表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/40

第13話 印章工房の帳簿

領都へ戻った私たちは、王都と取引のある印章工房を調べた。


 工房主ヘルムートは最初、何も知らないと繰り返した。だが工房の帳場に残る受注台帳と、私が持参した発注番号を照合すると、顔色が変わった。


「この番号、覚えがありますね」


 私が言うと、彼は汗をにじませた。


「……ただの複製依頼でした」


「公証印の複製が、ただの依頼で済むと思っているのですか」


 静かに詰めると、ついに彼は帳簿の隠し引き出しを開けた。


 そこには、王都エルンスト商会名義の支払い控えと、マルグリット側近の署名入り受領証が挟まっていた。しかも注文品目には『縁欠けなし・旧型教会印模造・子爵家私印補修』とまで書かれている。


「誰に指示されたの」


「王都の……レオポルト様の使いからです」


 ヘルムートは崩れ落ちるように答えた。


「借金を肩代わりすると言われて、断れなかった」


 私は受領証を丁寧に封筒へ入れた。


 証拠は揃った。偽造遺言を作ったのは偶然重なった複数人ではない。一つの意志のもとで動いた共犯関係だ。


 工房を出たあと、ディートリヒが足を止める。


「これで終わりに近づいたな」


「いいえ。終わりではなく、やっと王都へ戻れるだけです」


「戻るのは辛いか」


 問われて、私は少し考えた。


「辛いです。でも、奪われたままにするほうがもっと嫌です」


 私の答えを聞いた彼は、ほんの少しだけ顎を引いた。


「なら、最後まで付き合う」


 その言葉は短かった。けれど契約書のどの文言よりも、頼もしく感じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ