第37話 復讐者としての戦い方
ルミナリーヴィレッジの戦いは最終局面へ。
ヨウたちの結末はどうなるのか。
ぜひご覧ください。
天幕の外へ出ると、すでに敵影が見えていた。
その中でも先頭に立ち、兵を率いる男が一人いる。
――ロウ・クエン
剣術:S
技能
暗殺剣:Ⅱ
サマエルが言っていた、もう1人の実力者だ。
(暗殺剣にだけは注意が必要だな)
「あの先頭の男は俺がやる。
レインとセラは、他の兵士たちを頼む。
油断だけはするなよ」
「任せろ。先手必勝だな」
「もうひと踏ん張りだね」
2人も応じる。
こうして――ルミナリーヴィレッジでの戦いが始まった。
ロウに接近される前に、俺は先手で魔法を放つ。
――暴風砕破
「いきなり魔法かよ」
軽口を叩きながらも、ロウは放たれた風の刃を鮮やかにかわした。
だが、その後ろにいた兵士たちには直撃し、何人かはその場に倒れる。
ロウはそのまま、一気に距離を詰めてきた。
「お前がヨウって野郎か?」
「……!」
いきなり名前を呼ばれたことに一瞬驚く。
だが、すぐに聞き返した。
「お前はロウって奴なんだろ?」
「!
……どうして俺の名前を知ってる?」
ロウはわずかに表情を揺らしたが、すぐに剣を構え直した。
「まあいい。上からの命令だ。
3人組がここに向かってきてるから、そいつらを始末しろと言われててな。
きっとお前がヨウって奴なんだろ。
仕事なんでな、消えてもらう」
その頃、レインとセラも順調に兵を処理していた。
――激流断砕
――光粒
レインの放った激流が敵をまとめて飲み込み、そこへセラの光の粒子が降り注ぐ。
兵士たちの命が、次々に刈り取られていった。
「こいつら強いぞ!
気をつけろ!」
「なんでこんな奴らが襲ってくるんだよ!」
兵たちは完全に怯んでいた。
だが、レインとセラは攻撃の手を緩めない。
――閃光
「レイン、あそこにも敵がいる!」
セラが光を放ち、敵の位置を浮かび上がらせる。
「ありがとう、助かる!」
その光で露わになった敵を、今度はレインが矢で正確に射抜いていく。
悲鳴があちこちで上がっていた。
一方、俺とロウは剣を交えていた。
レインたちの戦いぶりを見たロウが、口を開く。
「お前ら、報告以上にやるんだな。
一般兵じゃ相手にならないじゃないか」
その口調には、わずかな困惑が混じっていた。
俺は止まることなく斬りかかる。
だが、徐々に実戦経験の差が出始める。
「どうした?
動きが少し遅いんじゃないか?」
煽るように言われ、俺は一度距離を取った。
そのまま隠密を使い、気配を消す。
闇夜に紛れ、隙をうかがう。
「おいおい。敵わないからって隠れるのか?」
相変わらず、ロウは煽ってくる。
だが、今はそれどころではなかった。
(隷従契約……どこまで使えるのか?
敵兵を従わせて囮にできれば、隙を作れるかもしれない)
少し考えた末、俺は賭けに出ることにした。
(まずは兵士だ。手頃な奴は……)
ロウから距離を取りつつ、獲物を探す。
――いた。
俺は一気に1人の兵士の背後へ回り込んだ。
――隷従契約
レインとセラに気を取られていた兵士は、俺に気づくことすらできなかった。
魔法陣のようなものが兵士の体に入り込み、消えていく。
(どうだ……!)
「剣を下ろして、俺の方を向け」
命じてみる。
「うっ……。な、何が起きてるんだ……。
お前は誰だ……?」
苦しそうに抵抗している。
だが――効いている。
「いいから、言われた通りにしろ」
強く命じると、兵士は苦しみながらもこちらを向いた。
成功だった。
完全に操るというより、ある程度の自我は残るらしい。
だが、こちらの意思が強ければ行動を縛れる。
「逆らうなら、このまま殺す。
従うか?」
剣を突きつけると、兵士は震えながら首を縦に振った。
「わ、わかった……」
「それじゃあ、お前にはやってもらうことがある。
あそこにいるロウに襲いかかれ」
「!?
そ、そんな……できません……!」
「いいからやれ。
やらないなら、ここでお前の首を落とすぞ」
嫌がる兵士の首筋を、あえて浅く斬る。
血がにじむ。
「お前がやられる前に、俺があいつを仕留める。
安心して行け。
あいつより俺のほうが容赦ないぞ」
そこまで言われて、ようやく兵士も覚悟を決めたらしい。
(少し涙目だった気もするが、グラディウス相手に情けはいらない。
囮としては十分だ)
兵士をロウへ向かわせ、俺は同時に背後を取れる位置へ移動する。
「ロウ様、すみません……!」
そんな言葉を叫びながら、兵士はロウへ斬りかかった。
「お前、一体何の真似だ!」
ロウは兵士の剣を受け止める。
「すみません、すみません……!」
半ば錯乱したように、兵士は何度も斬りかかる。
その間、俺は冷静に隙を待った。
「いい加減にしろ!」
ロウがついに声を荒げ、兵士を斬り伏せようとしたその瞬間――
俺は隠密を維持したまま一気に踏み込んだ。
暗殺剣で距離を潰し、背後を取る。
ロウが兵士を斬りつけるのと、ほぼ同時だった。
俺の剣が、ロウの胸を貫いた。
「ぐっ……!
く、くそが……!」
苦しげに血を吐くロウ。
「こいつに……何を……した?」
「死ぬお前に教える必要はない」
「ちっ……。
アベル様……申し……訳、あり……ませ――」
そこまで言って、ロウは息絶えた。
流石というべきか、強かった。
それなりの実力者だったのは間違いない。
(グラディウスには、あとどれだけ強敵がいる……?
……いや、もっと強くなればいいだけだ)
そう自分に言い聞かせる。
それよりも、最後の言葉が気になった。
――アベル。
(どんな奴なんだ。
ゾフに聞く必要がありそうだな)
そのとき、アルティエルンが反応した。
ロウの剣に宿っていた力が、アルティエルンを通して俺の中へ流れ込んでくる。
<剣術:S → S+>
強敵を倒せば、成長も早い。
どこまで強くなれるのか――その高揚を覚えながら、俺は天幕へ戻る。
俺とロウの戦いが終わった少し後。
レインとセラもまた、敵を片づけ終えていた。
「いやー、結構多かったけど、終わったな」
「うん。ヨウは大丈夫かな?」
「ヨウなら問題ないだろ。
今頃、もう天幕に戻ってるかもしれないぞ」
「私たちも戻ろう!」
「そうだな、行こう」
戦いを終えた2人も、そう言葉を交わしながら天幕へ戻っていく。
ロウ戦でした。
今回の戦いでは、ヨウが敵兵を囮として利用するなど、
以前よりもかなり容赦のない戦い方をしています。
復讐者としての価値観が少しずつ形になってきました。
また、ロウの口から出た「アベル」という人物にも注目です。
次回もよろしくお願いします。




