港区-21
「変な所ありませんね・・・・・」
遊原巡査は張り込み先であるブランド店を見ながら、そう呟く。
「悪い奴ってのは、何気ない顔をして腹の中では悪いことを考えているものなのさ」
長四郎はそう言いながら、珈琲を飲む。
二人は道路を挟んで真向かいのチェーン店の喫茶店から店を監視していた。
「でも、三日も張り込んで動きないんですよ」
「動きないの?」
「ないですよね?」
「ふ~ん」
「ふ~んって。探偵さん、何か掴んだんですか?」
長四郎は深いため息をつきながら、机に置かれた一眼レフカメラを起動させSDカードに保存された写真を見せる。
「これは、一昨日の写真」
その写真には、一人の若い女とパパである男が映っていた。
「んで、次の写真」
次の写真には服は違えど、別のパパと女が映っている。
「同じ女だ」
「そして、そろそろ」
長四郎が店に向けてカメラを構える。
すると、ふくよかな体格をしたパパと現れた写真の女。
「店出たら、追うぞ」
「は、はいっ」
遊原巡査はすぐに店を出られるよう準備を始める。
四十分後、女とパパが出てきた。
長四郎と遊原巡査は二人の後を追う。
二人はコインパーキングに向かっているようであった。
「車、用意してないですよ」
「遊原君、その心配はない」そう言う長四郎の手にはスマホが握られていた。
助手席のドアを先に開け女を先に乗せるパパを見ながら長四郎はきょろきょろと周辺を見てスマホを見る。
その行動に遊原巡査は落ち着きのない人だなと思いながら、女たちを監視する。
「お、来た」
長四郎はスマホを振りながら、ここですよ。アピールをする。
タクシーだ。
「あれで、追うんですか?」
「Yeah.」
「金、ないですよ」
「経費で落とせば良いじゃん」そう言いながら、タクシーに乗り込む長四郎。
「いや、そう言うわけにはっ」
遊原巡査も後に続いて乗り込む。
「お客様、どこまで?」
「あ、今出てきた車を追ってください。気づかれないように」
「え?」
「え? じゃなくて、追ってください」
「出来かねます」
タクシーのドアが開く。つまりは降りろということだ。
こいつとは話しても無駄だと思い、長四郎は降りた。
タクシーはそのまま走っていった。
「役に立ないタクシーじゃ」
「でも、行っちゃいましたよ」
「遊原くん」
長四郎の指さす先にはバフンっ! と音を立てながらスローで走る車があった。
「エンストしてる・・・・・・」
「だから、大丈夫」
すると、一台のタクシーが来た。
長四郎は綺麗に手を挙げてタクシーを止める。
「どちらへ?」
「あの車を追ってください」
エンストしながら、走り続ける車を指さす。
「分かりました。お任せください」
運転手はフッと息を吹き、尾行を開始した。




