トクベツ
「確定ではないですけどおそらくは、流石おばあちゃん、話が早いですね。」
「今更じゃ、エイナの事は知らんがヒカリが言うならそうなんじゃろう、信じてるだけじゃよ。」
難しい話ではなく、ヒカリの事を疑わず受け入れているだけ、家族としてアカリは言いたいことも何となく理解しているし聞き手に徹する、言いたい事は伝わっているからだ。
長く生きているとその場の雰囲気で察する事が多くなるものだなとアカリはため息をつく。
超人的な感覚を持つ親しい魔法少女同士はコミュニケーションでもこうして言葉足らずでも何となくでも話が繋がる、アカリは年の功もあるが……
「それでエイナに足りないものは間違いなく自尊心ですね……」
「気遣いがいる部分か。」
エイナにないものは自分を慮る心、でなければあんな発言でないだろう、幸せになる資格がない、不相応だと、自分が傷ついてでも辞めれない心の自傷行為、些か自罰的過ぎる。
「生まれ持った性質にしては穴がデカすぎます、一人にしたら誰に頼る事もなく死んでますよ。」
「そんなにも……」
二人で今は健やかに眠るエイナを見る、呆れるように、だが心配を含んで複雑な感情を向ける、誰かの為に頑張れる彼女が自分の為に動けるといいなとヒカリは願う。
「私達はやはり人としては欠けてますね。」
「エイナも魔法混じりならそうなのじゃろうな……」
同族故にその悲哀は痛いほど分かる。
シラユキヒカリは魔法少女である、色々怪しい部分はあるが定義上は外れていない、何せ人間性の欠落は関係無いからだ、人間らしくあらず魔法少女として完成している。
シラユキヒカリは人外である、否、確かに人間の血を引いている、人と交わることもできる、ただ生れつき魔法が使える半人半魔とも言えるたった一人の、一人だった希少種だ。
エイナは自覚が無いようで確信はないがここまで似ていればどうだっていい、誰も気にしないだろうから。
「エイナは何も知らないでしょうけどね。」
魔法を知らない新人魔法少女なのに既に四等星レベルの力を持つチグハグさにエイナはどうやって生きていたのか不思議になる、ここまで自身の異常性に気付かない事はあるのか。
「知った所で何も変わらないのじゃ。」
異常性をエイナが知ったところで意味もない、無意識に魔法が使える?意識的に出来れば変わらない、生まれた時には魔法が使えた?他の魔法少女もいるのに価値はないだろう、結局特別であれど魔法少女がいるのにだからなんだと言う話だ。
「胡乱な会話も切り上げましょうか。」
「とりとめのない話じゃったしのう、まあなんとなーく分かったのじゃ、エイナには気を配るが魔法の使用はほどほどにするんじゃぞ。」
正座から立ち上がりアカリは部屋を去る、元々気になったので見に来ただけなので長居するつもりはなかった。
バタンと扉が閉まりまた二人だけの時間が流れる。
「うまく話せませんでしたね……」
いきなり考えなしにしゃべったものだから纏まらないなと反省する、聞き手がおばあちゃんで助かった。
「……」
何をする訳でもなくただ過ごす、まっさらな部屋で静寂が支配する。
「……当分起きませんねこれ。」
じまじまとエイナのお顔を眺めるがぐっすり快眠だ、魔法を使えるとしても己の魔法以外は異相変装もそうだが細やかな魔法しか使えないが、いかんせん相性が良すぎた、ヒカリはエイナの影響を強く受け、また逆も然り、ちょっと仮眠させるだけの魔法が深い眠りに落としてしまうまで効いた。
「いつ起きますかー?」
返る言葉はなくほっぺをむにむにする、この程度では起きないのを良いことに分かってやっている、エイナが照れてさせてくれないなーと思うことを今存分に堪能している。
「出会った時を覚えていますか?」
これ幸いと独白、聞かれるとちょっぴり恥ずかしい話を誰に対してでもなく一人語り出す。
「実は初めて出会ってとっても驚いていたんですよ?だってこんなにかわいい魔法少女に会うなんて思わなかったから、ドキドキしました。」
エイナが生で魔法少女ヒカリを見て気絶しちゃったようにヒカリも感銘を受けていた。
「エイナが気絶して抱っこして運んでる途中にですけどね、気付いたんです、このあたりの魔法少女じゃなかったですし劇的な出会いだと。」
きっとそれはエイナが思う以上に深く、重く、理解しがたいような思考で作られた心。
「病院に運ぶべきでしたがどうも予感がしたんです、このまま二人でいた方が良い気がしてそのまま協会に行ってしまいました……私の悪い癖です。」
ヒカリもまた欠けている、普段は良心を持って行動する魔法少女の鏡だが、直感が働くとどうしても止まれない、法も論理もなによりも優先して信じた運命に従う狂気、ヒカリ自身も認める欠点。
「それでもやめられないですけどね。」
魔法少女として活動するまで封印していたが一度とんでもない事件に巻き込まれてからは超直感に頼りっきりで解決してきた、理由なしに動くなどあり得ないがヒカリからすればそっちの方が自然なのである。
「その後は夜神さんと会いましたが、相変わらず意味深な事ばっかりで大事なこと言わないですもん。」
一つずつ思い返す、今となっては懐かしい記憶にかこつけて顎をつつーっとなぞり輪郭を確かめるようになでる。
「そして二人で家に行って風呂に入り……ちょっと思い出すと我慢が効きそうにないです!」
膝枕をやめエイナの脇の下に手を入れてひょいと持ち上げてすっと立つ、衝動的に行動してもそっと起こさぬよう丁寧立ち回り。
「ここで耳を噛んだら怒りますか?怒るでしょうね。」
止める者は誰もおらず、ヒカリの理性だけがストッパーの危険な状態、ゾクゾクとする絡みに妄想を馳せては自己解決する。
「起きないなら仕損ですし我慢、我慢です、どうしてこんなにエイナは愛しいんですか?ずるいです、食べちゃいたいくらい可愛くて勇気があるって無敵ですね。」
ギリギリ耐えた興奮に留まる事なく言葉を紡ぐ、溜まった物を吐き出せるまたとない機会に思う胸中を全てさらけてエイナを抱きしめる。
「世の中ややこしいことばっかりです、マジルガは訳が分からないし夜神さんも秘密主義で全然教えてくれないしで大変です、エイナも聞けばちんぷんかんぷんでしょうけどどうかそのままでいてください。」
ヒカリからすれば自身に巻き込まれた事情など欠片も興味がない、人を助けるのに必要ならことではないし知った所でどうにもならないならエイナには無垢でいてほしい、彼女は気にしてしまうだろうから。
「ややこしいことは大人に任せましょう。」
アカリもそうだが協会には頼りになるベテラン魔法少女がたくさん居る、三十年の歴史を持つ魔法少女のプロフェッショナル達だ。
「憂いなく現役が活動出来るようにと夜神さんも言ってましたし。」
エイナは知らないだろうが入院している内に色々あった、事情聴取が終われば協会の人が大騒ぎ、トップの黒咲夜神まで出てくるはめになり大事だとヒカリは思いながら夜神の宣言を振り返る。
「休んでいろと言われるているのでエイナ吸いしかやることないです。」
日課のマジルガパトロールも出来ないので抱きしめたエイナの髪に顔を埋めて深呼吸、結局それに尽きる、うだうだ言ってもすることもなくエイナを堪能するばかり。
「……起きるまで一緒に寝ましょうか。」
まっさらな床に寝転んで、体の上にエイナを乗せたまま仰向けになる、随分軽い抱き枕だと感じがらエイナがいれば硬いフローリングでも地獄でもぐっすり眠れるなと思う。
「おやすみなさい。」
今だけはこうして二人で居ることがなによりだ、問題は山積みだがエイナとなら大丈夫だろう。
愛しい愛しいエイナ、純粋で無垢で魔法少女に憧れる普通じゃない少女、シンパシーを感じる同類に都合が良すぎて夢かと疑っても真実だった、誰にも理解されることのない孤独を埋めたのは貴方です。
友愛、親愛、恋愛、言い表せないトクベツに私は囚われてしまいました。
そして、明日に笑いあえたら良いなとヒカリは瞳を閉じた。
すぐに書かなくなるなこいつ
日常回とは
これねじ込むタイミングここしかなくて
重要そうで重要じゃない少し重要な情報
明日に更新したい
次クリスマス回なんで




