港区-22
「いやぁ~ ありがとうございました」
長四郎はそう言いながら、会計を済ませる。
「久々に腕が鳴りましたよ。こちらこそ、ありがとうございました」
タクシーの運転手はニコッと笑い、長四郎達を目的地まで送り届けた。
「腕が鳴るって、低速で走ってただけじゃん」
遊原巡査が毒を吐く。
「遊原くん、免許は?」
「持ってますよ」
「んなことは知ってる。オートマかマニュアルか聞いてんの!」
だったら、最初から言えば良いじゃないかそう思う遊原巡査。
「一応、マニュアルです」
「あのおっちゃんの運転見てなかった?」
「いや、前の車に気づかれるんじゃないか。そっちのほうが心配で」
「あのおっちゃんの運転なら大丈夫だったよ。付かず離れずの絶妙な位置。しかも、三速から四速で走っていたんだから。今どきのタクシーでマニュアル車は珍しいぜ」
「はぁ」
「あ! 分かってないな。おっちゃんの凄さが」
「はぁ」
「かぁ~ これだから今時の若者は」
そんな言うほど年は離れてねぇよ。と思ってしまう遊原巡査は「分かりましたから、あの二人を追いましょう」そう話を逸らす。
「へいへい」
長四郎がコインパーキングに目を向けると、楽しそうに会話するように見えて目の奥は笑っていない女と盲目状態の心底嬉しそうなパパが出てきたばっかりであった。
「行こう」
「はい」
二人は尾行を再開した。
パパは一生懸命に女の手を握ろうとするが、済んでのところで女が躱すといった面白い光景を見ながら着いた先は今宮茉由が勤務していたラウンジであった。
「あらぁ~」
「思いもよらぬところで・・・・・・」
遊原巡査は入店しようとするが長四郎が首根っこ掴んで阻止する。
「どうして、入店しないんですか?」
「したいの? シャチョサン、スケベねぇ~」
急に片言になる長四郎にイラッとするが、そんなの構ってられないので振りほどき説得する為に店から少し離れた路地に連れていく。
「何? 何?」
長四郎は不服そうな顔をしながら遊原巡査の顔を見る。
「探偵さん。事件の起点はあの店かもしれないんですよ!」
「あ、そうなの?」
「違うんですか?」
「違わないけど」
「けど?」
「あ、出てきた」
振り向くと先程、入店したパパが見る影もなくシュンとした顔で出てきた。
「ラッキー!」長四郎は指パッチンしながら喜ぶ。
遊原巡査を振りほどき、パパの後を追う長四郎。
「ああっ! もうっ!!」
遊原巡査もそれに続く。
ある程度、近づいてきたところで、長四郎が口を開いた。
「前を歩く、パパさん! 直ちに止まってください!!」
その声にビックリしたのか。パパは首を窄めてキョロキョロと周囲を見回す。
長四郎は嬉しそうに肩をトントンっと叩いて「ここだよ。パパ」と声を掛ける。
「うわっ!!」
男は尻餅をついてしまう。
「なぁ? パパ。大事にされたくなかったら、お話聞かせてもらえるかな?」
怯えるパパに長四郎はニコッと笑うのだった。




