表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
収奪の復讐者 ~奪われた全てを取り戻す悪魔の眼~  作者: 冬野 ヨル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/48

第48話 新たな旅路と帝国の視線

特訓を終えたヨウたちは、次なる目的地へ、

一方その頃、帝国でもヨウを巡る新たな動きが始まろうとしていた。

執務室を後にしたシルヴァたちは、そのまま俺たちが待つ食卓へとやって来た。


特訓最終日ということもあり、今夜の食事はいつもより少し豪華だった。

「それにしても、3人とも予想以上に成長したみたいだね」

席につきながら、シルヴァが穏やかに笑う。

「ルイーズたちから話は聞いてるよ。

 それぞれ、想像以上の成果を出してくれたみたいだ」


「まぁ、俺たちにはそれぞれ目的があるからな」

俺は食事へ手を伸ばしながら答える。

「強くなれるなら、いくらでもやるさ」

「頼もしいね」

シルヴァは満足そうに頷いた。

「それで、これからどうするつもりなんだい?」

「それが、まだはっきり決まってないんだ」

俺がそう答えると、不意にレインが口を開く。

「なぁ、バルグンドに行ってみないか?」

「バルグンド?」

シルヴァが反応する。

「あぁ。

 俺たち、オリントスへ来る前にエンリル・ハルディアクスって人と出会ったんですよ」

「エンリルと?」

少し意外そうな表情を見せるシルヴァ。

「傭兵王が治める国ってのも気になりますし、各国を見て回るのも悪くないかなって」

「なるほど」

シルヴァは納得したように頷いた。

「確かに、バルグンドを見ておく価値はあると思うよ。

 特に今後、帝国と向き合うつもりならね」

そう言いながら、静かに続ける。


「あそこの傭兵王――ペルセウスは、皇帝と同等クラスの実力者だと聞いている。

 もし関係を築ければ、大きな力になるかもしれない」

(皇帝と同等、か……)

自然と興味が湧く。

帝国皇帝がどれほどの存在かはまだ分からない。

だが、それと肩を並べる実力者がいるというのなら、一度会っておく価値は十分にある。


「ただ――」

シルヴァが少し表情を引き締めた。

「傭兵王はかなり気難しい人物らしい。

 実力主義とも聞く。

 行くなら、そのつもりでいた方がいい」

「だってよ、ヨウ。

 どうする?」

レインがこちらを見る。


「……そうだな」

俺は少し考えた後、小さく頷いた。

「傭兵王にも興味があるし、各国を見て回るのも悪くない。

 次はバルグンドへ行くか」

「ふふっ、決まりだね」

シルヴァが笑う。

「その決断の速さは、ヨウらしいよ」

「悩んでいても仕方ないからな」

「何かあれば私たちを頼るといい。

 できる限り協力はさせてもらうつもりだよ」

「あぁ、助かる」

こうして、次の目的地はバルグンドへ決まった。


食事を終えた俺たちは、翌日の出発に備えて早めに部屋へ戻る。

特訓の日々がこうして終わった。


そして翌朝――

いよいよ、バルグンドへ向かう日を迎えた。


新たな土地への期待もあってか、全員どこか浮き足立っている。

準備も驚くほど早かった。

「いよいよだな!

 傭兵王……楽しみだ!」

レインは朝から上機嫌だ。

「まぁ、気負いすぎるなよ。

 道中は長いんだからな」

「分かってるって!」

そう返すレインを見て、思わず苦笑する。

だが、俺自身も内心では高揚していた。

(傭兵王、か……。

 一体どんな奴なんだろうな)


準備を終えた俺たちは、シルヴァたちに挨拶をしに屋敷の広間へ向かった。

「いよいよ出発だね。

 気を付けて行くんだよ」

シルヴァは柔らかな笑みを浮かべる。

「特に、傭兵王を敵に回すような真似だけはしないこと。

 あの人は、冗談抜きで危ないからね」

苦笑混じりの忠告だった。

「気を付けるよ。

 色々世話になった」

「こちらこそ。

 短い間だったけど、楽しかったよ」

「弟子よ、いつでも頼ってこい!」

「レイン、鍛錬を忘れるな。

 お前なら10本同時もできるだろう」

「セラちゃん、またお茶しようねー!」

ルイーズ、ヴァーノ、クラリーテもそれぞれ挨拶をしてくれた。

俺たちも軽く言葉を交わし、そのままフィレンを後にする。


バルグンドへ向けて――。

だがその頃。

帝国では、別の動きが始まろうとしていた。


――


グラディウス帝国。

皇帝の間。


重厚な空気に包まれた玉座の間で、皇帝カイゼル・グラディウスは静かに肘をついていた。

その前には、《エクスキューター》団長アベル・サンダースの姿がある。


「陛下。

 以前お話した男の件、覚えていらっしゃいますか?」

「……あぁ」

カイゼルはゆっくりと目を開く。

「異界召喚の生贄で、ひとりだけ生き残った男か」

「はい。

 その男です」

アベルの声音は低い。

「その男によって、ルミナリーヴィレッジに駐屯していた我が兵が壊滅しました。

 私の部下も討たれています」

 

その瞬間。

カイゼルの目がわずかに細まった。

「……ルミナリーヴィレッジだと?」

先ほどまで微動だにしなかった空気が、わずかに揺れる。

ルミナリーヴィレッジ。

それは帝国にとって、決して軽視できない場所だった。

「襲撃か?」

「そのようです。

 しかも、たった3人によって」

「ほぅ……」

カイゼルは興味深そうに口角を上げた。

「中隊規模を残していたはずだが?」

「はい。

 我が国の中隊を相手にするなど、普通は考えられません」

「我が国を敵に回すことになるからな」

「はい」


アベルは淡々と続ける。

「あの男は異常です。

 放置すれば、いずれ帝国に牙を剥く存在となるかと」


しばしの沈黙。


やがて――

「ククク……」

低い笑い声が、玉座の間に響いた。

「面白い」

カイゼルは深く玉座へ身体を預ける。

「この世界へ来て間もない男が、仲間を率いて我が軍を壊滅させたか。

 よほど特別な力を持っているのか…」

「……危険です」

「だからどうした?」

カイゼルは愉快そうに笑う。


「牙を剥く獣ほど、飼い慣らした時に役に立つ」

「……」

アベルは黙ったまま頭を下げた。

「連れて来い。

 余が直々に会ってやろう」

「拒否した場合は?」

「その時は――」

カイゼルの瞳に、獰猛な光が宿る。


「実力で理解させればよい」

その言葉に、空気が重く沈んだ。

「かしこまりました。

 すぐに手配します」

 アベルは静かに一礼し、その場を後にする。


ついに皇帝カイゼル・グラディウスが、俺という存在に興味を示したのだ。

だが、その頃の俺たちはまだ知らない。

自分たちへ向けられ始めた、“帝国の視線”を。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

次の目的地は傭兵王ペルセウスが治めるバルグンドに決まりました。

そして、ついに皇帝カイゼルもヨウの存在を認識します。

次回からは、新たな旅が始まります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ