港区-12
「空振りだったね・・・・・・・」
燐にしては珍しく落ち込んでいた。
この前、聴取したサラリーマンに揺るがぬアリバイがあったからであった。
「そうだな」
そう答える遊原巡査は燐とは対照的にケロッとしていた。
「どうしようか?」
「どうしような」
二人は眉間に皺を寄せ考え込む。
すると、遊原巡査のスマホが鳴る。
「はい。もしもし」
「もしもし。じゃないだろ?」
「あ、班長」
電話の相手は、遊原巡査、明野巡査の上司である佐藤田 一嬉警部補だ。
「今、何してる?」
「例の女子高生と捜査を」
「成果は?」
「ありません!」遊原巡査は堂々と答える。
「・・・・・・・」
「ちょっと貸して!」
燐は遊原巡査の手からスマホを引ったくると、スピーカーモードにする。
「佐藤田さん!」
「は、はいっ」佐藤田警部補は燐の気迫に気押される。
「どうして、部下にだけ捜査をさせてあなたは何もしないんですか!」
「いや、捜査をしてないわけでは」
「問答無用!!」
燐は怒鳴りつける。
「すいません・・・・・・」
佐藤田警部補は悪くないのに何故か謝る。
「今、どこで何してるんですか!」
「え〜っと、ここはねぇ〜」
「今から、そっちに行きますから! 遊原くんに場所伝えといてください!」
遊原巡査にスマホを返すと、燐は頭を冷やすため遊原巡査から少し離れる。
「すみません。彼女、イライラしているんで」
「余計なこと言わないっ!!」
燐の地獄耳は遊原巡査の一言を聞き逃さなかった。
「遊原。余計なこと言わなくて良いから、逆らわず今から言うところに連れてき
てちょうだい」
「了解」
遊原巡査は燐を連れて、佐藤田警部補の居るクラブへと向かった。
その頃、長四郎と明野巡査は北条隆弘の交友関係を探るため港区のある商業ビルに来ていた。
「あの探偵さん」
「何? 泉ちゃん」
長四郎は立ち止まり、明野巡査に尋ねる。
「ここに何があるって言うんですか?」
「ああ、知らない? この店」
長四郎はテナント表を指差し、示す。
そこには、激辛タンメン溝屋の文字が書かれていた。
「ここなら知ってます。企業家の溝屋・・・・・ なんだったけ?」
「溝屋 勇」
「そうです。溝屋勇です。その人が経営しているお店ですよね?」
「Yeah. そんで、かの北条氏と繋がりのある御仁だ」
「あ! 令和の鷹ですよね。見てますもん」
「泉ちゃんって意外と趣味悪いのな」
「な、なんでです? 人気コンテンツじゃないですか」
令和の鷹
それは、財産のある企業家が夢ある起業家からプレゼンを受け出資するかをジャッジする番組である。
どっかで聞いたことあるって?
それは気にしないで頂きたい。
では、話に戻ろう。
「人気コンテンツであったら、趣味が良いってわけじゃないよ。あれに出ている奴らはね、資本主義の最たる遊びをしているだけにすぎないからな。高い税金納めてりゃ何しても良いってわけじゃないからな。庶民馬鹿にすんなよな」
「はぁ」
明野巡査は、長四郎は酷く歪んでいる人物なんだと思った。




