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第17話 偽造遺言を作った手

最終審問は、想像していたよりずっとあっけなかった。


 レオポルトは最後まで、自分は正しい修正をしただけだと主張した。叔母の意思を反映し、辺境の遺産も適切な相続人へ流しただけだと。


 だがセレスティーヌの供述、工房帳簿、送金記録、そして私が示した旧印式の分析結果は、その言い訳を一つずつ潰していく。


「君は感情的すぎる、ユリア」


 苦し紛れにそう言われて、私は静かに書類を閉じた。


「感情ではなく、手順です」


 それは最初に辺境で言った言葉と同じだった。


「あなたは叔母の追補証書を抜き取り、私の旅程が王都にない日を狙って偽造遺言を差し替えた。さらに辺境では、マルグリットの偽婚姻証書と子爵の偽追補遺言を作らせ、鉱山権をエルンスト商会経由で掌握しようとした」


 私は最後の一枚を掲げる。


「この印章受領証には、あなた自身の補助署名が残っています。癖まで消せなかったようですね」


 審査室の空気が止まった。


 レオポルトの肩から力が抜ける。整えられた髪も上等な上着も、その瞬間だけひどくみすぼらしく見えた。


「……少しだけ、書類を整えたかっただけだ」


 彼の吐き捨てるような言葉に、私は唇を結ぶ。


「君は正しすぎた。あのままじゃ、何も手に入らなかった」


「だから人の人生を盗んだのね」


 レオポルトは答えなかった。


 最終的に、彼は公証職剥奪と勾留処分。マルグリットも偽証と詐欺未遂で拘束された。セレスティーヌは自白と証拠提出により減刑付きの監視処分となる。


 審問が終わった後、院長は私の前に小箱を置いた。


「ユリア・ブラント。あなたの公証印を返還する」


 蓋を開いた瞬間、胸の奥で何かがほどけた。


 奪われたものが、ようやく自分の手に戻ってくる。


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