陰陽コミュニケーション 肆
「【よくやるな、感情的になって魔法の出力が上がる、マジルガには絶対に芸当だな、良くも悪くも安定しすぎた存在ゆえに時折羨ましく思うよ。】」
曖昧な感覚が世界をぼやけさせる。
血を流し過ぎた、意識を保つのに精一杯で地面に這いつくばったままだ。
「【何も食べない夢も見ない、歳も取らない学びもしない、成長とは無縁なのに一丁前に自我があるのが辛いところだ。】」
それでも開いた目には異様な光景がうつる。
「【結局こんなこと言ってもどうにもならない性質だからな、悩んでも妬んでも変わらない欲望の奴隷に過ぎん。】」
光さんは黙って果敢に攻め立てる。
「【暴力に躊躇なく振るえるのも、人間であったのに不思議なものだ、倫理観も何処かに捨ててしまった。】」
言伝のマジルガは避けに徹して言葉を止めない。
「【人間の頃の記憶などもう忘れてしまったな、名前は何だったか、人であった証明がない事が寂しくはある。】」
噛み合わない、両者はやる事が違う。
「【たまには下らない感傷に浸るのも悪くないな、たとえこれが意味のない出来事だとしても今こうして喋れるだけ十分だ。】」
光さんはキレている、今まで怒っているところはみたことなかったが、それでもはっきりと分かる、黙って睨む姿は見てるだけで怖い、気迫が違う、おれが怒らせたらちびると思う。
「【言伝の欲望を果たすこの上ないチャンスだ、何にせよ存分に語ろうか。】」
言伝のマジルガはずっと誰に対するでもなく喋っている、こっちもこっちで怖い、理解不能の言動が続く、多分おれが死ぬのを待っているのだろう。
「【お前の怒りは感じるがここまで冷静だな、反撃の隙も与えてくれないか。】」
何も出来ていないが、これ以上は出血するとほんとに死ぬ。
「【でもそっちの子はもうそろそろ死にそうだぞ?】」
「っ!」
光さんがこっちを見てくる、それは駄目だ、気を取られた、掠れた息が突き抜けるばかり。
「【よそ見はしたら駄目だろう、死ねるぞ?】」
みぞおちにイイのが入った、まずい、まずい、これ以上は。
「【これで決着か?優しさも考えものだ。】」
光さんも倒れた、思考が、視界が、世界が閉ざされる。
おれはよくても光さんは駄目だ、愛しいこの世界をこんな結末で終わらせたくない!
おれが、おれが、おれがやら……なきゃ……
「オレがやる」
反撃の時
明日更新




