第55話 模擬戦―ヨウとエリック②
ヨウvsエリックの戦いの行方は。
《フロンティア》の実力者を相手に、特訓を終えたヨウがその力を見せつけられるのか。
俺はアルティエルンを構え、迫る炎を斬った。
その瞬間。
巨大な炎が真っ二つに裂けた。
裂けた炎は俺の左右を通り抜け――。
ドゴォォン!!
背後で凄まじい爆発を起こす。
だが、完全には防ぎ切れなかった。
掠めた炎と爆風が俺の体を打つ。
「くっ……!」
すぐに回復魔法を発動。
――回復
(凄まじい威力だ。
この眼がなければ危なかったな)
俺がエリックへ視線を向けると、その場にいた全員が絶句していた。
アルティエルンには、元々魔力を取り込む性質がある。
そこへ、“魔法の理”の性質が加わった。
恐らく、それが今の現象を引き起こしたのだろう。
そして。
エリックが、信じられないという顔で呟いた。
「嘘だ……。
これに耐えた奴なんていなかったのに……」
「確かに凄い技だった。
だが、相手が悪かったな」
俺は一気に踏み込む。
暗殺剣。
さらに、シルヴァたちとの特訓で磨き上げた剣術。
その全てを乗せ、エリックを圧倒していく。
「くそっ……!」
エリックは必死に防ぐ。
だが、剣圧に耐え切れていない。
再び距離を取り、技を発動しようとする。
だが――。
「馬鹿だな。
そんな隙だらけの技、実戦じゃ役に立たないだろ」
――暴風砕破
「っ!」
エリックが飛び退く。
だが、そこへさらに追撃。
――雷撃
「ぐっ……!」
回避。
さらに――。
――爆炎連焼
「しまっ――!」
避けた直後だった。
体勢を崩したエリックが、爆発に巻き込まれる。
ドォン!!
「ぐあぁっ!!」
吹き飛ばされながらも受け身を取るエリック。
だが、疲労は隠せていなかった。
「はぁ……はぁ……。
だったら!」
再び剣先を天へ向ける。
(また溜め技か)
俺はアルティエルンを弓へ変形させる。
魔力矢を3本生成。
そして放った。
ヒュン!!
「弓だと!?」
エリックが詠唱を中断して回避する。
「くそっ……!
騎士道の欠片もない奴め!」
「騎士道?
そんなもの、戦いでは何の役にも立たたないだろ」
俺は即座に弓を槍へ変形させ、一気に距離を詰めた。
ルイーズとの鍛錬。
短期間とはいえ、その成果は確かに身についている。
槍に慣れていないエリックは、防御が徐々に乱れ始めていた。
穂先が何度も体を掠める。
そして――。
決定的な一撃。
エリックがその場に崩れ落ちた。
「くそっ……くそ……!」
立ち上がろうとする。
だが、膝が震え、立てない。
俺は槍の穂先を喉元へ突き付け、ロスを見る。
「そこまでですね。
2人とも、お疲れ様でした」
ロスの宣言で、戦いは終了した。
(さすがはヨウ殿。
私の眼に狂いはなかったようだ)
「あいつ、あれだけ戦って顔色一つ変えてねえぞ。
恐ろしい奴だ」
「あぁ。
だが、今起こっている内乱を鎮めるにはありがたい戦力だ」
「だな。
いつか俺も手合わせをお願いしてみるか」
「やめておけ。
勝てないと思うぞ」
(俺でも厳しいかもしれないな)
マーカスとフォードの俺への評価は、さらに上がったようだった。
エリックのぼろぼろな姿を見て、《フロンティア》のメンバーは言葉を失っていた。
ヴィヴィアンとジャスティンが、エリックを抱えて戻っていく。
「大丈夫か?」
「大丈夫だよ。
……こんな状態だけどね。
すまない……」
「ううん。
エリックはよくやったよ。
ヨウ君が強すぎただけ。
多分、この場で彼を抑えられる人はいないと思うほどに」
「ありがとう……。
ヴィヴィアン、ジャスティン」
(また挑戦させてもらうからな。
次は必ず……)
エリックは完敗した。
だがその敗北は、ヨウへの執着心をさらに強める結果になったようだった。
俺はレインたちの元へ戻る。
「予想以上だったな。
エリックさんのあんな姿を見ることになるとは思わなかった」
レインは苦笑する。
「ヨウはさすがだね!
これで、私たちの実力は証明できたってことでいいのかな?」
「そうだな。
さすがに十分だと思う」
「だな。
俺は負けちまったが、それでも2勝1敗で勝ち越しだし」
レインは勝ち誇ったように笑った。
「レイン、次は勝たないとね」
「わかってるよ!
任せとけ」
セラとレインがそんなやり取りをしていると、ロスの声がかかった。
「ヨウ殿たちの実力は証明されたと思うが、どうかな?」
「はい。
間違いなく実力者です。
十分な戦力かと」
ミラが代表して答える。
ヘルディ家は、俺たちを認めてくれたようだ。
「俺たちも異存はないぜ!
なぁ、マーカス?」
「あぁ」
「《フロンティア》よ。
お前さんたちも、そうだろ?」
「そうね。
私たちの完敗。
悔しいけど、強かった」
ギルド側も、俺たちの実力を認めてくれた。
「では後ほど、私の執務室へ集まってください。
作戦を立てましょう」
ロスの言葉で締められ、ひとまず一息つくことになった。
模擬戦と言えるかわからないほど激しい戦闘だった。
だが、力を示すことに成功した俺たちは、来る本当の戦いに向けて準備を進めることとなった。
――そんな中。
ただ1人だけ、熱のこもった視線をヨウへ向ける者がいた。
(あのクールな態度、強さ、容赦のなさ……。
素敵ですわ、ヨウ殿。
是非、私の――)
うっとりとした表情を浮かべるアリ。
その瞳には、どこか危険な光が宿っていた。
そして――。
セラのポーチの奥。
闇に紛れるように潜んでいたサマエルが、細く目を細める。
(くくく、さすがですね。
あの訓練を経て、格段に成長している。
この成長速度……。
眼の力だけでは説明がつきませんね)
蛇の口元が、不気味に歪む。
(やはり、ヨウ様自身の資質……。
これはもしかすると――)
サマエルは、歓喜を押し殺すように笑った。
(…高揚を禁じえませんね)
最後までお読みいただきありがとうございます。
これにて模擬戦は終了。
3人それぞれ成長した姿を見せることができました。
そして、ヨウに何やら視線を向けるアリと、サマエルの思惑とは。
次回もよろしくお願いします。




