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一欠片の勇気から始まるうさ耳少女の冒険〜今世こそ勇気を振り絞って友達を作ってみせます!!〜  作者: 氷河の一輪
第1章 金色の悪魔

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第61話 ステラ王国へ

「……ん?」


 えっと、ここはどこだ??

 この状況的に……まーた私は気絶したんだな。うん、この既視感……そうとしか考えられない。

 直前の記憶がうまく思い出せない。確かジェロンが呪いのことについて話していたような……うーん、やっぱり思い出せないや。

 どうやらここはジェロンの寝室のようだ。

 ……すっごい何もない部屋だな。ベットくらいしか置いてない。きっと鍛冶のことばっかりやってて休息とかあんまりとってないんだな。 それともただのミニマリスト?


 寝室を出ていつのも工房の方に顔を出す。

 そこではシーちゃんとジェロンが真剣な表情で話をしていた。二人で武器を眺めてる。ああ、そういえばシーちゃんはダンジョンで手に入れた武具が手に余るからどこかで売りたいって言ってたな。ジェロンに売ろうとしてるのかな?


「ねえ、何の話してるの?」

「おうわっっ!」

 そ、そんな驚かなくても……。

「め、目が覚めたのか」

「うん、急に寝ちゃってごめんね」

「大丈夫よ。ジェロンさんと武器の売買の相談をしていたの」

 予想通りだったね。ジェロンの腕は確かだし、信頼における人物でもあるからそこんところ安心だね。


「そういえばジェロン、私が寝ちゃう前に何か言ってたよね? なんか思い出せなくてさ~申し訳ないけどもう一回話してくれる?」

「あ、あぁぁ~……」

「……」

 何だこの間は? え、何か聞いちゃいけないこと聞いちゃったのかな?


「あ~いや、たいしたことない話だからもういいさ」

「……? そうなの?」

「ああ!」

 呪いについての話なのに? う~ん、怪しいねぇ。さては私に隠し事してるな~?


「そういえばパープちゃん、急に倒れたってことはどこか悪いんじゃない? 一応回復魔法をかけたけど心配だわ……診療所に行った方が良いんじゃないかしら?」

「ええっ⁉ 大丈夫だよ、ほら元気元気‼」

 元気の証明のためにその場でジャンプしてみせる。急に寝た私が悪いのにシーちゃんに心配かけちゃって申し訳ないな。それなのに回復魔法までかけてくれたなんて……本当に天使だっ‼


――ゴーン、ゴーン


「え、もうこんな時間⁉ 馬車が出発しちゃう!」

 予定より長居しちゃったせいで時間がなくなってしまった! 早く出発しないと!

「じゃあジェロン、新装備ありがとうね‼ また今度顔出しに来るよ!」

「待て!」

 シーちゃんの手を引いて工房から出ようと駆け出した瞬間、ジェロンに止められる。


「パープ、辛くなったら全部ほっぽり出していつでも戻って来いよ」


「……うんっ‼ ありがとう‼」


 私、本当に恵まれてるな。私のことを本気で心配して大事にしてくれる人がたくさん居る。帰ってくる場所がこんなにもある。

 感動して涙が溢れてきちゃったけど、恥ずかしいから黙ってシーちゃんの手を引いたまま走る。

 馬車乗り場までシーちゃんは私の顔を見ずに黙ってくれていた。だからもしかしたら泣いてたのバレてたかもしれない。



♢♢♢



 ついに着いてしまった……我が憎き故郷ステラ王国の王都に。

「どうしたの? 顔色が悪いわよ?」

「大丈夫、ちょっと馬車酔いしただけだから」

 大丈夫とは言ったものの、本当は全然大丈夫じゃない。私が王族だってバレたらどうなるか分からないし、殺されるかもしれない。あの最悪な国王や王子王女に会うかもしれないと思うと気分最悪だし、冷汗が出てくる。


 それでも王都まで頑張ってこれたのはアムールの存在が大きい。

 アムールはおそらくステラ王国のどこかにいる。王都に来るまでの村や街をくまなく探したけど見つけられなかった。でもでも、王都は大きいし人がいっぱい居る。仕事も充実してるし、今度こそきっと居るはず!

 そう自分に言い聞かせてここまで頑張ってきたのだ。

 でももう心身共に疲弊状態……こんなんで三聖武闘祭でしっかり戦えるのかな……?


「……よし、気分転換に王都を見て周りましょう‼」

「え……いいの?」

 三聖武闘祭までの時間は残り少ない。それまでに武具の点検やウォーミングアップなどをする必要があって予定がカツカツなのに……私のために?

「ええ‼ ステラ王国は食文化が発展してるからね、一度食べ歩きをしてみたかったの」

 笑顔のままウインクをする。

 カハッ! か、可愛すぎるぅぅぅ‼ なんか浄化されそうだ‼


「そうと決まれば行きましょう!」

「わっ」

 シーちゃんに手を引かれて人混みの中を掻き分けていく。

「人がたくさんいるから逸れないよう気をつけましょ?」

「うん‼」


 これはこれは……合法的な手つなぎ‼ 人混み万歳!

 ……って、こんな風に言ったらまるで私が変態みたいじゃんか。断じて変態ではない! ただ友達が大好きなだけであってね……‼


「パープちゃん、これ何かしら?」

「これは……なんだ?」

 饅頭みたいに見えるけど……でも中に何か野菜が詰まってそう。桃色……もしやこれは私の大好きなキャロッティ⁉

「これはキャロッティ饅頭だよ。二つ買ってくかい?」

「はい!」

 キャロッティ饅頭⁉ キャロッティって蒸し焼き以外にも調理法があるんだ‼


「――‼ 良い香り……」


 ほかほかの饅頭を割った瞬間、ふわりと立ちのぼるキャロッティの甘い香り。饅頭の中心には宝石の如くキラキラと輝く桃色のキャロッティがあった。

 一口かじった瞬間、全身に衝撃が走った。

 生地は驚くほどに柔らかく舌に触れた瞬間にほどけていく。その隙間からじんわりと滲みだすキャロッティの超高密度な旨味。煮詰められたキャロッティは噛むたびに旨味を放ち、ほのかな香りが鼻の奥へ抜けていく。


「なにこれ……」


 ただ甘いだけじゃない。ただ香りが良いだけじゃない。生地の柔らかさだったり舌触りだったり……いろいろな要素が全て合致して、キャロッティを引き立ててこの美味しさを生み出している……。

 噛むたび噛むたびに感動が波のように押し寄せてくる。

 ただの屋台に売ってる饅頭のはずなのに……心が震えるほど美味しい……。


「ははっ、良い顔するねぇ。さては兎獣人だね? ここは兎獣人が多く住んでるからキャロッティを材料にしたお店はいっぱいあるよ!」

 マジですか⁉

 こんなのがいっぱいあったらもう……戻れなくなっちゃうじゃないかっ‼

「良かったわね」

「うんっ‼」


 もう一口……と口に運びかけた時、懐かしい声が聞こえた。


「パープ……?」


 振り返るとそこにはずっと探していた友達の姿があった。


「あ、アムール⁉」

 キャロッティは地球で言う人参です! この世界では桃色だけどそれ以外は大体同じです! 兎獣人は中毒になるくらいキャロッティが大好きなのだ‼

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