」


 その言葉に、会場のあちこちから安堵の息が漏れた。


 ディートリヒは領主として監督権を引き受け、私は新しい相続証明書と基金管理契約をその場で作成した。誰かの思惑で消されかけた未来を、今度は正しい書類でつなぎ直す。


 式が終わった後、イザークが私へ近づいてきた。


「あんたが来なければ、全部奪われてた」


「私一人では無理でした」


 そう言って、私は少し離れた場所に立つディートリヒを見る。


 彼は相変わらず表情が薄い。けれど私が視線を向けると、ほんの少しだけ頷いた。


 あの小さな仕草が、今は誰よりも信じられる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ