さぷらいずふぉーゆー
十二月二十五日、世間で騒がれるクリスマス。
極楽塔もまた僅かな喧騒を過ごした後、朝を迎えていた。
クリスマスプレゼントはないが健やかに起床してアカリは起き上がる。
「朝ごはんの準備をしますか。」
眠いは眠いが特に朝が弱い訳ではない、むしろ寝覚めは良いほうだ。
朝のキッチンは心が踊る、ヒカリは大事な朝一番の行動を決める事が好きだった。
「食パンとツナがあるのでツナサンドにでもしましょう。」
昇る朝日を見送り一人キッチンでいる静かな時間を久しぶりに過ごす、病院ではベッドで、昨日は床でエイナと一緒に寝ていたからだ。
冷蔵庫を開いて悩む時間も調理器具を用意する時間も懐かしい。
「エイナが起きるのはもう少し後ですかね。」
そんな日常も今は同居人がいる、少しだけねぼすけなエイナの可愛い寝顔に思いを馳せながら変わりない朝を始めた。
「おはようございます、ヒカリ。」
だが今日は寝室からゆっくりとエイナが姿を現した、可愛いらしく用意されたパジャマを着て、眠い目を擦りよたよた歩く。
「珍しくお早いですね。」
病院でもなかなか起きなかったエイナが朝にこうして二人でいることにびっくりしながらも朝ごはんを用意しだす。
「起きてしまったので頑張ろうと……」
最短で椅子に座ってテーブルに突っ伏せた、その様子に苦笑しながら二人ぶんのランチセットが並べられる。
「一つ良いですか?」
「なんです?」
「あなたは誰ですか?」
「なんだ、もうバレてたのかよ。」
何も変わらぬ様子で腕に顎を乗せたまま少女はあくびをした。
「エイナじゃないですよね。」
「んー、オレ自体はエイナなんだけどな?」
姿も、声も、似ているどころか同一に見えるのに少し荒い口調で話す少女にヒカリはじっと目を合わせる。
「どういうことですか?」
疑問は尽きない、何なぜどうしてがありすぎてヒカリはどうして良いかを一個づつ質問し始めた。
「落ち着けよう、と言うか良く分かったな、髪の本数から爪の長さまで同じなのに。」
「そこはまあ、勘ですね。」
「敵だと思わなかったのか?」
拍子抜けしたように少女は朝ごはんに手を伸ばす、完全にゆるい空気で場は進む。
「エイナ(仮)が敵な訳ないじゃないですか。」
「真顔で言うなよ。」
なんだか面白くないと不服そうにそっぽを向き、口をとがらせる。
「それであなたはなんなんですか?」
「ま、一言で言えば影法師だ。」
あっけらかんとする事実を軽く言う。
「説明すると長いんでお姫様……エイナが起きてからにしようぜ。」
「なんかすごい気になることが。」
さらっと流されヒカリが驚く、絶対軽く流せない情報が耳を通った。
「気にすんな気にすんな、とにかくよろしくなヒカリ。」
「どうしましょうかねこれ。」
何もかも分からないがとにかく同居人が一人増えた事にヒカリは頭を悩ませる事に成った。
「それでなんて呼べばいいんですか。」
朝ごはんを食べ終わりすっかり元気になりラジオ体操をしている少女にヒカリは問いかける。
「オレはエイナだぞ、それ以上でもソレ以下でもない、だがお姫様とは同一人物であっても同一存在ではないややこしい存在なのだ。」
見分けがつくようにか片目が隠れるように前髪を下ろした少女はヒカリの方を向きビシッと決めポーズを取る。
「そのままエイナと呼ぶ訳にも行かないですからどうしましょう。」
「主人公の中に眠る力を貸してくれる系人外が最も近いと評判のオレだが呼称等は特にないんだ、好きに呼べ。」
はしゃぎながら愉快なトークで少女は笑う、そこはエイナとは似つかない。
「じゃあ仮に名前をつけるので最も近い存在から取ります。影法師なんですよね?」
「そうだ、別人格とかペルソナなんかじゃないただの影法師、シルエットってやつさ。」
ニヒルと笑えば逐一決めポーズを変えている。
「ではシルエ、そう呼びましょう。」
「……いいね、気に入ったこれからオレはシルエと呼んでくれ。」
今日一の笑顔で少女、シルエは両手をブイにしてギャルピースで胸を誇った。
短くて
今章の主題はエイナの秘密
エイナの秘密の鍵を握る影法師もといシルエちゃん
まあ出てきた所で暫く日常回ですが
明日更新




