表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勘違い暗殺者の演出無双 ~暗殺成功率100%。演出が納得いかないので、クライアントからの暗殺締切を延長させてもらいます~  作者: ぶらっくそーど
第二部「幕間劇——あるいは、演出家の物語」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/76

脚本家が来た日ー[1]


 ()()()()()()()()()


 多い。明らかに多い。拠点の廃劇場が手狭になった。もともと俺一人で使っていた場所に、ニーカが加わり、フィーネが加わり、リゼットが加わり、セレスティーヌが加わり——ここまでは何とかなっていた。


 だが七人目のエリザベッタが加入したことで、ついに物理的な限界が来た。



「レヴィアン様。寝室が足りません」


 ニーカが朝食の席で報告した。


「俺の作業部屋を潰せば、一部屋作れる」


「あそこは壁一面に脚本ノートが貼ってあります。潰したら、レヴィアン様が精神的に死にます」


「うーん……否定できないな」


「お師匠様! わたし、フィーネと同室でもいいですよ!」


 フィーネが手を挙げた。隣に座っているエリザベッタを指して。


「え……わたしと?」


「うん! エリザベッタさん、同い年くらいですよね? 一緒の部屋の方が楽しいですよ!」


「同い年ではない。わたしは二十七だ」


「えっ!? お姉さんだったんですか!?」


「……お姉さん」


 エリザベッタが複雑な顔をしている。《黒幕連(カーテンコール)》の次期座長候補だった女が、十二歳の少女に「お姉さん」と呼ばわりとは。……微笑ましいが、本人には言わない方が賢明だろう。



「とりあえず、部屋の問題は後で考える。——今日は、エリザベッタの〝初日〟だ」


「初日?」


「試用期間の初日だ。脚本家として何ができるか、見せてもらう」


 エリザベッタが姿勢を正した。……真面目な子だ。父親に似ている。


「あの……一つ聞いてもいいですか」


「何だ」


「わたしの仕事は〝脚本を書く〟ことですよね。でも——レヴィアンは今まで自分で脚本を書いていたんですよね? わたしが入ることで、何が変わるんですか」


 いい質問だ。


「俺は演出家だ。脚本は書くが、脚本家ではない。——正直に言えば、俺の脚本通り率は歴代平均37%だ」


「37%……」


「低いだろうが、即興成功率は100%だ。つまり――俺の強みは脚本ではなく即興にある。脚本が得意な人間が加われば、俺は即興に集中できる。——役割分担だ」


「なるほど……」


「ただし、お前の脚本をそのまま使うとは限らない。俺が演出上の判断で書き換えることもある。——脚本家と演出家の関係だ。文句はあるか」


「ありません。……むしろ、そう言ってもらえた方が楽です。一人で全部書くのは——」


 エリザベッタが言いかけて、口を噤んだ。


「一人で全部書くのは?」


「…………お父様と、同じになってしまう気がして」


 一人で全てを書く。一人で全てを操る。——ヴィットリオがやっていたこと。


「お前は一人じゃない。ここには六人いる。——いや、お前を入れて七人だ」


「…………はい」


 エリザベッタが、小さく——だが確かに、頷いた。




 ◇◇◇




 エリザベッタの初仕事は、思いのほか早く来た。


 朝食の後片付けをしている最中に、《終幕庁(フィナーレ)》から依頼書が届いた。


 通常の赤い封蝋だ。黒い封蝋の特別指令ではない。《黒幕連(カーテンコール)》壊滅後初めての、普通の依頼。


「通常業務の再開、か。——ある意味、ほっとするな」


 封蝋を切る。



 標的:ヘルマン・ブラウト。

 ヴァイスハイム市の財務官。罪状:公金横領、証拠隠滅のための証人殺害教唆。

 危険度:C。本人に戦闘能力なし。ただし市の警備隊長と癒着しており、武力による妨害の可能性あり。

 推奨遂行期限:十四日間。



「Cランク。……久しぶりの〝普通の依頼〟だな」


「お師匠様。Sランクの後にCランクって、ちょっと拍子抜けしません?」


「フィーネ。芸術に大小はない。小さな舞台でも、完璧な作品は作れる。——むしろ、小さな舞台でこそ演出の腕が問われる」


「さすがお師匠様! 深い!」


 深くはない。本音を言えば、Sランクの連続で精神的に消耗していたので、Cランクは正直ありがたい。だが師匠の威厳のために、そうは言えない。


「エリザベッタ」


「はい」


「初仕事だ。——この依頼の〝脚本〟を書いてみろ」


「え……いきなりですか?」


「いきなりだ。お前の力を見たい。依頼書の情報だけで、どんな〝物語〟を構想するか。——脚本家としての初舞台だ」


 エリザベッタが唾を飲んだ。だが——目に覚悟が宿った。


「……分かりました。夕方までに、第一稿をお出しします」


「待っている」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ