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超能力者から学ぶゾンビの倒し方  作者: 風切ツバメ
第1章: 夜明け頃
11/22

<11>

 本日2話目

 着いてみるとそこは極めて普通の一軒家だった。中に入っていみると、3人の帰りを待っていたのか、制服を着た僕と同学年くらいの男女数人が出てきた。


「大丈夫だった!? 襲われてない!?」


 そう半ば叫ぶように三村くんに聞いてきたのは、艶やかな黒髪をきちんと結い上げた、大人しそうな学生だった。


「うん、大丈夫だよ詩織。誰も怪我してない」


 三村くんは宥めるように、彼女の頭を撫でながら言った。


「よかった、本当に」


 そう言って彼女は、三村くんの胸に頭をあずけて黙ってしまった。お互い心底落ち着くというふうに目を細めて、ふたりが離れる様子はない。その二人だけどこか別の空間にいるように空気が違う。甘い、本当に甘い。新婚夫婦でもここまで仲良くはないだろう。


「すまない、こいつらのコレはいつものことだ。気にしないでくれ」


 成宮くんがバツの悪そうに坊主頭を掻きながら、こちらに謝ってきた。直ぐに三村君たちの方に振り向くと言った。


「二人とも、それくらいにしておけ」

「ああ、ごめん、つい」

「ぁ、す、すみません! 周りが見えてなくてっ。え、えっとそちらの方々は?」

「ああ、この人たちは命の恩人なんだ。スーパーで囲まれそうになってたところを助けてくれた」

「そうなんですか! ありがとうございます、智一達を助けてくれて本当にありがとうございます!」

「あ、いえ、どういたしまして」


 物静かな雰囲気のある女性に、急に思いっきり頭を下げられて、少しテンパってしまう。


「と、とりあえず休んでください。まだ水道は通っているのでお風呂でもどうですか?」

「いえ、大丈夫ですのでお構いなく」

「そうですか。ではお飲み物を持ってきます、お茶でいいですか?」

「ありがとうございます」


 甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる三村くんの彼女。尽くすタイプなのか、三村くんは幸せ者だ。


 そのまま僕たちは1階のリビングに通された。リビングにはフローリングの床の上に、高校生と小学生くらいの子数人座り込んで何かを話していた。入ってきた僕らを見て一瞬話しかけようとするも、装備で危ない集団と勘違いされたのか、全員黙ってこちらを見るにとどめている。


「すみません、空いている部屋がないもので」


 三村くんは僕らに軽く頭を下げると、座り込んで話している人たちの方を見て言う。


「大丈夫だ、この人たちは危ない人じゃやない。襲われていた俺たち3人を助けてくれた人たちだ!」


 そう御村くんが言うと、「おおぉぉ」という驚きとも感嘆ともとれる声がリビングに響き、何人かの高校生や子供がよってきた。


「ありがとな、三村たちを助けてくれて!」

「その武器どこで手に入れたんだ!?」

「よく見たら、渋谷さんだ!」

「お兄ちゃん達強いの!?」

「食料は取れたのか!?」


 などなど安全だと知った途端に質問攻めだ。


「まてまてまて、そんな一気に詰め寄ったら失礼だろう。質問は後で俺が答えるから、今は静かにしてくれ」


 その言葉に各々不満そうな顔をしながらも、引き下がってくれた。


「ふう、すみません。みんなこんな状況で不安なんです」

「大丈夫だよ、じゃあ早速これからのことを煮詰めようか」

「あ、はい、休まなくて大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫だよ。あ、でも、やっぱりちょっとトイレ借りていい?」

「どうぞ、廊下の階段の隣です」


 こちらを見ている避難者たちに軽く頭を下げて、廊下に出る。緊張が緩んだことで、急にトイレに行きたくなった。一応護身用にナイフも持っているので一人でも大丈夫だろう。

 トイレに向かって廊下を歩いていると、横の部屋から、女の子の怒鳴り声とドンドンと何かを叩く音が聞こえてきた。少し気になるので、ドアの前で待機してみる。


「……たしは反対!……あんな奴らなんてっ………出ていく………」

「……そうはいっても………だから……つけ!……落ち着け!……」


 女の子の声はおそらく火村さんだ。おそらく僕らのことが気に入らないのだろう。なだめている声は誰かよくわからない。そうこうしていると不意にガチャ、という音と共に扉が開き、中から知らない高校生が出てきた。盗み聞きをしていたと思われても仕方のない状況のため、僕は慌てて弁明する。


「ごめん、トイレに行こうとしたら、すごい音がしたから気になって……」

「ああ、いいんですよ。家の中で怒鳴っていた俺たちが悪いんです。聞こえてしまったんならしょうがないですけど、火村のことはあまり嫌わないでやってください。あいつ、ここに来る前に目の前で弟が殺されたらしくって……。けっこう精神的に追い詰められてるんです。だから……」

「うん、わかってるよ。こんな状況で誰もが平然としていられるわけがない。火村さんのことに関しても誤解なんてしないよ」

「そうですか、なら助かります。あ、呼び止めちゃってすみません。トイレ、今空いてるみたいなんでどうぞ」

「うん、ありがとう」


 そう言うと僕は言われた通りにトイレに入って用を足し、手を洗って部屋に戻る。まだ電気と水道は止まっていないようで何よりだ。それにしてもさっきの男子生徒の話を事実とすると、火村さんが実力行使で武器を奪おうとしたのも、弟の件で追い詰められていたからかもしれない。


「戻ってきましたね、じゃあ早速今後のことについて話し合いましょう」

「あ、うん。じゃあまず食料について………」


 しかし今は火村さんの個人的な事情について考えている余裕はない。これからこの集団とどのように関わっていくか、慎重に考えるべきだ。


 それから僕と渡井と美紅、成宮くんと三村くんで今後のことについて話し合った。


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