第16話 王都公証院への帰還
王都へ戻った日、私はまっすぐ公証院へ向かった。
同行するのはディートリヒ、イザーク、そしてフリーダ。辺境から持ち帰った証拠箱は三つ。中には偽造印章の受領証、相続税台帳の写し、養子縁組証書、工房帳簿、封蝋片が詰まっている。
公証院の石階段を上ると、懐かしさより先に怒りがこみ上げた。ここで私は、何もしていない罪を着せられた。
だが今の私は、奪われるために戻ったのではない。
審査室では、院長と数名の上席公証人が待っていた。私は最初に叔母の偽造遺言を示し、その後で辺境の相続争いへつながる共通手口を説明した。
「旧書式の流用、複製印章、差し替えられた追補証書、そして同一商会を通じた資金移動」
証拠を並べるほど、室内の空気が重くなる。
「被疑者として名を挙げるのは」
院長の問いに、私ははっきり答えた。
「レオポルト・エアハルト。マルグリット・ゼーリヒ。ならびに共犯の可能性が高いセレスティーヌ・ローヴェとエルンスト商会関係者です」
その瞬間、扉が開いてセレスティーヌが入ってきた。青ざめた顔で、彼女は私ではなく証拠箱を見ていた。
「……全部、出たのね」
私は黙って彼女を見つめる。
彼女は椅子へ崩れるように座り、小さな声で言った。
「レオポルト様に、あなたの屋敷を手に入れたら結婚してくれると……言われていたの」
やはりそうかと思った。怒りより先に、ひどく冷めた気持ちになる。
「でも私は、公証印の複製までは知らなかった」
「知らなかったでは済まないわ」
私がそう返すと、彼女は泣きながら頷いた。
「だから話す。全部」
王手がかかった音を、私はたしかに聞いた。




