港区-17
「・・・・・・」
タトゥー男は無言を貫く。
「はい。これ」
燐はタトゥー男の身元が書かれタブレット端末を手渡す。
名前・田沼 潤一 年齢・35歳
前科 一犯 傷害
「ふ~ん、見た目通りって感じな経歴ですなぁ~」
田沼はそれを聞いて、長四郎をチラッと見て目を逸らす。
「で、今回は。お~ これまた傷害事件。喧嘩お好きなんですね」
「・・・・・・」無言を貫いてはいるが、長四郎にイラついているのは顔で分かった。
「何々? これを見ると、昔も仲間の為に手を出して相手に大けがを負わせたと。でも、今回はそうはいかなかった。ダサっ」
長四郎は嘲笑して見せる。
田沼はもう我慢の限界だ。と言わんばかりに膝で机を蹴り上げひっくり返す。
「てめぇ! 俺のことバカにしてんのか!!」
長四郎の襟を掴み、顔を飛ばす田沼。
「近い。近い」長四郎は冷静に言い放ち、股関を思い切り蹴る。
「うっ!!」
女性には分からないであろう痛みに悶絶しながら、田沼はしゃがみ込む。
「ちょっと! 探偵さん!! 暴力はいけません!!!」
「泉ちゃん。それは、警察の話でしょ? 俺、警察じゃないもん!!」
長四郎は頬を膨らませる。
「そういう事じゃないんですけど」
「ねぇ、誰に雇われたの?」
燐はもっと乱暴に田沼の髪の毛を掴み引っ張り上げながら問う。
「・・・・・・・」
田沼は顔を逸らし、抵抗する。
「ラモちゃん。それは、乱暴だよ」そう言う長四郎に「あ!?」と田沼にも負けない顔を飛ばす燐。
「いえ、何でもありません」
長四郎は大人しく引き下がった。
「誰に雇われたの!!」もう一度、問い詰める。
「・・・・・・・」
「ダメか・・・・・・・」明野巡査は諦めムーブに入る。
「チミ達、分かってないな」
長四郎が呆れるように言う。
「どういう意味?」
「良いか? あの乱痴気パーティーで俺たちの面は割れてるんだ。そんで、すぐに襲撃にあった。これから察せることは?」
「逃げたあの中に依頼者がいる」
「そう、泉ちゃんご名答。そして、このおっさんと繋がりがある人物は?」
「あるの?」
「ラモちゃん、そんな事も知らないで取り調べしてたのかい? 若い子なのに疎いねぇ~」
「教えなさいよ!!」
「溝屋 勇」
その名前を聞いてギョッとした顔をする田沼。
「図星だね。頼まれた? それとも義理人情で動いたか? 後者だとしたら、相当のバカだな」
「んだと!?」
田沼は長四郎に飛びかかろうとするが燐に髪を捕まれているので、後ろに引っ張られ阻止される。
「令和の鷹以外にもやっているコンテンツあるだろ?」
「え~っと。あ! ブロークンアップ!!」
スマホで検索していた明野巡査が答える。
「またもやご名答。そう、このバカはそのコンテンツの演者だ」
ブロークンアップとは、ヤンキー集めて格闘技という名を冠したただの喧嘩を見せるコンテンツである。溝屋はそれの運営に携わっているのだ。
「てことは何? その運営者から依頼を受けたってこと?」
「どうだろうな?」
「どうなんです?」明野巡査が田沼に質問する。
「依頼を受けた・・・・・・・」
「じゃ、溝屋を捕まえよう」
「そう簡単には行かないと思うね」長四郎は燐の提案を一蹴する。
「何で?」
「どうせ、口頭ベースだ。言った言わないの話になる。そうだろ?」
田沼は目を見開いて驚いて見せる。その反応を見て、口頭ベースの指示だったって事が分かった。




