星を追う夜
目が覚めると病室だった。
途中で記憶が途切れている、最後に言伝のマジルガを看取ったことは憶えている。
「終わった?」
死んでもおかしくない怪我だったから誰かが助けてくれたのだろうか、事件はこの感じだと終息した後だろう。
実感がない、どこかふわふわとした気持ちのままじっとしている、まだ記憶と気持ちに整理がついていない。
「あっあっあの!患者さん起きました!」
おれが目を開けているのを確認して看護師の人が慌ただしく部屋を出てゆく、そんなに急いで大丈夫だろうか。
それからお医者さんが出てきて説明してくれた、ほんとに死に体で生きているのが奇跡だと言われた、でも魔法少女の手術は生存率が高めらしい、魔法少女である事に救われた形だ。
「本当に戦ったんだ。」
今更にも現実だと理解する、カレンダーを見ると日付はもうとっくに変わっていた、つまり一日中寝ていた訳だ、それほどの激闘だった。
「酷い顔してる。」
怪我がどうなってるか気になったので鏡を用意して貰った、外見は酷い有様だ、鏡にうつる自分は包帯がぐるぐる巻きで元の人間が誰かも分からないだろう。
百箇所以上の骨折、全身への多発外傷、2リットル以上の出血、全部が全部死ぬ様な怪我から動けるだけ凄いだろう、少しでも動くとめちゃくちゃ痛いのだが。
「大人しくしよう。」
喋れる事に感謝しつつ何も出来ないので黙ってじっとしておく、お医者さんは安静にと言い去って行った。
「ここは!?」
ずっとぼんやりしているとバサリとシーツが捲れる音と共に聞き馴染みのある声が聞こえる。
どうやら隣のベットには光さんが居たようだ、ずっと一緒だったから同じ病院に搬送されたようで。
「いったい痛い痛い!?」
勢い良く飛び起きたせいで全身の神経が悲鳴を上げている。気持ちはとっても分かります。
おれと同じように光さんも全身包帯でぐるぐる巻きにされているし。
「病院です光さん。」
落ち着けるように喋りかける、全然怪我も残っているのにすごく元気だ。
「エイナさんも無事でしたか!」
ぐるりと首がこちらに向きすごく喜んでる、怪我人がそうしていると結構パニックホラーに見える。
「ちゃんと生きてます。」
それにしても我が身のように案じてくれる、だからこうして生き残れたのもあって本当に感謝しかない。
「大人しくして下さいねー」
優しい口調でお医者さんから注意が飛んできた、点滴もあるのにこう騒ぐのも駄目だ、素直に大人しくする。
あれから光さんも説明を受けて事態を把握した、そうして二人でじっとしている内に、夜が訪れる。
「生き残りましたね。」
「はい……」
何十回、ずっと口に出しては噛み締める、おれ達は生きている、ちゃんと満身創痍でも死ぬことなく生き延びた。
「もうこんな時間ですか、そろそろ消灯ですね。」
そうしているともう寝る時間だ、取り敢えず今日は生きている事を実感して眠ろう。
「生きてますか。」
「生きてます。」
そうは言っても直に眠れる訳じゃないのでこうして星明かりだけが差し込む暗闇でこそこそ話す。
「これからどうしましょうか。」
ふと今ではなく先にある未来の話が出る。
「暫く仮暮らしでしょうね、夜神さんに頼んで住まいの確保をして貰いましょう。」
光さんの家はバラバラになってしまったので明日の宿もない身だ。
「しかし入院も長そうなので一旦置いておきましょう。」
まあそうだ、直に退院出来る怪我でもないので今は大人しくする他ない。
「エイナさん、ありがとうございます。」
「はい?」
これまた唐突に感謝される、そんないわれは何処にもないのにどうしたのだろうか。
「私は途中までしか記憶がないですがエイナさんが言伝のマジルガを倒したのでしょう?」
「それは……あの。」
記憶はある、あるがなんて言うかおれがやったとも言い難いのだが。
死にかけてからのあの状態は信じられない程全能感があった、おれじゃない何かが混じっていた見たいに動けた。
「格好良かったです。」
「待って。」
そう言われるとすごく恥ずかしい……絶対に普段言わないキザなセリフが出てくるのなんて何かがおかしかった。
「でも見ていて分かります、アレはあり得ない奇跡の様な物だったと。」
「それは……そうです。」
そもそもおれはあんなに強くない、一級レベルをボコボコに出来る様な魔法なんて使えない、果たしてアレはなんだったのか。一つ分かることはあの奇跡は二度と起きないであろうと言うこと。
「奇跡であっても生きている事が何よりです。」
「それは本当にそう……」
結局そこに帰結するが一番大事なことだ、命あっての物種という至言の通り生きていれば苦しくても何とかできる筈だ、この事件のように。
「後は」
「「強くなりたい」」
「ですね。」
二人の声が重なった、おれも光さんも抱く思いは同じだった。
だってそうだ、また似たような事件が起きたら光さんを守れない、足手まといは二度とごめんだ。
「今まで順調に成長してきた自覚はありますが実力不足を痛感しました、根本的に足りないものがありますね。」
少し悔しさを滲ませながら言う、光さんも四等星、魔法少女の中では強い方だがそこ止まりだ、三等星は強さが顕著に出てくる、一級と言う壁はかなり高い。
「言伝のマジルガは間違いなく一級でした、周囲のマジルガを含まなければではありますが。」
「フィジカルも差があり格上となるだけで攻撃が効きづらいです。」
おれが魔法を込めてぶん殴る方法を知らないのかちまちま魔法で削るしか出来ない。
「色々課題はありますね。」
まだまだ足りないことだらけ、おれも光さんと一緒に決意を固める。
「一緒に三等星、目指します。」
「エイナさんもですか?それは良いですね。」
光さんと肩を並べて戦えるようになる日を夢見て目を瞑る。
「その時は相棒として頼みましたよ、エイナ。」
「え?」
いつもつけている敬称が外れた、それが何を意味しているかは知らないがきっと軽いものではないだろう。
「光さん?」
「いい機会です、きっともう離れることはないでしょうから、エイナも遠慮せずヒカリと呼んで下さい。」
「強引じゃないですか?」
かなり強く押してくる様は始めてだ、思わず気になって目を開ける。
「さっきの言葉はそう言うことに聞こえますよ?私はそんなに良い子じゃありませんから逃がしませんよ?」
目が合うと思い知る、見たことの無い顔、輝く瞳にはおれへの執着がありありと浮かんでいた。
「光さんの為なら何処まででも付いて行きますよ。」
「……」
そこそこ眠気で頭が回らなくなって来たおれには光さんのことは分からないが少し微笑んでいた。
「ではヒカリと呼んでくれますか?」
「それくらいならお安いご用意です。」
ぽやぽやと襲う眠気に身を任せつつ言葉を流す。
「これで良いですか、ヒカリ?」
「はい!」
眠る前に見たのは晴れやかな笑みで見つめる光さん……ヒカリだった。
この時は知る由もないがここからが一等星を目指すおれとヒカリのスタートラインだ。
一章終わり
やはり一話三千文字くらいは欲しいですね
最初からヒカリで統一しておくべきだった
ヒカリにも秘密あり
この調子で更新続けたいですね
明日更新




