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勘違い暗殺者の演出無双 ~暗殺成功率100%。演出が納得いかないので、クライアントからの暗殺締切を延長させてもらいます~  作者: ぶらっくそーど
第二部「幕間劇——あるいは、演出家の物語」

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理事の影、演出家の影ー[4]


 出発前夜。


 全員が準備に追われる中、俺は一人で手帳を開いていた。


 ベッカーを追う作戦の概要を整理する——つもりだったが、別のことを書いていた。



『フィーネを班長にした。正直、不安はある。あの子はまだ若い。実戦経験は積んでいるが、班を率いた経験はない。だが——いつまでも師匠の影にいては成長できない。巣立ちの時だ。……巣立ち、か。偉そうなことを書いているが、俺自身がフィーネと離れるのが寂しいだけかもしれない。あの子の「お師匠様!」という声が聞こえない日が続くのは——ちょっとだけ、堪える。……ここは検閲対象だ。特にフィーネには見せるな。泣くから』



 書き終えて——手帳を閉じようとした時。


「お師匠様」


 フィーネが部屋の入口に立っていた。


「……いつからいた」


「今来ました。……あの、お師匠様」


「何だ」


 フィーネが——俺の前に正座した。真剣な顔だ。


「班長を任せてくれて、ありがとうございます」


「ああ」


「わたし、絶対にちゃんとやります。リゼットさんとセレスティーヌさんを守って、ハイリゲンとシュタインバッハの〝末端〟を見つけて、証言を取って——」


「フィーネ」


「はい」


「一つだけ、約束してくれ」


「何でも」


「——()()()()()()。危険を感じたら、すぐに撤退しろ。証拠が取れなくても構わない。お前たち三人が無事に帰ってくることが——何よりも大事だ」


「…………」


「師匠としての命令だ。——()()()()()


 フィーネの目が潤んだ。


「……はいっ。絶対に帰ります。お師匠様のところに」


「ああ。待っている」


 フィーネが立ち上がり、部屋を出ていった。出口で振り返って——満面の笑みを浮かべた。


「お師匠様。わたし——お師匠様の弟子で、よかったです」


 ……こういうことを言われると、手帳に格好いいことを書く余裕がなくなる。


 手帳に一行だけ書いた。


『俺も——お前が弟子で、よかった』


 一行だけ書いて、すぐに手帳を閉じた。


 ……こういうことを書くと、後で読み返した時の自分が恥ずかしい。だが——書かずにはいられなかった。芸術家は、感動を記録する生き物だから。


 ……言い訳がましいな。



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