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迷宮レストラン  作者: 悠戯
いつか何処かの物語

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本当に美味しい食べ物


 今日も今日とてお客さんのいない魔王の店にて。

 アリスとリサが何やらお喋りをしていました。


 もしかすると客数ゼロが常態化しているように見えるのを心配する向きもあるかもしれませんが、それに関しては単に雑談向きのタイミングを切り取っているからであり、ランチやディナータイムの売上で一応は黒字経営となっているのでご安心をば。


 まあメタい余談はさておいて、ぼちぼち本題へと移りましょう。



「ははぁ、本当に美味しい食べ物ですか?」



 リサから話題を振られたらしいアリスが、不思議そうに小首を傾げておりました。

 その話題というのが「本当に美味しい食べ物」。「すごく美味しい」とか、あるいは「不味い」ならばその意味するところは簡単に分かりますが、「本当に美味しい」という言い回しには様々な解釈の余地がありそうです。



「ほら、食べ物の好き嫌いがある人って、色々と嫌いになった原因があるものでしょ? まあ先入観で食わず嫌いしてるだけな場合もあるだろうし、全部が全部ではないかもだけど」


「ええ、まあ、そうですね?」


「その苦手を克服するやり方の一つとしてね、あえて苦手な食べ物を食べさせるって方法があるんだよ。ただし、そのジャンルの中でも特別にお値段が高かったり腕の良い人が作ったのをね」


「ああ、はいはい。なんとなく読めてきましたよ」



 食をテーマとして扱うフィクション作品ならば、それなりに見かける展開でしょう。

 なんらかの食材や料理に苦手意識を持つ人に、あえて苦手なブツを食べさせたら意外に美味しく頂けてしまい、なんなら大好きになりましたよ……みたいな感じの例のヤツです。



「マンガとかだと分かりやすくするために誇張されてる部分もあるんだろうけど、そういう意識の変化自体は丸っきりの眉唾ってわけでもないと思うんだよね」


「嫌いになった原因にもよるんじゃないですか? それこそロクに食べたことがないのに食わず嫌いしてたですとか、あとは初めて食べた時に質の悪い安物に当たったとかのケースなら、同ジャンル内の品質の良いのを食べたら認識が切り替わりやすそうな気はしますし。逆に、苦手意識が強化されてしまうこともありそうですけど」



 苦手意識を克服できるか、それとも金輪際食べたくないと思うかは人それぞれ。

 元々の好き嫌いの原因や個々の味覚や嗅覚の感度にも左右されそうですが、苦手意識のあるジャンル内の最上級品、すなわち「本当に美味しい食べ物」に苦手を克服できる可能性があるという点に限れば強く反対する人はそういないのではないでしょうか。



「『かわいそうに、本当に美味しい〇〇を食べたことがないんだな。一週間待ってください、俺が本当に美味しい〇〇を食べさせてあげますよ』……みたいのは流石に挑発的に過ぎるというか、そんな言い方する人のために時間を作るのがそもそもイヤだなぁってなっちゃうかもだけど」


「まあ、言わんとすることは分かりますけど。あまり特定の作品を想起させるような言い回しは無用のカドが立ちかねないので、もうちょっとボカしの度を強めでお願いしますね」



 そろそろ脱線の度合いが大きくなってきましたが、ここまで来ればアリスにもリサが言わんとする結論がなんとなく読めてきました。その思惑に乗るかどうかは、この時点ではまだ決めかねていましたが。



「あのね、こないだお爺ちゃんが水戸に旅行に行ってきたんだけど、そのお土産として藁に包まれた本格的な納豆をいっぱい買ってきたからお裾分けを……」


「あらあら、これはご丁寧に。是非、お気持ちだけもらっておきますね」


「お気持ちだけじゃなくて、品物とセットでもらってくれたほうが嬉しいんだけど。アリスが納豆苦手なのは知ってるけど、これを食べれば好き嫌いが治るんじゃないかなって」



 リサが持参したビニール袋から品物を取り出す前から、アリスは完全に拒絶の姿勢を決め込んでいる様子。巨大隕石の墜落くらいなら眉ひとつ動かさず平常心で処理できる先代魔王の数少ない弱点が、この独特の臭気を放つ大豆発酵食品なのです。


 無論、アリスもリサが善意で勧めてくれているのは理解していますし、苦手な食品にチャレンジする抵抗感を少しでも和らげようと、ちょくちょく脱線しつつも長々と小話を展開していたのも気遣いのうちだったとは分かっています。分かってはいるのです……が、それでも人には克服のための努力すら困難な物事があるのです。


 わざわざリサが持参したあたり、お土産として持ち込まれた納豆が本当に上等なものなんだろうというのも頭では分かっていましたが、それでも藁の包みを開けてみるまでが限界。あの独特の風味をちょっとでも嗅いだらもう駄目でした。



「や……やっぱり無理です、ごめんなさい!」


「あっ、逃げた!? 待って待って、せめて一口だけ!」



 驚くべき魔力操作の練度によって、瞬時に世界の裏側あたりまで空間転移で逃げるアリス。神経を集中させて惑星の反対側に逃げた相手の気配を感じ取り、即座に追跡を開始したリサ。一見無駄なようでいて実際無駄な、無駄に高度すぎる追いかけっこが始まりました。



どうも、ご無沙汰しております。

最近は『転生して聖女見習いになったと思ったら何故か毒手の親戚みたいなトンチキ拳法を極める流れになってるんですけど!?』(略称『テンドク』)というタイトルが長すぎて作者も五十話を過ぎるあたりまで覚えられなかった新作を書いてました。そして、もう完結しました。たぶん毒手ラブコメ界隈では一番面白いと思います。界隈が狭すぎて他にあるのかは知りませんが。毒手ラブコメに興味のある方は作者ページからどうぞ。


それで書き終えて手が空いたので、またしばらくはレストランとアカデミアの番外編を書いていこうと思います。以上、近況報告でした。

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― 新着の感想 ―
まあ山◯も親父とおんなじことしてますもんね。(血のソースの件とオイスターでの日本酒の件)
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