表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女の光と影  作者: 生姜焼き
陰陽コミュニケーション

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/45

言伝


「ねえアイツ好きなん?」


「ちょっとやめてよーもう。」


「いいじゃんいいじゃん。」


 桜が咲く季節、新たな出会いを運んで来るように、かしましい生徒達が恋バナに花を咲かせていた。


「どいつもこいつも……」


 その中で自分も高校生と言う青春を謳歌する免罪符を持っていながら愚痴る男がいる。

教室の喧騒の最中、不条理にも怒る、不平不満色も々ある、彼はうるさい奴が嫌い、目立つ奴嫌いの陰キャだった。


 一人が好き、静かな所が好き、そんな彼だが注意などはしたりしない。外向的な彼女等に水を差すほど無粋じゃないと自負している。


「そんな好きかね、恋バナ。」


 故に彼は誰にも聞こえ無いくらいの声で教室の隅でうだうだ一人ごちるのが日課になっている。


 恋と言うモノを彼は知らない、別に興味があるわけでもなくただそのうち好きな人も出来るんじゃないかとぼんやりと考えていたらこうなってしまっただけだ。


 それにイマイチ他人に興味が持てない彼からすれば完全に未知な会話を煩わしく思ってしまうのも仕方無かった。


 そんな埒のあかぬ恋の思考がくるぐる回って、粛々と黙って受けていた授業のチャイムが鳴る。

いつの間にか一日中恋などと言うモノに思考を費やしてしまったのを惜しみながらいそいそと帰る準備をする。


「やっと終わった。」


 そこそこ退屈な学校が終わることに感謝しつつ帰宅部ナンバー1の脚力を見せて校門を飛び出す。

目的?近所の自然公園だ、緑化計画かなんだか知らんがそこそこ前に立てられたそこそこデカい公園、たまにはいい仕事するじゃんと彼は思っている。


「ふう。」


 彼は割と市民の憩いの場になった緑の芝生に寝転んだ。

ある程度一人でスペースが使えてうるさく無い最高の環境だ、そこでぼんやりするのが彼の趣味だった。


「奇跡って信じますか?」


「はあ!?」


 ずいっと、空を眺めていたはずがいきなり顔が覗かせる、安らぎの時間をぶち壊すように彼女は現れた。


「奇跡、信じてますか。」


「いやいやいや。」


 頭おかしいのかと喉の先まで出かかってギリギリ飲み込む、人間はいきなり胡散臭い宗教のような謳い文句を言われると混乱すると彼は知った。


「どちら様で?」


「よくぞ聞いてくれました!私が世界の歌姫です!」


 恐る恐る絞りだした一言が更に理解出来ない情報でぶん殴られる彼、犯人の彼女はニコニコとしたままだ。


「なにも分からないんだが?」


 中肉中背、一般的が服を来たレベルの彼に比べ彼女は特色まみれで物珍しさが歩いているようなものだ。

背は女性にしては高め、アルビノであるからか肌まで新雪の様に白く、大きな日傘が差されている。


「私って珍しいアルビノじゃないですか。」


「うん。」


 一目見れば分かる、誰がどう見ても先天性白皮症と分かるくらい真っ白だ。


「私って絶世の美人じゃないですか。」


「うん?」


 確かに、彼女の容姿は非常に整っている、バランスの良い美の彫刻のような顔はアルビノに引けを取らない程目立つ。

だが、それは自分で言ってしまうのはどうかと彼は首を傾げる。


「私と会ってどう思いましたか?」


「マジで変なこと言う奴。」


 少しだけ優しさを含めた表現で彼はそう言った。


「それです!」


「どれだ。」


 彼は何を言っているのかはちんぷんかんぷんだったが、もう適当に会話を回す事にした。


「私を見てそう言って貰えたのは始めてです!」


 満面の笑みで、目を輝かせて喜んだ、狂喜乱舞の様をありありと、傘を回し、ステップを踏んで踊りだし、表現していく。


「みんな言うんですよね、綺麗だと思ったって。」


「まあ思う人も多いんじゃないか。」


 客観的事情として彼女は美しいのだから仕方がないだろとは彼も思った。


「初対面でもですよ?こんなに衝撃的な出会いをしているのに関わらずですよ!」


 プンプンと私怒ってますと頬を膨らませて怒り出す。あんまりにもな情緒で彼は彼女を変人にカテゴライズした。


「それは知らん。」


 他人の考えなんか分かるはずもない、人間ここまでおかしな奴に出会って先に容姿に気になるのかと彼は思う。


「ちなみに初対面で綺麗と言われたのは十人です。」


「少な!」


 サンプル数がそもそも少なかった、そりゃ感想が綺麗に偏る事もあるのではと彼は驚く。


「劇的な出会いも十人ほど。」


「多い!」


 こんな嘘みたいな宗教勧誘擬きの初手食らった人間は十人もいた。


「ここまでツッコミいてくれる人は始めてです!私の出会いは奇跡ですね!」


「奇跡を安売りするなよ。」


 この程度が奇跡であるなら世界は案外奇跡だらけであると彼は強く思う。


「そんな運命の人にだけに話があるんですなんと!」


「胡散臭くなって来たな。」


 この世界はやっぱり甘くないようだ。


「私は世界の歌姫です!……未来の。」


「さらっと後付けしてきたな。」


 もう冷めた態度でまたなんか言い出したこいつと流す彼。


「ここが大事なんですよ!」


「そう。」


「私って生きてるだけで奇跡だったんですよね。」


 さっきとは打って変わって真面目に泣きそうな顔をして語り出す。


「アルビノ美少女の上に難病だった過去を持つウルトラレアな奇跡的存在だったんです!」


「……そうか」


 茶化せない重たい過去を持ってなにも言えなくなる。


「今は治ってますからね。」


 釘を刺すように彼女は言う。


「だから気になるんですよね、何処まで行けるのか、奇跡は本当にあるのかって。」


「だから世界の歌姫になるって?馬鹿げてるな。」 


 今度は彼がクツクツと笑う、あり得ないような荒唐無稽な話も愉快な肴にはなった。


「だから君がファンです!」


「ちょっと待てよ。」


 ビシッと指を真下に顔面に指し示す、有無を言わさず身勝手にファン認定する彼女。


「なんの為に君に話しかけたと思ってるんですか、どうせ人生丸ごと暇してそうな学生に彩りを与える為に慈善事業でやってるんですよ。」


「酷すぎるが?」


 あんまりにもな物言い、悪びれもせず堂々と火力高めの言葉をグサグサ刺してくる。


「それではまた此処で会いましょう!奇跡を願って!」


「いやまだまだ言いたい事があるんだが!?」


 この時点で彼の心は彼女に奪われてしまっていた、理解しがたい感情も含めて言い表せない気持ちの複雑さに彼は言葉をぶん投げた。


 彼と彼女はそれからちょくちょく公園で下らない話をした。


「お手本の歌手がワールドツアーをしてる、嬉しい。」


「全国ツアーの全国を世界で捉えてるのはお前だけだ。」


 そんな事を言い合って、ある日突然彼女は来なくなってしまう。


「……」


 彼はなにも言わない、結局非日常が日常に戻っただけ、それ以外はなにも変わらない。

ただ公園の芝生で寝転んでいる。


「?」


 ただその日だけは違った、いつもの場所には穴があった。


 強固な物理法則をぶち抜く様に、雑に3D合成した様な穴。

そんな穴に彼は触れてしまった、一瞬の奇の迷い、好奇心、何でもいいが確かに一つ言えるのは、あっさりと彼は魔法に呑まれた。


 一瞬だけ、死を悟った彼は最後に思った。


 ありがとうが言えなくて、さようならも言えなくて。

ただ愛してるって、伝えたかった。

生前と彼女のお披露目

二話同時

彼女は後々ガッツリ出て来ます

明日更新

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ