第60話 呪い
「やっほ〜、ジェロン〜」
「おう、パープか。装備ならできて――なんだ……そのえれぇべっぴんさんは……??」
酒を口に運ぶ手を止め、口が半開き状態のアホ面ジェロンがそう言う。
おいおい、私のときはそんな反応しなかったじゃんかよ。私だって美少女だろーがよゴラ。
「この子はエトワール大武道大会で友達になったシーちゃん」
「精霊……? もしやオシェロン王国のお姫様じゃねえだろうな?」
「そうだよ?」
「おまっっ!? なんて奴連れてきてんだよ」
ジェロンが耳元で囁く。
だって〜、一人でここに来るの寂しいもん。やっぱ友達との旅って最高だよね!! シーちゃんの色々な面やエピソード知れて幸せだった……。
「こんにちはジェロンさん。私はシー・オシェロンと申します。以後お見知りおきを」
「……お前さん、まるで天使だな。それに比べておめーは……」
「なによ?」
「いや、何でもない」
どうせ悪魔とか言うんでしょ? 失礼しちゃうわ。皆どうして私を悪魔と言うんだか……。確かにシーちゃんは天使だけど、私が悪魔ってのは納得いかない。
もしかしてこれも呪いに関係してるのかな?
「ほれ、これが新装備だ」
「おおお!!」「……すごいわ」
【名称】悪魔の外套
【品質】SS
【効果】斬撃刺突耐性、耐汚染
【名称】悪魔の闘衣
【品質】SS
【効果】斬撃刺突耐性、魔力量上昇、耐汚染
【名称】悪魔のトラップニーハーブーツ
【品質】SS
【効果】魔力を流すと踵やつま先から刃が出現、跳躍力上昇、耐汚染
【名称】悪魔の髪飾り
【品質】SS
【効果】魔法攻撃力上昇、闇魔法補正、闇魔法耐性
前の装備はアクマシリーズだったけど、今回は悪魔シリーズになった!?
効果や品質は上がったけど……悪魔って書いてあるからなんか複雑だなぁ。白基調の装備なのに……どうして悪魔なのよぉ!?
「お前には認識阻害がかからないからな、今回はその効果を消したぶん、他の効果を上乗せしといたぞ」
「あ、ありがとう」
確かに魔力量上昇とか闇魔法補正はありがたい。
魔力量を増やすことは今後の課題でもあったし、闇魔法は苦手だったから補正がかかるのはありがたい!! 闇魔法はレベルが上がれば髪色や瞳の色を変えることが出来るようになる。一番欲しい能力なのに、闇魔法レベルは未だに1なんだよね。魔法系スキルで唯一のレベル1だよ? おかしいって‼ 光魔法はレベル3なのにな……。
補正がかかったってことはもしかして……髪色とか変えられるかも⁉
「――【闇彩塗】――」
「「……」」
……変化なし、と。は、恥ずかしっっっ‼ はたから見たら急に変な事口走ったヤバい人じゃん! 私、厨二病じゃないからね⁉
ふむふむ、やっぱり私は闇魔法の才能がないみたいだね。適性は少しあったけど使いこなせるほどの才能はないみたい。
「おほん。パープ、あの件について俺なりに考えてみたんだが……」
ジェロンは凍り付いた空気を咳払いで変え、シーちゃんの方をチラッと見ながらそう言った。
あの件……ああ、呪いのことね。ジェロンに私専用のピッタリな装備を作ってもらうには呪いのことも知っておいてもらうべきだと思い、呪いのことも話していたのだ。認識阻害がきかないことを話したり、【真実の鑑定】でステータスを見せる上で、呪いを隠しておくのは難しいからね。
チラッと見たのはシーちゃんが居る中で話してもいいかの確認?
「シーちゃんは私の大切な友達、だから話しても大丈夫」
「そうか……」
「俺が思うに、お前の呪いは――自分で自分に呪いをかけたんじゃねえか?」
「えっ?」
自分で自分に呪いを……?
「称号に”自縛者”とある。俺の勘がそう言っているし、そうとしか考えられねえ」
自縛……って自分で自分を追い込んだり、縛り付けたりすることを指すよね……? 私がいつ……そんなことをしたの……?
「お前、一人で何か抱え込んでるんじゃねえか?」
「そ、そんなこと……うっ――」
頭が激しく痛む。ズキズキという痛みと同時に何かの景色が一瞬だけ浮かぶ。一瞬だけど鮮明に、忘れてしまっていたどこかの記憶。
紫色の薔薇が咲き誇る庭園。私を取り囲む着飾った大勢の人々。充満した血の匂い。そして――泣き叫ぶ幼い女の子。
『化――ッ‼‼』
「ぁぁああッ‼」
「ど、どうしたんだ⁉」
「パープちゃん⁉」
ダメ、思い出したくない。ダメなの、思い出したら……
♢♢♢
パープが気絶した後、二人はすぐに協力してジェロンのベットに寝かせた。幸い、頭を地面に打つ前にジェロンがキャッチしたため怪我はない。
「急に気絶しちまって……一体どうしたってんだい」
ジェロンは心配そうにパープの手を握り呟く。さすがの彼も今回ばかりは酒を飲んでいない。
彼は気難しい性格ゆえに常に孤独だった。そんな中声をかけてくれたパープをかなり気に入っていたのだ。あんな態度ではあるが、パープを見る瞳は幼子を見る父親に近いものであった。
「……ジェロンさんの言う通り、パープちゃんは自らを呪っている」
「……?」
「それもかなり強力に、死の危険が迫ってこない限り切れることない鎖を」
「……お前さん、何でそんなことが分かるんだ?」
「……さあ、どうしてでしょう」
ジェロンはこれ以上踏み込むのは危険だと感じ、シーから目を逸らしパープに向き直る。
その背後、シーの瞳はキラキラと星屑が舞うように輝いていた。いつぞやのパープのように……いや、それ以上に美しく輝いていた。その瞳の中の瞳孔は四つ葉のクローバーの形をしていた。
選ばれし者、選ばれし血筋のみが開花させることの出来る瞳の瞳孔。その形にどんな意味があるのか、その輝きに何を背負っているのか、パープはまだ知ることが出来ない。




