自動人形
デスタと自動人形はお互いに武器を構えて、対峙する。
お互い、少しでも動けば壮絶な殺し合いに発展する――そう思わせる程の気迫を発している。
「はぁ」
だが、剣を鞘にしまったのはデスタだった。
「やめだ、やめ、神人と敵対するのは割に合わないわ――まぁ……直ぐに会いにいくからさ」
デスタはセリを一瞥すると、その場から立ち去る。
デスタが立ち去ったのを見届けた自動人形は大剣を収める。
『自動人形がいると言うことは、"付喪"が近くにいるのかも、ですね』
暫く黙っていたレヴィンが脳内に語りかけてきた。
確かに彼女の言う通り、近くにスヴェラがいる可能性が出てきた。
セリの何度かレヴィンと顔を合わせたことがあるが、あの薄気味悪い女は元から苦手だ。
今は、苦手以前に単なる殺意しか無いが。
「助けてくれてありがとう」
セリは、自動人形に話しかける。
「気にするな。私も好きでお前を助けたりしない」
自動人形は冷たい視線をセリに向け、その場を立ち去ろうとする。
「まって」
だが、セリはそれを引き留めた。
彼女は振り向き、数秒の沈黙が流れる。
「名前をきいてもいい?」
「プリムラ・オーリキュラ なぜそのようなことを聞く?」
自動人形はプリムラと名乗った。
「プリムラさんの主人にお礼の挨拶をっ……」
「不要だ」
だが、プリムラはそれを即答で断る。
「近くに居られたりは?」
「この街には居ない。まぁ居たとしてだ……本当の事なんて教えるわけもない」
「だったら、住居の方を教えてくっ……!」
プリムラは再び大剣を抜刀し、セリの首元付近に構えた。
その華奢な体躯からは放たれる動きは、見た目から想像できないほどに俊敏だった。
セリはこの動きで、かなりの強者であることを悟る。
「なぜスヴェラ様な事を聞きたがる? なぜ嗅ぎ回ろうとする? 何が目的だ?」
「いや、ただ直接お礼をするのが礼儀かと思って」
少しダイレクトに聴きすぎてしまったようだ。完全に相手を警戒させてしまった。
「……ふんっ、まぁいいか」
プリムラはそう言い、渋々大剣を首元から離す。
「ともかく、スヴェラ様に礼は不要。あの人はそもそも人付き合いが苦手だ。お前と面会すらままならないだろうから、どのみち無理だ」
プリムラはそう言い残すと、今度こそ酒場から出て行った。
確かに、スヴェラ配下の自動人形が各都市の警備を任されるのは、おかしい話ではない。
そもそも、自動人形がスヴェラから離れて行動するのは珍しくは無いのだが。
しかし、こっそりと後をつけるだけの価値はあるだろう。
酒場を後にしたプリムラを追おうとした瞬間だ。
店の店主に肩を掴まられる。
「嬢ちゃん達、悪いがここを出ていってくれないか? 宿泊料金は十倍で返す」
店主の男は、いっぱいに銅貨が詰まった麻袋を渡してくる。
「あのデスタと揉めた人間を泊めてなんておけない。巻き込まれたらひとたまりも無いんだよ。悪いことは言わない、嬢ちゃん達もすぐにこの街をでたほうがいい」
要するに、厄介ごとを運んでくる奴は出て行け――と言うことだ。
「……わかった」
セリは店主から麻袋を受け取ると、そのまま外へと駆け出す。
「ちょ、せ、セリさん……?」
フィリアが制止しようとしたが、セリは聞く耳も持たない。
外の通路は、両脇にある酒場や宿が、暗闇を微かな松明の明かりが照らしていた。
ちらほらと人が行き交う姿があるだけで、プリムラの姿はなかった。
『見逃してしまいましたね』
「レヴィン、何処に行ったと思う?」
『さぁ、残念ながら、特定の個人を探し出すような探知魔法は習得してませんから、どうしようもありません』
「……彼奴を見つけれると思ったのにっ」
だが、いずれはスヴェラも見つけまして相応の報いを受けさせる。
それだけは揺るがない。
「セリさんっ、どうしたんですか急に外に走り出して……!」
それから少し遅れて、フィリアが追いかけてきた。
しかし、セリとフィリアは寝床を失ってしまった。
これから日が沈み切った中、新しい宿泊先を探さなければいけないだろう。




