再会
宿を追い出されたセリとフィリアは、通路を真っ直ぐと歩いていた。
日中は、人で溢れていたこの道も一度夜になれば、めっきり人通りは少なくなる。
両脇に立ち並ぶ雑貨店や青果店などは、完全に閉まっており、昼間の喧騒さはそこにはない。
強いて言うならば、酒場から漏れる光と笑い声がちらほらと聞こえてくる程度だ。
にしても、身体中から葡萄酒の匂いがする。それにベタベタで、不快感だとてつもない。
替えの服も持っていないので、どうにかしたくても出来ない。
衣料店は既に閉まっているだろうし、どうにもできない。
「す、すいません……セリさん、私のせいです」
フィリアは申し訳なさそうにそう話しかけてきた。
先程の父親の件で、迷惑を被ってしまった事を申し訳なく思っているようだ。
「別に、フィリアは悪くないし。あと、この街で働き口を探すのはやめにしよう」
まさか、フィリアの父親があのような吐き気を催す程の邪悪とは思っても居なかった。
フィリアをこの街――ロ・ランブルに安心しておいていけない事がはっきり分かった。
「ごめん……全部私の理解不足だった」
「い、いえ! 助けていただいただけでも、返しきれない恩を貰っています!」
「暫くしたら、この街を出る。もう少し遠い街まで送っていく」
「セリさんっ……」
フィリアは深く頭を下げる。
「本当にありがとうございます。貴方のお陰でまともに生きれる気がします」
「まぁ、そう言ってくれると……嬉しい、のかな」
セリはそこまで感謝しなくても――と内心思う。
「ともかく、今日泊まる場所を探さないと、後は洗濯もしないとね」
今から宿泊できる場所を探すため、歩みを進める。
暫く辺りを見渡しながら進んでいると、目の前から見慣れた人物が歩いてくる。
「セリお嬢様……?」
その見慣れた人物とはリッタだった。