第75話 告白
「次は魔道具店に行くよ!」
「おー!!」
もう一度【空間転移】でステラ王国に戻り、屋台で軽食を食べてからアムールがそう言った。
魔道具店では特殊な魔法が込められたアクセサリーや魔法使い用の杖だったり、はたまた何に使うか分からない古びたガラクタなど、いろいろな物が売られている。
「すごい数の魔道具……」
「でしょ? しかも1級品のものばかりだよ!! 僕のお気に入りの店なんだ」
AランクやSランクがたくさんだ……。
あ、これ……回復魔法が込められるネックレスだ。……ウィンは回復魔法が使えないし、これをプレゼントしたら喜ぶかな?
うん、きっと喜ぶに違いない。私の回復魔法はアムールほどではないけど、そんじゃそこらの光魔法の使い手とじゃ比べものにならないくらい強力なはず。身体の一部が欠損でもしない限り回復出来るし、役に立つこと間違いなし!!
ということで買おう。
「金貨10枚だよ」
「きん――!?」
思ったより高かった……けど友達のため……!!
「どうぞ……」
「あい、丁度お預かりしたよ。毎度あり〜」
当分は節約しよう。お金はまだまだたっぷりあるけど、あるからといって金銭感覚が狂ったわけでも無いし、お金が減れば悲しくなるもんね。
「……予約してたあれ、ちゃんとある?」
むむ、アムールのコソコソ話が聞こえてくる。おやおや〜私に隠れて何か買ってるね〜。
私に隠し事しようったってそうはいかないよ。私の耳は特別製だからね。
「ああもちもん。ほれこれだよ」
「ありがとうございます」
何やら怪しいブツを取引してる……? まあ見なかったことにしよう。
「次は少し散歩しよう!!」
「うん!」
さ、散歩……?
♢♢♢
「着いたよ」
「わ〜」
すごい、街全体を見渡せる!! 綺麗……。突然散歩しようって言い出したから急に何?って思ったけど、この景色を見せたかったのか!
「ここはね、僕の逃げ場なんだ」
「逃げ場……?」
「……僕は公爵家の養子になったでしょ? だから後継者教育だったり、聖者になるための修行だったり、たくさん辛いことをしてきたんだ。挫けそうだったけど、そんなときはここにきて心を落ち着かせて、それで頑張ってきた」
確かにここは本当に良い場所だ。景色がいいのはもちろんだけど、理由は他にある。ここ、光の魔素で満ちているんだ。光属性の力が強いアムールならここは自然と魔力の流れが整うし、最適な場所だろう。
「ねえパープ、僕と一緒に公爵邸で暮らさない? ……僕、あの時よりずっと強くなったよ。死霊王にも負けないくらい。今ならパープのことを守れる、あの時みたいに情けない姿は絶対に見せない。だからっ」
「アムールがすごく強くなったの、知ってるよ。だって……【真実の鑑定】で視たから」
それに、凄く努力もしたんだよね。
この鑑定結果を視れば分かるよ。
【名前】アムール・サンタムール ♂
【種族】桃花兎(変異種)
【年齢】7
【魔力値】900/900◁250up
【体力値】200/200◁50up
【スキル】
好感Lv7◁2up 土魔法Lv2 神聖魔法Lv5◁3up 無属性魔法Lv3◁1up 体術Lv5◁2up 棍術Lv3◁NEW 苦痛耐性Lv3◁1up 毒耐性Lv3◁NEW 精神汚染耐性Lv2◁NEW
【ユニークスキル】
『愛で増幅する魔力』Lv3◁1up
『全てを噛み千切る兎』Lv3◁2up
【称号】
無垢な女たらし 一目惚れした者 PARPの眷属 聖者 愛の使徒
【総合戦闘力】2500◁1450up
【ランク】SSS+
「し、真実の鑑定……それってカレンデュラさんのユニークスキルのはず……」
「……そうだよ」
言わなければならない。アムールはお母さんと長く一緒に居たからショックが大きいだろうけど……。
「お母さんは……カレンデュラお母さんは、私にこのスキルを託して…………死んだの」
「…………そっか。どんな最期だった……?」
アムールは目に涙を溜めながら聞く。その声には不安が混じっていた。
お母さんは”崩壊”寸前だった。いつ、魔物としての意識に乗っ取られるか分からない状況だった。だから、アムールはお母さんが暴走して悲劇の最期を迎えたんじゃないかと怯えているのだ。
「死霊王との相打ちだった。お母さんは最後の瞬間までカレンデュラとして、母親として……魔物の意識になんて負けなかった」
「……そっか」
アムールは安心したように少しだけ笑う。
「大好きだったのになぁ……。皆のことを優しく包み込んでくれる、カレンデュラさんを……」
アムールの溜めていた涙がボロボロと零れ落ちる。
「あの時の僕に、この力さえあれば……あの時、もっと生命を懸けてさえいれば……」
「……」
私も、今でもあの時のことを後悔する。何度も自分のせいだと非難する。でもね……
「過去を悔やんだって仕方がないよ。もう二度と、こんな想いをしないように、強くなるしかないんだよ……。そうでしょ、アムール?」
アムールのことを抱きしめながら優しく語りかける。
「……うん、そうだね……!」
アムールは涙を拭い、真っすぐ私の目を見つめる。
「……だからね、さっきの誘いに私は応えることが出来ない」
「……」
「私は誰かに守られるんじゃなくて、誰かを守ることが出来る力を手に入れたいんだ」
もう二度と、力があればと後悔しないように……。
「……薄々、気づいてたんだ。パープはこの誘いには乗らないって。でもね、僕だってもう二度と大切な人を失いたくない。だからせめて……これだけは約束して欲しい」
アムールは私の手を取り、一拍開けてから口を開く。
「何かあったら、僕を頼って」
「――!」
「パープはきっと、僕が止めても意思を曲げないでしょ? だったら、せめて僕を頼って? どんなに危険なことだって構わない。僕にパープを守らせてほしい」
アムール……。
「……分かった。約束ね」
「――! うんっ‼」
「あ、そういえばパープにプレゼントがあるんだった!」
「なーに?」
「さっき魔道具店で買ったんだ。これは”囁き鳩”っていう魔道具で、この鳩に向かって話しかけると対となるもう一つの魔道具に音声が届くんだ」
「へえ~」
電話みたいなものかな? 凄いな、科学ではなくて魔道具でそんなことを再現出来るなんて。
「これで毎日お話出来るね!」
「う、うん。ありがとう」
毎日⁉と内心思いつつ感謝を伝える。まあ、ずっと離れ離れだったけど、これからは毎日話せるなんてハッピーなことだよね。
「えへへ、これでもう寂しくないっ」
……アムールが嬉しいならいっか。私もまあ嬉しいし。
アムールにとってはこの誘いはイコール結婚しようという意味だったけど、案の定パープには伝わらなかった模様。頑張れアムール!




