第47話 才能の証明
訓練開始から約一か月。
師たちとの修行を経て、ヨウたちは大きく成長してます。
その成長の先とは。
その後も、俺はクラリーテから魔法を、ヴァーノから弓術を学び続けた。
魔法理論。
魔力制御。
属性ごとの性質。
そして射手としての技術や知識。
短期間とは思えないほど、多くのことを吸収していく。
レインもまた、クラリーテから魔法の指導を受けていた。
「いや、本当に凄いな……。
まさかここまで短期間で俺を超えてくるとは」
ヴァーノが呆れ半分に笑う。
だが、その目には僅かな驚きも混じっていた。
「ねぇ~!
私もびっくりしてるんだけど!
魔法ならセラちゃんの方が伸びるかなって思ってたのに、理解も早いし、新しい属性魔法まで覚え始めるなんて……」
クラリーテまで目を丸くしている。
恐らく、これも眼の力の影響が大きいのだろう。
だが、ただコピーしているだけじゃない。
魔法そのものへの理解が深まったことで、新しい技術へ辿り着けるようになっていた。
それが何より面白かった。
「当然だ!
ヨウは俺の弟子だからな!」
ルイーズが胸を張って豪快に笑う。
(別に弟子になった覚えはないんだが……)
とはいえ、面倒見が良く、頼れる兄貴分のような存在なのは確かだった。
「どうせ、また勝手に弟子扱いしてるだけでしょ?」
クラリーテが呆れたようにため息をつく。
「ルイーズの悪い癖だな。
弟子にされた方はたまったものじゃない」
ヴァーノも肩を竦めた。
「はっはっは!
細かいことは気にするな!」
そんなやり取りに、その場の空気が少し和らぐ。
復讐を第一に考えてはいるが、こんな心地いい時間も必要ではあった。
「でも、本当に凄いよな、ヨウって」
レインが感心したように言った。
「最初から強かったけど、ここまでくると、どこまで強くなるのか楽しみだぜ」
「うん!
頼もしいよね!」
セラも嬉しそうに頷く。
「私ももっと強くならないと。
足手まといになりたくないし!」
「セラは足手まといなんかじゃないだろ」
俺がそう言うと、レインも頷いた。
「あぁ。
むしろ魔法なら、もう俺よりセラの方が上かもしれないな」
少し悔しそうに笑うレイン。
「えへへ。
じゃあ、レインが困った時は私が助けてあげなきゃね~?」
セラが少し意地悪そうに笑う。
「いやいや、俺には弓があるからな?
逆に俺が助ける側かもしれないぜ?」
「ほんとかな~?」
2人は顔を見合わせながら笑い合っていた。
訓練を通して、俺たち三人の連携も、以前よりずっと深まっている。
復讐のための力。
そのために始まった訓練だった。
だが今は、それだけじゃない。
まだ半月程であるが、俺たちは確かに、前へ進み始めていた。
それからの日々は、実戦と鍛錬の繰り返しだった。
互いに技を磨き、知識を吸収しながら、それぞれが着実に力をつけていく。
気づけば、朝から夕方まで武器を握り続ける生活が当たり前になっていた。
そして、あっという間に1カ月が経過する。
その成果は、目に見えて現れていた。
俺は、ルイーズから槍術を、クラリーテから魔術を、ヴァーノから弓術を学び、
それぞれの技術を吸収したことで、戦い方の幅が大きく広がった。
加えて、新たに雷と土の魔法も会得している。
強くなっている。
その実感が、俺をさらに前へ進ませていた。
レインは弓術を中心に大きく成長し、魔法の精度もさらに磨かれていった。
特に複数の魔力矢を同時制御する技術は、以前とは比べものにならないほど向上している。
そしてセラは、誰よりも著しい成長を見せていた。
光と聖属性を軸とした魔法はさらに磨かれ、支援だけでなく、戦闘面でも十分な脅威となり始めている。
1カ月前とは比べものにならないほど、俺たちは強くなっていた。
――その頃。
シルヴァの執務室では、側近たちが集まり、俺たちの訓練成果について報告を行っていた。
「シルヴァ様、報告します」
最初に口を開いたのはルイーズだった。
「あのヨウって奴ですが、間違いなく大化けしますよ」
「ほう」
シルヴァが興味深そうに目を細める。
「君より強くなってしまった、とか?」
「いえ、現時点じゃまだ俺の方が上でしょうね」
ルイーズは腕を組みながら笑う。
「ただ、この先は余裕で俺を超えていくでしょう。
あれはそういう類の人間です」
「君にそこまで言わせるなんてね」
「はい。
しかも吸収が異常に早い。
一度教えれば、すぐ自分のものにしやがる」
ルイーズは楽しそうに口角を上げた。
「あいつを鍛えるのは、正直かなり面白かったですよ」
「なるほどね。
ヴァーノはどうだったかな?」
シルヴァが視線を向ける。
「……レインの弓術の才能は予想以上でした」
ヴァーノは静かに答えた。
「恐らく今なら、弓だけであれば俺ともかなり戦えるでしょう」
「そこまで成長したのか」
「はい。
魔力矢の生成、同時制御、精度。
どれも短期間とは思えないほど伸びています」
だが、そこでヴァーノは僅かに表情を曇らせた。
「ただ――」
「ただ?」
「ヨウの成長速度は、正直異常です」
執務室の空気が少し変わる。
「最初は弓術に関してほぼ初心者同然でした。
ですが、瞬く間に技術を吸収し、今では俺の動きにも対応し始めている」
「はっはっは!
だから言っただろう!
あいつは俺が認めた男なんだ!」
ルイーズが豪快に笑う。
だが、ヴァーノは真剣な表情を崩さなかった。
「……敵に回すべき相手ではありません」
その言葉に、シルヴァは静かに顎へ手を添える。
「そうだね。
私も剣の稽古をつけていたが、もう教えられることはほとんどなくなってしまった」
苦笑混じりにそう言った。
「ただ、こちらから敵対しない限り、ヨウも無意味に牙を剥くタイプじゃない。
そこは実際に話して理解できたよ」
「……なら問題ないかと」
ヴァーノも小さく頷く。
「うん。
それじゃ最後はクラリーテかな」
「はい!」
クラリーテが一歩前へ出る。
「セラちゃんですが、あの子の成長は3人の中でも特に著しかったです」
「そこまでかい?」
「はい。
しかも光属性と聖属性の適性を持っています」
「……なんだって?」
シルヴァの表情が変わった。
「それは本当かい?」
「はい。
恐らく、"その可能性" があります」
クラリーテの言葉に、シルヴァは静かに目を細める。
「ルミナリーヴィレッジ……。
光と聖属性の魔法使い……か」
何かを確信したようだった。
「帝国に知られれば、間違いなく狙ってくるだろうね」
「はい。
ですので、今後はより注意が必要になるかと」
「当然だ。
あの子を帝国へ渡すつもりはないよ」
静かだが、はっきりとした口調だった。
「ただ、セラちゃんだけじゃありません。
レインにもかなりの才能がありますし――」
「……ヨウだね?」
「はい」
クラリーテは頷く。
「あの子は、さらに特別です。
初級とはいえ、新しい属性魔法を自力で会得しました。
しかも、これまで扱ったことのない雷属性と土属性をです」
「「……!」」
今度はルイーズとヴァーノまで驚きを隠せなかった。
「それは……確かに異常だな」
ルイーズですら真顔になる。
魔法は、本来そう簡単に新属性へ適応できるものではない。
適性、知識、魔力制御。
様々な要素が必要になる。
それを、わずか1カ月足らずでやってのけた。
「もしかすると――」
シルヴァが静かに呟く。
「本当に、帝国と渡り合える存在になるのかもしれないね」
執務室に、短い沈黙が落ちた。
その後、ルイーズが口を開く。
「それじゃ予定通り、俺たちは引き続きあいつらを支援するってことで?」
「うん」
シルヴァは迷いなく頷いた。
「あの3人は、間違いなく大きな力になる。
手放すつもりはないよ」
穏やかな笑みを浮かべながら続ける。
「頼ってきた時はもちろん、必要ならこちらからも手を貸してあげてほしい」
「「はい」」
3人が同時に返事をする。
「さて――」
シルヴァは椅子から立ち上がった。
「そろそろ食事の時間だ。
みんなで行こうか」
そうしてシルヴァたちは、執務室を後にした。
――――――――――――――――――――――――――
【陽】
種族:人間
称号:冥奪の眼保持者
加護:憎悪の神エルロキス
眼のレベル:Ⅱ
剣術:S++
魔術:S
槍術:S+
弓術:S
闘斧術:A
魔法
火 火炎
放電
疾風 暴風砕破
岩石
回復
隷従契約
聖
技能
毒支配
暗殺剣:Ⅱ
隠密:Ⅱ
魔法の理:Ⅰ
精神感応
装備
魔剣アルティエルン
―――――――――――――――――――――――――
【レイン・ミスティールス】
種族:人間/エルフ混血
剣術:B
魔術:S
弓術:S++
魔法
氷 氷結
水 洪水 激流断砕 災厄潮波
回復 状態回復
―――――――――――――――――――――――――
【セラ・ルクシア】
種族:人間
称号:聖陰の光魔術師
加護:愛憎の神
魔術:S+
魔法
光の雫 光線 月の旋律
閃光 癒光波
光 光粒 光鏡反射
聖 聖域 断罪執行
読んでいただきありがとうございます。
今回で訓練編は一区切りとなります。
ヨウだけでなく、レインやセラも大きく成長し、
今後の戦いに向けて三人の戦力が
一段階引き上がりましたね。
特訓が終わり次の展開へ進みますので、
ぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです。
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