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収奪の復讐者 ~奪われた全てを取り戻す悪魔の眼~  作者: 冬野 ヨル


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第50話 地下通路の先へ

いつもご覧いただきありがとうございます。

地下通路を抜けるヨウたち。

騒乱に巻き込まれていくヨウたちはどうなるのか。

地下へ降りると、そこには細長い通路が続いていた。


「こんな通路があったなんて知らなかった……。

 割と長くメルにいたはずなんだけどな」

レインが感心したように呟く。

セラは興味津々なのか、辺りをきょろきょろ見回していた。

「当然です。

 ここはロス様と深く関わる者しか知らない秘密通路ですので」

案内役の男が淡々と答える。

「それより、どうしてこんな事態になったんだ?」

俺は気になっていたことをぶつけた。

「私たちも詳しくは把握しておりません。

 ですが――」

男は少し間を置く。


「ロス様のご子息であるタイ様。

 第四区を管理していたその方が、クーデター側へ加担しているとのことです」

「どうしてロスさんの息子が……?」

レインも驚きを隠せない。

「理由はわかっておりません。

 ですが、ギルド代表であるザック殿が突然襲撃され、現在も意識不明。

 さらに、《アウトライダース》がギルドへ反旗を翻し――」

男の表情が険しくなる。


「背後には《アナスタシ教団》がいると伺っています」

「めちゃくちゃだな……。

 覚えてるか、ヨウ?」

「あぁ。

 アウトライダース……ヴィクターのパーティだ」

俺はあの時の戦いを思い出す。


ヴィクター本人と、その幹部たちは既に始末した。

だが、残党までは処理できていない。


「今は誰が仕切ってるんだ?」

レインが尋ねる。

だが、案内役は首を横に振った。

「そこまでは……。

 恐らく、ロス様なら把握されているかと」

そんな会話を交わしながら進んでいくと、やがて大きな扉が見えてきた。

扉を開ける。

その先に広がっていたのは、メル評議塔の地下空間だった。


「ここはメルの中心――評議塔です。

 こちらへどうぞ」

さらに奥へ進む。

すると、鉄格子に囲まれた小部屋のような空間が現れた。

10人ほどは入れそうな広さだ。

「ここからどうするの?」

セラが首を傾げる。

「《魔導昇降機》です。

 これで評議塔の上階へ向かいます」

そう言って男は横にあるレバーを引いた。


ガコン――


重い音と共に鉄格子が開く。

(まさか、エレベーターみたいなものがあるとは……。

 文明的な部分もあるんだな)

俺は少し感心していた。

俺たちはそのまま中へ案内される。

案内役の男が、壁に埋め込まれた装置へ魔力を流し込んだ。


ガタン。

低い振動と共に、床がゆっくり浮き上がる。

ウゥゥン――

昇降機は、そのまま上昇を始めた。

「凄い!

 おもしろーい!

 床が上がってる!」

「おぉ!

 感動するな!

 こんなものがあったなんて!」

セラとレインは、相変わらずマイペースにはしゃいでいる。

だが、その様子を見て少し安心した。

こんな状況でも、こいつらは変わらない。

「《魔導昇降機》と言ったが、テーヴァの技術か?」

俺はふと気になって尋ねた。


「はい。

 ロス様は以前よりテーヴァと深い親交がありますので。

 テーヴァ女王陛下とも交流がおありです」

「なるほどな……」

「その関係もあり、このような技術を積極的に取り入れているのです」

改めて、ロスという人物の凄さを実感する。

一介の商人から成り上がり、都市を支配する立場にまで上り詰めた男。

さらに他国の王族と繋がり、その技術すら都市発展へ利用している。

並大抵の人間ではない。

(外交官としても相当優秀なんだろうな……)

そんなことを考えているうちに、昇降機は最上階へ到着した。

案内役は俺たちをひとつの部屋の前まで連れて行く。

「この部屋にロス様がおられます。

 我々は外で待機しておりますので、どうぞ中へ」


俺は軽くノックをして部屋へ入った。

「おぉ、ヨウ殿!

 お待ちしておりました!」

入った瞬間、ロスが歓迎するように立ち上がる。

「久しぶりだな」

俺が挨拶を返したところで、部屋の奥に見慣れない顔がいることに気付いた。

数人の男女が、こちらを怪訝そうに見ている。

「父上、その方が例の?」

そのうちの1人が口を開いた。

「そうだ。

 ヨウ殿、紹介しましょう」

ロスは順番に紹介していく。

「長女のミラ。

 長男のロッゾ。

 そして次女のアリです」


――ミラ・ヘルディ

 第一区 管理者


――ロッゾ・ヘルディ

 第二区 管理者


――アリ・ヘルディ

 第三区 管理者


「その節は、父上を助けていただきありがとうございました」

ミラは礼儀正しく頭を下げる。

落ち着いた雰囲気の女性だった。


一方――

「どうせ父上の権力目当てで近付いたんじゃないのか?」

ロッゾは露骨に警戒心を向けてくる。

「父上の権力は偉大だからな。

 まぁ、卑しい連中じゃないといいけどな」

「ロッゾ、よしなさい」

ロスがすぐに制止した。

「ふ~ん……。

 よろしくお願いしますわ」

アリはどこか掴みどころのない態度でこちらを見る。

「ヨウ殿。

 まずは今回の件について詳しく説明しましょう。

 どうぞ、お掛けください」

俺たちは席へ着き、ロスから今回のクーデターについて説明を受けた。


首謀者は、ザックの秘書を務めていた女――ミーナ。

そしてその正体は、《アナスタシ教団》の一員だった。

ミーナは、第四区管理者であるタイが教団と関わっていたことを利用し、彼を取り込んだ。

さらに、《アウトライダース》の残党を配下へ加えることで軍事力まで獲得。

加えて以前から、第三区には教団の人間が多数潜伏していたらしい。


その結果――

第三区・第四区と、第一区・第二区による衝突へ発展。

現在のメルは、都市を二分する争いへ陥っているという。


一通り説明を聞いた後、俺はロスへ尋ねた。

「その《アナスタシ教団》ってのは、結局なんなんだ?」

「アナスタシ教団とは――」

ロスは静かに語り始める。


世界各地で暗躍する巨大教団。

目的は、“死の超越”。

奴らは死を克服するため、日々危険な研究を繰り返している。

そのためなら倫理すら平然と踏み越える。

極めて危険な思想集団――それがアナスタシ教団だった。


「危ない連中だな……」

「はい。

 死は生き物にとって自然なもの。

 ですが、奴らはその禁忌を踏み越えようとしているのです」

「なるほど。

 タイ殿が教団へ関わったことで、弱みを握られてしまったんですね」

レインが腕を組みながら呟く。

「その通りです。

 我が一族から教団と関わる者を出してしまったこと、痛恨の極みです」

ロスは苦々しそうに目を伏せた。


「本来なら我々だけで解決すべき問題。

 ですが、既に手に負えません」

「こっちの戦力は?」

「幸い、ギルド所属の《フロンティア》《ホライゾン》《バスティオン》は味方として動いてくれています」

ロスは続ける。

「現在、それぞれが第一区、第二区、そして評議塔の防衛を担当しています。

 おかげで被害拡大は止まりましたが、状況は膠着状態です」


「そのミーナって女とアウトライダースを叩けば、一気にひっくり返るんじゃないのか?」

レインがそう言った瞬間。

「ふん、そんな単純な話じゃない」

ロッゾが口を挟んだ。

「厄介なのは教団の幹部だ。

 そいつがメルへ来ている」

「その幹部を潰さない限り、今回の騒乱は終わらないってわけですわね」

アリも続く。

「ヘルディ家の面汚しは生け捕りにして処刑するべきですわ」

穏やかな口調だが、言っている内容は物騒だった。

「アリ、落ち着きなさい。

 無計画に動けば、無駄な犠牲が出るだけです」

ミラがたしなめる。

「まぁ……それもそうですわね」

過激な物言いではあるが、姉弟間の統率は取れているらしい。


すると、ロスがこちらへ視線を向けた。

「ヨウ殿。

 ひとつ、お願いがあるのですが」

「なんだ?」

「失礼を承知で申し上げます。

 お三方の実力を、実際に見せていただきたいのです」

「実力?」

「現在、評議塔を守っているのは《フロンティア》。

 もしよろしければ――」

ロスは一拍置いた。

「フロンティアのリーダーと模擬戦をしていただけませんか?」

「模擬戦なんてしなくても、ヨウが強いのはわかるのに……」

セラが不満そうに漏らす。


だが、ロッゾは鼻で笑った。

「父上はそうでも、俺たちは何も知らない。

 父上を助けた時の相手が弱かっただけかもしれないしな」

「おい、ロッゾだったな。

 その言い方は失礼じゃないのか?」

温厚なレインが珍しく苛立ちを露わにする。


だが――

「わかった。

 やればいいんだな」

俺はその提案を受け入れた。

「作戦を立てる以上、俺たちの実力を把握しておきたいって気持ちも理解できる」


それに――

フロンティアのリーダー。

つまり、エリックだ。

ギルドハウスで絡んできた男。

今の俺なら、あいつとどこまでやれるのか。

少し興味もあった。

俺たちは早速、評議塔内にある模擬戦用の部屋へ案内される。

ロスは使いの者へ命じ、《フロンティア》のメンバーを呼びに行かせた。


以前は格上だったフロンティア。

だが、今の俺たちはあの頃とは違う。

フロンティアとの再会は、もう目前まで迫っていた。


ご覧いただきありがとうございました。

今回から本格的なメル動乱編です。

ヘルディ家、アナスタシ教団など、キャラが多く登場してわちゃわちゃしちゃったかも…笑


もし面白いと感じていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります。

次回もよろしくお願いいたします。

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