第三節.作戦会議
翌日、午後二時。公安本局、三階部隊会議室。
「これより、『八咫烏第三拠点掃討作戦』の会議を執り行う。進行は、部隊指揮の私。浅上 朔夜特務執行官が進めさせて頂く」
全八十班、人数にして約四百八十名の執行官達が一堂に会している。
その中には、慎也と朝日。それに、西園寺と環くんの姿も見えた。
「部隊指揮の浅上さん、確か任命式で話してた人だよね」
「そうだったはず、若そうな女性なのにすごいな」
「今回の任務地は、福島県北西部。山奥の廃リゾート施設だ」
スクリーンに映し出されたのは、任務地の写真と見取り図だ。千葉の某有名テーマパークほどの大きさだ。作戦の規模感に思わず身震いする。
「先行部隊は、宇井雁亜 准特務執行官率いる第一部隊。本隊は、私率いる第二部隊と鳴上特務執行官率いる第三部隊。そして、遊撃隊が天野唯華特等執行官率いる第四部隊」
スライドが切り替わり、見取り図に合わせた各班の陣形が表示される。
スライド上部一列には第一部隊、その下に左右に分かれ第二部隊と第三部隊。そして、並んだ二つの部隊を第一部隊と挟み込むように後方に配置される俺が所属する第四部隊。
「遊撃部隊、第四部隊は戦況に合わせ陣形を上下し臨機応変に対応してもらう。第一部隊は、二、三、四部隊——本隊の突撃を確認次第、第二、第三部隊に加わり戦線の維持、拡大をしてもらう」
再びスライドが切り替わり、表示されたのは第二課の極秘潜入捜査で入手した幹部の顔写真と情報だ。
「最後、八咫烏がこの施設で何を行なっているか、と主力幹部数名を伝える。第一に、目的は地脈の確保だと推察される。このリゾート地は魔人歴で龍族が統治していたとされ日本でも屈指の地脈だ。地脈の確保により魔術兵器の開発、霊獣の錬成、果ては霊骸実験などが高精度で可能となる。そのため、この地が彼らの計画遂行の主要施設なのは間違いないだろう」
ここで、浅上特務執行官の前に座っていた女性が水を差し出した。
「浅上さん、どうぞ」
「あぁ、ありがとう椎名」
差し出されたペットボトルの水を半分ほど飲み、一息ついた後に作戦概要の説明を再開した。
「こほん、第二課が入手した主力幹部の写真はこの三名。右から、金城 ゆかり。伊瑠未 このは、春日部 邑。この三名だ、特に最後の春日部は霊骸部隊隊長であり推定ではあるが第一階梯並みの実力だ。発見、対敵した際は速やかな情報伝達を忘れるな。敵は、これだけじゃない。未だ観測できない八咫烏の『王』や、同じく第一階梯魔術師数名。油断は禁物だ」
第一階梯。冠位階梯の一つ下。人類が到達できる最高地点。ますます、自分たちが戦う相手は強大だと思い知る。緊張、恐怖、死ぬかもしれないという実感が今になって訪れる。
「これで、以上とする。次の集会は一ヶ月半後の最終ミーティングだ。各部隊の作戦会議などは自由にしてもらって構わない、それ以外にも有力な情報の入手があれば私に伝えてくれ。質問があるものはいるか」
手を挙げるものは誰もいない。
皆、作戦を理解し肯定している。否定しどころのない、完璧な作戦概要だ。最終的な作戦や、各部隊の具体的な動きなどはこの後伝えられることだろう。
「いないな。それでは今日は解散とする。各自、休息を取るなり訓練に励むなり自由に過ごせ」
集会は終了し、浅上特務執行官が壇上から去っていく。
浅上特務執行官が見えなくなったのち、会議室はザワザワと動き出した。天野班長は、騒々しい執行官達に少し嫌な顔をしながら、俺たちに視線を送った。
「私たちの班は、明日午前九時に地下三階の訓練場に集合だ。今日は、作戦概要などを叩き込んでおけ」
「「「「「はいっ!」」」」」
二ヶ月後、俺たちは第一階梯並みの化け物達が渦巻く戦場へと足を踏み入れる。
緊張と死への恐怖を押し殺し、肺に沈む重い空気を吐き出した。




