表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勘違い暗殺者の演出無双 ~暗殺成功率100%。演出が納得いかないので、クライアントからの暗殺締切を延長させてもらいます~  作者: ぶらっくそーど
開幕劇——あるいは、打ち切りを許さない男

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/76

笑われる芸術家と、笑えない道化ー[1]


 ()()()()()()()()()()()()()()



 批評家? 違う。締切? 近い。金欠? もっと近い。

 だが、真の答えはこれだ。

 ——()()


 いやいや、笑いが敵ってどういうことだよ、と思うだろう。俺もそう思うが、現実を見てほしい。



「次の標的は《喜劇(コメディア)》。《黒幕連(カーテンコール)》の幹部の一人です」


 ニーカが資料を読み上げている。いつもの二歩後ろ。いつもの無表情。……いや、最近ちょっとだけ表情が柔らかくなった気がする。ルナを助けた件以来……ただの気のせいかもしれないが。


「《喜劇(コメディア)》。本名不明。表の顔は旅芸人の一座の座長。各地を巡業しながら暗殺活動を行っている。固有スキル——《万人笑殺(リーゾ・モルターレ)》」


「……万人笑殺(リーゾ・モルターレ)?」


「はい。周囲の人間を()()()()()()()()スキルです」


「笑わせる? ……それの何が暗殺と関係あるんだ」


「笑いが止まらなくなるのです。文字通り、()()()()()()


 ……冗談みたいな能力だが、どうやら冗談じゃないらしい。


「標的の周囲にいる人間が突然笑い始め、やがて呼吸困難に陥り、最終的には窒息死する。——ただし、死因は〝笑いすぎによる呼吸停止〟であり、外傷はゼロ。毒物反応もなし。司法解剖しても〝原因不明の突然死〟としか記録されません」


「笑い死に……」


 暗殺としては確かに完璧だ。痕跡が残らない。証拠が残らない。しかも目撃者がいたとしても「みんなで笑ってたら一人が死んだ」としか証言できない。


 だが——芸術点は()()だ。


 笑い死にのどこに物語性があるんだ。どこにドラマがある。死の瞬間を〝作品〟として完成させる気概が微塵も感じられない。


 ……と、俺の芸術家としての本能は憤っているのだが。



「お師匠様。笑い死にって、怖くないですか……?」

 フィーネがおずおずと聞いてきた。

「怖い? 怖くはない。()()()()()()

「げ、下品……」

「芸術性のない暗殺は、ただの殺人だ。笑い死にさせるなど、暗殺者の沽券に関わる蛮行だ。——俺なら、()()にやらない」

「でもレヴィアン様、その〝下品な暗殺〟をやる人を倒さなきゃいけないんですよ」


 セレスティーヌが現実的なことを言ってきた。最近この子のツッコミ力が上がっている。リゼットに師事でもしているのだろうか、うーむ。


「それはそうだが……ん~……」

「何を悩んでるんですか」


「いや……〝笑い〟を武器にする相手に対して、どんな演出で対抗すればいいのか。前回の《風刺劇(サティーラ)》は〝風刺を風刺で返す〟ことで倒した。なら、今回は〝笑いを笑いで返す〟のか? だが俺は芸術家であって、お笑い芸人ではない」


「お師匠様、わたし思ったんですけど」

 フィーネが手を挙げた。

「お師匠様って、意外と面白いですよ?」

「……何がだ」

「だって、〝暗殺は芸術だ〟って真剣な顔で言うところとか! わたし最初聞いた時、何言ってるんだろうこの人って思って——あ、いえ! 今はちゃんと分かってます! 芸術ですよね、芸術!」

「…………」


 フィーネの取り繕い方が下手すぎて、かえって心の傷が深いんだが。


「あの……わたしも、レヴィアンが手帳にメモする時の独り言、けっこう好きです。〝照明効果として満点〟とか、真剣に書いてるところ……可愛いなって……」


 セレスティーヌ。お前もか。というか、可愛いって何だ。芸術家に対して可愛いは禁句だぞ。

 リゼットを見た。リゼットは無言で目を逸らした。ノーコメントを貫く姿勢。それはそれで傷つく。


「…………ニーカ。お前は何か言うことあるか」

「レヴィアン様は、常に崇高な美学に基づいて行動されています。その姿勢は、わたしが最も尊敬する部分です」


 ニーカだけがブレない。この子がいなかったら、俺の威厳は今ごろ粉々だ。


「ニーカ……お前だけだ、俺のことを分かってくれるのは……」

「はい。レヴィアン様の芸術は、いずれ必ず世界に理解されます」

「ニーカ……!」

「はいはい、師弟愛はその辺にして。——で、《喜劇(コメディア)》の居場所を特定するんでしょう? 旅芸人の一座なら、巡業ルートがあるはずです」


 リゼットに切られた。……このタイミングで切るあたり、リゼットは本当にツッコミの才能がある。衣装係にしておくのが惜しい。


 いや、衣装係にしておく。あの子の潜入能力は替えが効かない。


「……とにかく。《喜劇(コメディア)》の居場所を特定するぞ。旅芸人の一座ということは、巡業ルートがあるはずだ」


 意識を切り替えよう。芸術家は切り替えが早いものだ。そして、立ち直りも早い。……たぶん。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ