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20話


「とうとうこの時がきたね……」


「そうね……」


 とうとう十二月中旬、夏に応募した漫画賞の結果発表の日がやってきた。赤根の部屋で、一緒にパソコンの画面を眺めている。そこに映し出されているのは、『第十二回、夏の漫画賞結果発表』と書かれた画面。その画面を少し下にスクロールすれば、すぐに結果が見れる状態で俺たちはストップしていた。


 いかんせん俺たちは小心者で、まだ心の準備ができていないからだ。


「……そろそろ、見るよ?」


 赤根の呼びかけに、俺は強く頷いた。


「うん、見よう」


 赤根はマウス操作で画面をゆっくり下にやる。


 俺は固唾を飲み、緊張と不安で震える手を必死に抑えた。張り詰めすぎか、はたまた部屋の暖房が暑すぎるのか、俺の額には汗がびっしょり。


 冬だというのにこの汗の量。緊張のしすぎで心拍数が上がり、体温が高くなっているせいだろう。生ぬるい水の粒が、額をつたって顎まで流れていく。なんだかくすぐったい。嫌に喉が渇いてきた。


「…………」


 俺たちは画面を凝視し続けた。たぶん、瞬きもしていなかったと思う。


 やがて大賞の作品が見えた。……しかし——。


「くっ、……違った!」


 赤根が机を拳で叩き、声を抑えるように唸った。そのパソコンに映し出された大賞の画面には、俺たち二人のペンネーム『ショウマン』の名は書かれていなかった。代わりに別の人の名前が映し出されている。


「……いや、まだだよ。まだ銀賞とか佳作に載っている可能性はある」


 この時点で惜しくも大賞には選ばれなかったことが確定したが、まだ全てを悔やむには早すぎる。俺は気持ちを切り替えて、赤根の肩に強く手を置いた。


「……そうね。……せめて、佳作くらいは——」


 赤根も気を取り直し、画面に目を向き直す。さらに画面を下にスクロールさせて、大賞以外の賞を確認した。


 ……しかし、銀賞と佳作を見ても、そこに俺たちの名は載っていなかった。さらに下の優秀賞、努力賞にも載っていない。


「……ダメ……だったね」


 俺の口から漏れた小さな声が、部屋の中を寂しげに響かせた。まるで傘を刺すまでもない、今にも止みそうな他愛ない小雨のように。


「…………うん」


 赤根がぽつりと返事をし、小さく頷いた。……けれど——。


「……いや、でもしょうがないわよね! しゃーないしゃーない。まあこんなもんでしょ、だってまだ一作目だしね。まだまだこれから頑張って成長していけばいいんだし!」


 赤根は強がるような表情で、強くそう言った。今の気持ちを抑え込んで無理やり笑うように、俺を見つめる赤根。しかしその目には、僅かながらに涙が流れていた。まるでダイヤモンドのように輝く小さな雫が、彼女の頬をつたる。


「うん、そうだよ。これからも頑張ろう! 漫画家になるその日まで」


 いつまでも落ち込んでいる暇はない。たった一回の落選でダメージを喰らっていては、漫画家なんて夢のまた夢だろう。


 俺たちは次の作品に向けて頑張り始めようと気持ちを切り替えた。俺たちの夢はまだ枯れてはいないはずだ。

 

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