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あれから僕たち3人はとりあえずと、三村くんたちのベースに戻り、そこで1泊して疲れを癒した。次の日の早朝、僕は3日以内に食料の援助を持ってもう一度来ると書き置きをし、リビングの雑魚寝場でくーすかと、気持ちよさそうに寝ている火村さんの写真を携帯で撮って、自分の家へと飛んだ。
目を開けるとそこは慣れ親しんだ僕の家だ。ペタペタと足を鳴らして、ジンジャーエールを飲もうとリビングの冷蔵庫へと向かうと、そこには――ゾンビが2人?
「うぇっ!?」
驚いて奇声をあげてしまった。どちらとも床にしゃがみこみ、頭部が重力に負けてダランと垂れている。背中もぐにゃりと歪み、そこだけ陰鬱な雰囲気の吹き溜まりと化していた。
しかしよく見るとその2人のゾンビ、どこにも傷がない。そして片方は背中にボウガンを、もう片方は手に斧を持っている。
あれ? というかこの2人――
「美紅と壮太?」
その言葉に二人は陰鬱な雰囲気を吹き飛ばすかのように、ガバッと勢いよく顔を上げた。その2人は間違いなく美紅と壮太だった。美紅の目は泣きはらしたあとのように、赤く腫れている。その上二人共すごい隈だ。そのまま僕らの間には深い沈黙が降りた。
「も、もしかして寝てない?」
「当、た、り前だっ!」
僕の不用意な1言で時間が動き出し、2人は思いっきり反応した。
「寝れるわけ無いじゃない!」
「アホか!」
「というかミツル、何でぐっすり寝たみたいなすっきりした顔してるのよ!?」
「お前さてはあっちで寝てきたな! 俺たちが貫徹して反省してた時に!」
「生きてるならすぐ戻ってきなさいよ! 私たちはミツルが、死ん、じゃ、ったと思って。どんな気持ちで1晩過ごしたかわかる!?」
「か、返す言葉もございません、申し訳ございませんでした」
ふたりの猛攻に負けて僕はすぐに白旗を上げた。
***
「それでアホの充は火村さんを助けて生還しました、と」
「それからアホのミツルは、私たちのことなんてすっかり忘れて1日ぐっすり眠りました、と」
「まったくアホの充は」
「これだからアホのミツルは」
ふーやれやれ、とでも言うように二人は両手の平を天井に向けて、呆れた人のポーズをとる。2人の言葉がグサグサと僕の心に突き刺さった。
「でも、俺たちも謝らないといけないことがある」
「そうね。ミツル、ごめんなさい。私たちは昨日火村さんを見捨てようとした。まだ助けられたのに」
冗談めいた口調は影を潜め、まっすぐと僕の目を見てくる。
「1晩な、話し合ったんだよ。あそこで俺たちが火村さんを最初から助けようとしていたら、充は俺たちを置いていかなかったんじゃないかってな。だから、すまん」
「い、いや、壮太たちの謝ることじゃないよ! 悪いのはみんなの意見を無視して勝手に突っ走った僕だ」
急に謝られて僕は慌てた。2人の判断は正しかった、安全のためには火村さんを見捨てるべきだった。
「そうね、その通り。私たちの意見を無視して、話を聞かずに勝手に突っ走ったミツルはバカだわ」
「そうだな、大馬鹿だ」
「え、えぇ?」
なんだか急に攻撃された。
「でもそうじゃないのよ。私たちは助けられる命を助けようとせず、帰ろうとした。でも、ミツルは助けようと追いかけた。そこが悔しいのよ、だから謝っているのよ」
「ああ、俺たちは口では助けよう助けようって言いながらも、いざとなったらすぐに見捨てた。だから反省した。一人に押し付けて済まなかった」
繰り返すけれど、ふたりの行動は正しかったと僕は思う。なぜなら僕ら3人にとって一番大切なものは、他でもない僕ら自身の命なのだから。
それでも二人は僕の我侭に対して、反省して、真面目に向き合ってくれている。その上こうして、寝ずに一晩僕のために泣いて、悩んでくれている。
なら僕は二人に対してなんて言えばいい?
素直に心の底から湧き出してくるものを、言葉にすればいい。
「―――ありがとう」
二人は一瞬驚く。そしてすぐに笑った。
***
「じゃあ今後の行動方針について話し合おう」
美紅と壮太は少し遅めの睡眠をとり、起きて三人で美紅の手料理に舌ずつみをうっている。
「勝手に決めてしまって悪いんだけど、とりあえず3日以内にあっちにも救援物資を送らなくちゃならない」
「それって1回だけで済むのか? それなら大量に物資テレポートで一回運んで終わりでいいんだが」
「……多分それは難しんじゃないかしら。彼ら今20人くらいいたわよね。おそらくその中でまともに動けるのが多分半分位よ。自立できるまでは時間がかかるわ」
確かに、その通りだ。
雑魚寝していた人たちの中にも、運動に向いていなさそうな高齢者や小学生が結構いた気がする。
「じゃあ当分の間、定期的に彼らのところに物資を供給する必要があるってことかな。でも20人分の食料を安定供給って……」
「食料はかなり溜め込んでおいたけれど、それはあくまで私達3人にとってはだから……ざっと計算してみても、ここにある食料じゃ、もって1週間ね」
美紅が素早く残りの食料を20人に供給し続けた場合の計算をした。
「なら安定的な食料の補給先が必要ね。スーパー、それも少し大きい位のじゃ足りないわ。どうせ支援する先なんて今後どんどん増えていきそうな気もするし」
そう言って、僕の方を見てクスっと笑う。
「ごめん……」
「いいのよ、私たちも全面的に協力するって昨晩決めたの。それにこんな世界で、誰かの為に戦うことができるって、とても素敵なことだと思わないかしら」
「ははっ、だな」
こんな壊れてしまった世界でも、ここはこんなにも暖かい。ずっとこれが続けばいいな、とふと思った。
「ありがとう。でもその補給先はどこにする? ここらへんにそんな大きい店はないし」
「近くである必要がないじゃない。テレポートがあればどこでもひとっ飛び、よね?
ミツルが今まで行ったことある中で、なるべく人口が少なくて、なるべく大きい店ってどこかしら?」
「ええっと、多分、県境にあるショッピングモールみたいな所じゃないかな」
ソレを聞くと、美紅はふっ、と不敵な笑みを浮かべた。
「ちょうどいいわ。さて田舎者のショッピングモール征服と洒落込もうかしら」




