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魔法少女の光と影  作者: 生姜焼き
陰陽コミュニケーション

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奇跡の朝


 言伝のマジルガと魔法少女が戦った地点から数十km、一際目立つネオンが輝く高い電波塔の上で人影が見える。

展望台の更に上、人が立ち入ることのできない文字通り天辺にその少女は居た。


「いい景色ですね。」


 地上より強い風が吹き付ける中でも、悠々としゃがんでいる、微塵も落ちるなど考えていない。

装いも冬の寒さを感じさせる夜にはあまりにも頼りない、半袖のワンピースに麦わら帽子のラフな服。

日本人離れした銀色の髪に、真っ赤な瞳、異国の雰囲気をかもした少女。


「ふーむ、決着が付きましたか、言伝のマジルガは負けた様ですね。」


 その瞳はここから遥か先の魔法少女に向けられている、常人ではあり得ないほどの視力、彼女は正確に事態を見ていた。


「最弱だったのに良くやったと言うべきか先走ったと言うべきか……残念です。」


 小さく思い返す、言伝のマジルガに協力してやったのにこの結果はいかがなものかと首を振る。


「しかしああ熱望されて断るのも違いますからね……」


 ただ見ていれば良いものを電話を始めあの場所に送ってくれなどとは理解できない、しかし言伝のマジルガとして話したかったのだろう。

だから要望に答え彼女達魔法少女の元へ移動させた、()()()マジルガであるが故に気持ちは痛いほど分かる、己の欲望に逆らえるものでは無いから。


「負けた割には悪くない顔してますね、成仏出来そうで何よりです。」


 影に沈みゆく言伝のマジルガを見て小さく微笑む、後悔ばかりでないことに安堵した。


「死出の旅路を見送るのも私の役目ですか、大した事は出来ませんがせめてのもの手向けです。」


 いつの間にかその手にはアイリスが握られていた、小さな手を離せば風に吹かれ散りゆく。

大して交流も無かったが同族に対する彼女なりの弔い、少しだけ目を閉じて思いを馳せる。


「月に叢雲花に風、世の中うまく行かないですね、今まで順調過ぎたからか想定外ばかりですよ。」


 遺されたのは言伝のマジルガの死と純粋な魔法、計画にないやらかしで頭を悩ませる。


「〝星堕〟の最低限のプランニングは保てましたが……彼女達生き残っちゃいました。」


 暗殺でもして穏便に始末する予定を知らない彼女は頭をひねる。


「どうしましょうか、計画について詳しく聞いていた訳では無いしこの後どうするか分かりませんね。」


 彼女は協力者ではあるが計画には賛同していない、何より欲望に忠実な模範的マジルガである。


「まあ見逃しても良いですか、私には関係ありませんし、〝星堕〟の障害になり得ようとどーでも良いです。」


 全人類のマジルガ化など興味も無い、彼女の願いは平和的なもの、人間に居なくなられては結構困る。


「私の邪魔をするなら殺すのみです。」


 それに、()()()()()()()に苦戦するならば敵では無いと彼女は思う、最も、誰が相手でも負けるつもりは無い。


「そろそろ人払いも解除しますか、外の魔法少女がうるさいですから。」


 誰も、二人の魔法少女へ近づけない人払いの魔法を解除する、その瞬間彼女の元へ雷撃が飛ぶ。

雲なき夜に場違いな閃光が夜空を切り裂き消し炭にせんと向かい撃つ。


「最近は物騒ですね。」


 何食わぬ顔をして雷を掻き消した、ぬるいぐらいだ、何でもないような呟きはこの程度の魔法に傷つくようなマジルガでは無いと物語っていた。


「さっさと帰りますか……しかし餞別は残して置きましょう、これも運命です。」


 静かに立ち上がり、言葉を終える頃には、姿はなかった。



─────



「無事ですか!」


 衣装の一部に鎧の着いた騎士然の魔法少女、雷霆の魔法少女は二人の魔法少女の元に駆けつけていた。


「起きて下さい!」


 三等星としてこのあたりの管轄をしている彼女は散歩中いきなり市街にまで飛ばされ魔法を感知した。

担当の場所に戻ればヤバい魔法の気配はするものの近寄れず苦戦していた、すると突然更にヤバい魔法の気配を察知して魔法を放つも気配が消えたので最初の気配の元にやって来た。


「許しますから……だいじょうぶです……」


 そこに待っていたのは二人の魔法少女、エイナとヒカリだった、二人で抱き合うように倒れる瀕死の重体でだが。


「しっかりして下さい!」


 あんまりにも流れた血、エイナは目の焦点が合わず譫言を喋り、ヒカリは泥のようにピクリとも動かず倒れ伏している。

救急車を直ぐ様呼び隣で意識を保つように大声で叫び続ける雷霆の魔法少女。


「少しだけ頑張って下さい!」


 僅かな電流で心臓マッサージと筋肉の弛緩で止血を行いながらの応急処置だがそれだけでは足りなかった。

既に二人はあまりに血を流し過ぎており今生きているのも奇跡なほどだ。


「え!?」


 その時遠く離れた純粋な魔法が弾け飛んだ、雷霆の魔法少女は驚く、それと同時に二人の血が、息が、止まったからだ。


「奇跡は起きるものですよ?」


 魔法は二人の元に振り注ぎ、全てが包まれる、血が、息が止まっても死んでいない、むしろ生きている、そこに驚いた。

その言葉は魔法が形作り、誇らしき天使のような少女から発せられていた。


「あなたは、誰でしょうか?」


「誰でもないよ、私は呼ばれたから来ただけ、二人の命を繋ぎにね!」


 人二人包める大きな羽と光輪を持つ純白の天使は二人の手を繋ぎ歌い出す。


「【あなたに囁くは歌、君に、誰かに大事に響く】」


「……魔法」


 揺れるように、世界は歓喜をあげる、祝福があたりに伝播する、叫べ、叫べ、命を!


「【そしてあそこまで行くならば、奇しくも同じ跡】」


「綺麗……」


「【孤独にさようなら(シーユーアゲイン)】」


 誰かの為の大魔法、言伝と似ているようで違うもの、救いを届ける言祝の歌。


「ここまでかな、聞こえているか分からないけど言わせてね。」


 少しだけの時間だが、彼女は現界した、本来あり得ない奇跡であるが故に体を長くは維持出来ない。


「ありがとう」


 消えゆく中で彼女は笑う、何者でもない、一夜限りの夢の話。


「またね!」


 嵐のように去ってゆく、花のような微笑みで最後まで消える。


 これが二人の知らない事件の結末、最後の夜が明けて行く。

朝の陽射しがを照らす、暁は何よりも優しく、二人を讃えるよう光に包み込む。


マジルガも一枚岩では無い

雷霆の魔法少女も実は初登場じゃない、四話で夜神と会話していた人

読んで欲しいとか書籍化したいとかじゃなく書きたいもの書いてるだけなので読者にはスーパー感謝

死ぬまでに完結すればええかと思ってたけど今ハイパーモチベーションあるので次の章も書き切りたいですね

連載したときは百ポイント越えるとは思わなかった

明日更新

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