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収奪の復讐者 ~奪われた全てを取り戻す悪魔の眼~  作者: 冬野 ヨル


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第44話 神との対話

いつも読んでいただきありがとうございます。

今回は世界設定にも少し触れていきます。

修行前に聞かされる話とは。

――


「くくく……また会えたな」


意識が沈む。

気づけば、そこは“あの闇”だった。

上下も、距離もない空間。

ただ、どこかから“あいつ”の声だけが響いてくる。


「どうやら、随分と経験を積んだようだな」

愉悦を含んだ声。

見られている。

それだけは、はっきりと分かった。

「……エルロキス」

俺は、闇へ向けて口を開く。

「お前は、神なんだよな?」

「ほう」

わずかに、空気が歪む。


「我の前で、随分と落ち着いて話すようになったな」

嘲るでもなく、ただ愉しむような声音。

「……俺はお前の加護を受けている。

 だが、他にも神の加護を受けている奴がいた」


一瞬の沈黙。

それだけで、場の温度が下がる。


「無論だ。

 お前だけが神の加護を受けているわけないだろう」

エルロキスは、何でもないことのように言った。

「神は一柱ではない。

 この世界には、無数に存在している」

「……」

「お前が憎んでいる相手にも、加護は与えられている」

――まさか、あいつだったりするのか…

「……誰だ」

短く問う。

「グラディウス帝国皇帝――カイゼル」

その名が、静かに落ちた。

「……そうかよ」

奥歯を噛み締める。

「だが妙だな」

俺は続ける。

「以前、別の加護持ちと会ったが……俺の加護には気づかなかった」

「当然だ」

即答だった。

「神の加護は、本来、他の神ですら認識できぬ」

「……なら、なぜお前は分かる?」

わずかな間。

「我は、少しばかり“例外”でな」

含みのある声。

「……そのうち教えてやる」

(……はぐらかされたか)


「それよりも――眼の話だ」

空気が変わる。

「その“冥奪の眼”は、段階を持つ」

「今は、第二段階。

 あと二段階で――完成に至る」

「……まだ上があるのか」

「当然だろう」

嘲笑が混じる。

「その程度で満足されては、つまらん」

「なら、どうすればいい」

俺は迷わず問う。

「もっと強くなるには」

沈黙。

次の瞬間――


「決まっている」

声が、深く沈んだ。

「――復讐の念だ」

(……やっぱりそれか)

「憎しみは尽きることがない」

エルロキスの声が、静かに広がる。

「富も、名誉も、地位も――すべてを得たとしても、な。

人は必ず、何かしら恨みを持つ生き物だ。

……ヨウ」

名を呼ばれる。

「お前自身の復讐を、より深く――」

そして、この世界に満ちる“復讐”を受け入れろ」

「……受け入れる、だと?」

眉をひそめる。

「復讐を果たしてやればいいのか?」

「違う」

即座に否定された。

「答えは、自ら見つけろ」

「……ふざけるな」

思わず声が漏れる。

「俺には力が必要なんだ」

「くく……」

愉悦の気配が濃くなる。

「ならば、一つだけ教えてやろう」

空気が凍る。

「躊躇うな」

低い声。

「迷うな」

圧が増す。

「復讐のためなら――すべてを切り捨てろ。

仲間も、弱者も、善悪も関係ない。

利用できるものは、すべて利用しろ。

それだけは忘れるな」

(……言われるまでもない)

胸の奥が、静かに燃える。

(月のためなら――何だってやる)


「次に会う時までに」

エルロキスの声が遠ざかる。

「今よりも、強くなっていることを願っているぞ。

――我を、愉しませろ」


意識が沈む。

闇が、崩れる。

「待て――」

伸ばした声は、届かない。

まるで、遊びに飽きたかのように――

エルロキスは、消えた。


――


朝になり、俺はみんなより早く目を覚ました。

二度寝ができない体質の俺は、朝の空気を吸いに外へ出る。


「この世界に満ちる“復讐”を受け入れろ……か」

エルロキスの言葉を思い返す。

単純なようで、単純じゃない。

色々考えてみたが、今の俺にはまだ答えが見えなかった。

ただ、確かなことが一つだけある。


強くならなければならない。


復讐を続けていけば、いつか見えてくる。

根拠なんてない。

だが、不思議とそんな気がしていた。


しばらくすると、人の気配が近づいてきた。

視線を向けると、そこにはセリーナの姿があった。

後ろには数人の部下らしき姿も見える。

「お久しぶりです、ヨウ様。

 あれからいかがですか?」

「セリーナだったな。

 ずっと尾行でもしてたのか?」

「はい。女王様もヨウ様のことを気にかけておられますので」

俺は、エリシアへ向かったこと。

アマツカ山脈でグラディウス兵と戦ったこと。

今はシルヴァのもとにいることを簡潔に話した。


「そうでしたか……。

 帝国はきっと報復を考えるでしょう。

 十分に気を付けてください」

「もし帝国と本格的に戦うことになったら、テーヴァはどうするんだ?」

「恐らく中立を保つと思います。

 帝国の力は強大ですから」

セリーナは少し表情を曇らせる。


「帝国に歯向かう者は誰であれ敵――

 それがグラディウス帝国です」

淡々とした口調だったが、その言葉には警戒が滲んでいた。

「とりあえず事情はわかりました。

 女王様へ報告しておきますね」

「あぁ、頼む」

「では、私たちはこれで失礼します」

セリーナたちは去っていった。

その後、みんなも起きてきて、俺たちは朝食の席へ向かう。


「みんなしっかり休めたかい?」

シルヴァが口を開く。

「今日から1カ月を目安に稽古を始めようと思う。

 ヨウには私を含め、全員と手合わせしてもらうつもりだ。

 構わないかい?」

「あぁ、よろしく頼む」


朝食を終えた俺たちは、そのまま稽古場へ向かうことになった。



最後まで読んでいただきありがとうございました。

エルロキスは必要以上に説明するタイプではないので、答えを教えるよりも「考えろ」と投げるキャラ位置ですね。

神や加護、冥奪の眼については今後さらに掘り下げていく予定。

次回からはいよいよフィレンでの修行です。

レインやセラも大きく成長していく予定ですので、

楽しみにしていただけたら嬉しいです。


ブックマークや評価、感想もいただけると嬉しいです。

次回もよろしくお願いいたします。

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