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収奪の復讐者 ~奪われた全てを取り戻す悪魔の眼~  作者: 冬野 ヨル


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40/48

第40話 ルミナリーヴィレッジの神殿

セラの過去で1話書いてしまいましたが、

今回はルミナリーヴィレッジにある神殿へ。

神殿には一体何があるのか。

ぜひご覧ください。

西へ向かってしばらく歩くと、ようやくそれらしい建造物が見えてきた。

村の中ではひときわ目を引く、立派な石造りの神殿。

巨大というほどではないが、それでも十分に威厳があった。


「ここだけ綺麗に残ってるな。

 何か貴重なものでもあったのか?」

レインが神殿を見上げながら、セラに尋ねる。

「ううん……。

 村の人がお祈りに使ってた場所ってくらいだけど……」

セラ自身も、不思議そうに首をかしげていた。

この神殿が特別な場所だったという認識は、少なくとも彼女にはないらしい。

「……とりあえず入ってみよう」

俺を先頭に、3人で中へ足を踏み入れる。


内部は、よくある教会に似た造りだった。

高い天井。石造りの壁。

本来なら長椅子が整然と並び、その奥には祭壇が据えられていたのだろう。

だが、今はその面影も薄い。

椅子は壊され、無残に散らばっていた。

祭壇も破壊され、壁には無数の傷が刻まれている。

ただ荒らしたというより、何かを探すように徹底された跡だった。


「ひどいな……。

 めちゃくちゃじゃないか」

レインが低く呟く。

「セラ、大丈夫か?」

気になって声をかけると、セラは少しだけ困ったように笑った。

「うん……。

 やっぱり、ひどいなって思うけど……大丈夫」

そう言いながらも、視線は壊れた祭壇のほうに向いたままだった。

平気なはずがない。

けれど、ここで立ち止まるつもりもないのだろう。

「奥まで行ってみよう」

(……ここまで荒らす理由は何だ?

 ただの腹いせじゃない。何かを探していたように見える)

俺たちは壊れた椅子や瓦礫を避けながら、祭壇の前まで進んでいった。


そこで、セラが静かに口を開く。

「少しだけ……お祈りしてもいいかな?」

「もちろんだ」

俺とレインは少し後ろへ下がり、セラを見守る。

セラは祭壇の前でそっと膝をつき、手を合わせて目を閉じた。

神殿の中に、静寂が落ちる。

その時だった。


淡い光が、祭壇の周囲にふわりと現れた。

「……おい」

レインが息を呑む。

次の瞬間、その光はゆっくりとセラの身体を包み込み始めた。

「エリシアの時と……同じじゃないか?」

「ああ……似てる」

以前、エリシアの教会で見た光景。

あの時と同じ、やわらかく、それでいて神聖さを感じさせる光だった。

レインは警戒するように一歩前へ出る。

だが、俺は不思議と危険を感じなかった。

むしろ逆だ。

この光は、セラを害するものじゃない。

そう確信できた。

「大丈夫だ、レイン。

 もう少し見ていよう」

「……わかった」

レインも、完全には納得していない顔ながら、ひとまず頷いた。

光はしばらくセラを包み込み続け、やがてゆっくりと薄れていく。


「ありがとう。もう大丈夫だよ。

 終わったみたい」

光が消えると、セラは何事もなかったかのように振り返った。

だが、俺はすぐに眼でセラの情報を視る。


―――――

【セラ・ルクシア】

加護:愛憎の神

称号:聖陰の光魔術師

魔術:A+


魔法

  光の雫(ライトドロップ) 光線(レイ)   月の旋律(ルナハープ)

  閃光(フラッシュ)   癒光波(ヒールウェーブ) 聖なる光(ホーリーライト)

  (ライト)    光粒(フォトン)   光鏡反射(リフレクション)

  (ホーリー)   聖域(サンクチュアリ)  断罪執行(ジャッジメント)

―――――


(やっぱり……!

 魔術が上がってる。新しい魔法も増えてるな)

「セラ、強くなってる」

「え?」

「どういうことだ?」

レインがすぐに反応する。

「魔術が強化されてる。

 それに、新しい魔法も増えてるみたいだ」

「……またか」

レインは短く呟いたあと、すぐに思い当たったように顔を上げた。

「エリシアの教会と同じってことか?」

「ああ。たぶんそうだ」

だが、セラだけはまだ状況が飲み込めていないらしい。

「待って、どういうこと?」

「前にエリシアの教会で、セラが強くなったことがあっただろ。

 今回も、あれと同じことが起きたんだと思う」

「……そんなことが」

「細かい理屈はまだ分からない」

そう前置きしてから、俺は言葉を選ぶ。

「でも、セラが光に関わる力を持ってるのは間違いない。

 だから、こういう場所で反応してるのかもしれない」

「こういう場所……?」

「教会とか、神殿とか。

 光と関係が深い場所だな。

 もしかすると、他にもあるのかもしれない」


そこで一度、言葉を区切る。

「もしそうなら……そういう場所を辿っていけば、セラはもっと強くなれる可能性がある」

セラは少し考え込むように目を伏せたあと、ぽつりと呟いた。

「お父さんが、昔言ってた」

「……何をだ?」

「私は、天使に光の祝福を受けて生まれてきた子なんだって」

「天使?」

思わずレインと顔を見合わせる。

予想していなかった言葉だった。

「詳しくは、私も分からないの。

 子どもの頃に聞いた話だから……。

 でも、お父さんは確かにそう言ってた。

 もっと詳しく聞く前に……死んじゃったけど」

最後の言葉だけ、少し沈んだ。

「天使、か……」

レインが珍しく真面目な顔になる。

「ヨウ。これ、セラのことを知るうえで結構大事なんじゃないか?」

「俺もそう思う」

天使という単語自体は突飛だ。

だが、セラの力が“光”と深く結びついていることを考えると、無視はできない。

「今はまだ断定できない。

 でも、セラの力や生まれに関わる話なのは間違いなさそうだ。

 これからは帝国だけじゃなく、天使や光のことも探っていく必要があるかもしれない」

「いいんじゃないか。

 旅の目的がひとつ増えたってことだろ?」

レインが少し笑って言う。

重くなりすぎないようにしてくれているのが分かった。

「私も知りたい」

セラは、自分の胸元にそっと手を当てた。

「自分が何者なのか。

 どうして私だったのか。

 ちゃんと知っておきたい」

「……重い話になるかもしれないぞ」

「うん。

 でも、もう目を逸らしたくないの」

その言葉に、迷いはなかった。

(本当に強いな……)

15歳の少女が背負うには、あまりにも重い。

それでもセラは、自分から知ろうとしている。

同情じゃない。

ただ、すごいと思った。

だからこそ、俺も仲間として支えなければいけない。


「それと、今のセラの称号だけど……

 “聖陰の光魔術師”ってなってた」

「聖陰の……光魔術師?」

「意味までは分からない。

 でも、少なくとも光や聖なる力を扱う魔法使いってことなんだと思う。

 自分の力を知る手がかりにはなるはずだ」

セラはその言葉を小さく繰り返した。

「難しいけど……なんだか、ちょっとかっこいいかも」

「いいなぁ。

 俺もそういう称号ほしいんだけど」

レインが妙に羨ましそうに言う。

その反応に、セラは思わず笑みをこぼした。

「レインも、そのうち見つかるよ」

「だったら嬉しいな~」

そんなやり取りに、さっきまで神殿を覆っていた重苦しい空気が少しだけ和らいだ。


だが、いつまでもここにいるわけにはいかない。

「……二人とも、一旦ここを離れよう」

俺が言うと、レインもセラもすぐに表情を引き締めた。

「ここまでグラディウス兵を皆殺しにしたんだ。

 追手が来る可能性は高い。

 ここはまだ敵地の中だし、長居は危険だ」

「そうだな……。

 でも、どこへ向かう?」

そう聞いたレインに、セラがすぐ答える。

「とりあえず、オリントス国まで戻ろうよ。

 それから先のことを考えればいいと思う」

「それが一番無難だな」

来た道を戻れば、大きく迷うこともない。

今は情報も戦力も足りない以上、無理をする場面じゃない。

「じゃあ、それでいこう」


俺たちは神殿を後にし、足早にルミナリーヴィレッジを離れた。

村の外へ出る頃には、地平線の向こうがうっすらと橙色に染まり始めていた。

夜明けが近い。

明るくなれば、それだけ見つかる危険も増す。

俺たちは歩調を速め、来た方角へと進んでいく。

次の旅路へ向かうために。


そして、この時の俺たちは、まだ知らなかった。

ルミナリーヴィレッジで起きたこの一件が、やがてグラディウス帝国との本格的な対立へと繋がっていくことを。

だが――それを知るのは、もう少し先の話だ。


俺たちがオリントスへ戻った頃。

――グラディウス帝国でも、静かに動きがあった。


重厚な石造りの一室。

外界の喧騒を遮断するかのように閉ざされた空間の中で、

一人の男が報告を受けていた。


「……以上が、ルミナリーヴィレッジで起きた顛末になります」

低く頭を下げる配下。

その正面に座る男は、わずかに目を細めた。

「……そうか」

短く呟いた後、ゆっくりと椅子に体を預ける。

「ロウがやられたか……。

 それに――神殿に向かった、か」

その言葉に、わずかな確信が滲む。

「……ほぼ間違いないな。

 “例の子供”も、そこにいたか」

配下の男は、緊張を滲ませながら続ける。

「報告では、3名。

 しかし、その実力は無視できるものではありません。

 ロウ殿を含む戦力を、わずか三人で制圧しています」


沈黙。


やがて、男――アベルは、静かに口を開いた。

「……なるほど」

指先で机を軽く叩く。

その仕草には、焦りではなく――計算の色があった。

「中途半端な刺客では、意味がないな」

そう言い切ると、視線だけをわずかに向ける。

「この件は、一度陛下に上げる」

「……っ」

配下の男の肩が、わずかに震えた。

それがどれほどの意味を持つか、理解しているからだ。

「お前は引き続き監視を続けろ」

「余計な手出しはするな。

 “見失うこと”だけは許さん」

「……承知しました」

深く頭を下げ、男はその場を後にする。

扉が閉まる。


静寂。


アベルは、ゆっくりと目を閉じた。

「……面白い」

かすかに、口元が歪む。

「ようやく、動き出したか」

その声音には、わずかな愉悦すら混じっていた。

ルミナリーヴィレッジを制圧されたにも関わらず、

そこに焦りはない。

むしろ――次の一手を楽しむような余裕。


グラディウス帝国。

その中枢に位置する男は、すでに次の局面を見据えていた。

やがて訪れる衝突へ向けて――。



――――――――――――――――――――――――――

【陽】

種族:人間

称号:冥奪の眼保持者

加護:憎悪の神エルロキス

眼のレベル:Ⅱ


剣術:S

魔術:A+

槍術:A

弓術:E

闘斧術:A


魔法

 (ファイア)     火炎(フレイム)

 疾風(ブラスト)     暴風砕破(ストーム)

 回復(ヒール)

 隷従契約(サーヴァント)

 (ホーリー)


技能

 毒支配(トキシニオン)

 暗殺剣:Ⅱ

 隠密:Ⅱ

 魔法の理:Ⅰ

 精神感応(テレパシー)


装備

 魔剣アルティエルン


―――――――――――――――――――――――――

【レイン・ミスティールス】

種族:人間/エルフ混血


剣術:B

魔術:S

弓術:A++


魔法

 (アイス)   氷結(フロスト)

 (ウォーター)  洪水(フラッド)   激流断砕(トレント)  災厄潮波(タイダルウェーブ)

 回復(ヒール)  状態回復(レスト)


―――――――――――――――――――――――――

【セラ・ルクシア】

種族:人間

称号:聖陰の光魔術師

加護:愛憎の神


魔術:A+


魔法

  光の雫(ライトドロップ) 光線(レイ)   月の旋律(ルナハープ)

  閃光(フラッシュ)   癒光波(ヒールウェーブ)  聖なる光(ホーリーライト)

  (ライト)    光粒(フォトン)   光鏡反射(リフレクション)

  (ホーリー)   聖域(サンクチュアリ)  断罪執行(ジャッジメント)



ご覧いただきありがとうございます。

ルミナリーヴィレッジ編、ひとまず一区切りです。

今回でまたセラが強化されました。

そして裏で動く帝国とアベル。

アベルが取る行動も楽しみにしててください。

次回もよろしくお願いします。

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