7話
翌日の朝。ホームルームが始まる前に、赤根さんを校舎裏へと呼び出した。
「……昨日の話、考えてきてくれたんだね」
赤根さんは緊張したような顔で俺を見つめている。
「うん、まあね」
なぜだろう。俺もなんだか緊張してきた。けれど、ちゃんと伝えなければならない。一晩考えて導き出した、俺の意思をしっかり表明しなくては。
固唾を飲んで、俺は思いを告げた。
「……赤根さん。俺は小説家になる夢を諦めた身だ。だから俺の言うことなんて信用できないと思う。……でも、やっぱりまだ俺も少しだけ、物語を描きたいんだって、心の奥底ではそう思ってることに気づいたんだ。それだけは本当なんだ。……だから——」
俺は一呼吸置いてから、意を決して言った。
「俺からもお願いしたい。こんな俺で良ければ、一緒に漫画家を目指してほしい! どうか、お願いします!」
「……えっ」
俺が頭を下げながらそう言うと、赤根さんは出目金が如く目を見開いた。
そして喜びをみなぎらせたような顔を向けながら、鼓膜が破れんばかりに歓喜の声を上げた。
「ま、マジで!? やった! いや、というかこちらこそだよ!」
興奮したようにその場で飛び跳ねる赤根さん。
「これから一緒にがんばろう!」
そう言って、彼女は俺の手を強く握り締めた。それはもう痛いくらいに。
けれどその痛みからは、彼女の漫画家を目指す情熱さが伝わってきた。
「ありがとう小玉君、これからよろしくね!」
満面の笑みを向ける赤根さん。俺も彼女の情熱に負けないよう、これからがんばろうと思った。
「こちらこそよろしく。やるからには本気でやるから!」
「当然! なんなら私は命もかけられるわ! 一緒に最っ高の漫画を作って、日本の漫画界に革命を起こしてやりましょう! 目指すは日本一の漫画家よ!」
とんでもなく大それた目標だ……。今の少子高齢化社会でさすがにそれは難しいんじゃないか。
……いや、それでもそのくらいの気持ちを持つ方が吉だろう。
目標は高い方がいいし、俺もそのくらいの気持ちで赤根さんと共に漫画家を目指すんだ。
今度こそ、俺のやりたいことを叶えてみせる!
かくして、この日をきっかけに俺と赤根さんの漫画家を目指す日々が始まった。
原作は俺、小玉翔太郎。そして作画は赤根美雨の、二人で一人の漫画として。
漫画家という険しい道のりを二人三脚で進むのはそう上手くいくものではないだろう。けれど、俺はもう逃げない。
いつか赤根さんと共に、必ずや漫画家になってみせる。




