第32話 悪魔の加入
悪魔との接触回です。
ヨウの眼や、エルロキスについて少し情報が明らかに?
突如現れた――サマエルと名乗る蛇。
奇妙で、どこか不気味な存在だった。
(敵意は、ない?)
俺は周囲を確認する。
幸い人の気配はなかったことを確認すると、剣をゆっくりと下ろした。
「こんなところで人と蛇が話してるのは目立つんじゃないか?」
「ご配慮、感謝いたします」
サマエルは、こちらを見上げるようにして静かに告げた。
「非礼を承知で、周囲を遮断させていただきます」
そう言った瞬間だった。
周囲の空気が――変わった。
音が消えたわけではない。
だが、外の気配だけが、はっきりと遠ざかる。
「この範囲では、外部からの視認や干渉は一切できません。
短時間であれば、維持にも問題はございません」
「へぇ、こんなことができるのか」
「テレパシーでもよかったのですが、脳への負担がでかいと判断しました」
とんでもない発言をした。
(テレパシー?
そんな超能力までできるとは。
コピーできたりするのか?)
<精神感応 コピー>
(できてしまった)
できたことへの一瞬の驚き。
だが、今はそれどころじゃない。
「なぁ。聞きたいことが山ほどあるんだけど」
「なんなりとどうぞ」
「エルロキスって、そもそも何者だ。……神なのか?」
「はい。エルロキス様は憎悪を司る神。
憎しみの感情を、こよなく愛しておられます」
(となると――俺がこっちに来た時の、あの件が引き金だったってことか)
ここまで来て、ようやく合点がいった。
何故俺にこんな力を、と思っていたからだ。
――そして、話はさらに深まっていく。
「エルロキスについて、お前はどこまで知ってる?
この眼の力も分かるのか?」
「申し訳ありません。信仰はしておりますが、直接お会いしたことはございません。
ですので、エルロキス様ご自身の“素顔”までは……」
サマエルは蛇のままだったが微かに笑った気がした。
「ですが、力について把握していることもあります」
「どんな力だ」
「その眼を持つ者は、ありとあらゆるものを奪える――と。
ただし、眼には段階がございます」
「段階……」
「所有者、つまりあなた様の“経験”が積み重なるほど、眼は強化されるのです。
戦闘で能力を写し取り、武具などから機能を剥ぎ取る。
そうして、次へ進む」
そこで区切ると、サマエルはまた小さく笑った。
(生きたものからは“在り方”を、物からは“力”を奪う――そんな眼か)
コピーと奪うことは分かっていた。
眼にレベルがあることも、薄々理解していた。
だが――強くするために何が必要か、その“正解”が見えなかった。
それが分かっただけでも、収穫は大きい。
「他に聞きたいことはございますか?」
「……お前は何者だ。狙いは何だ」
「私は悪魔です。
目的は、あなた様を見守ること」
「見守る?」
「エルロキス様からお言葉を受けました。
あの方の加護を持つ人間を見守ってやれ――と。
まだ完全に使いこなせていないあなた様を支えることこそ、あの方の望みなのでしょう」
(こいつの言ってることが本心なら……少なくとも、この眼がある限り敵対はしない。
むしろ、悪魔の協力が得られるなら助かる場面もあるはずだ)
まさかの出来事なんだろうけど、あまり驚くこともなかった。
色々起きすぎて、受け入れ耐性ができたのかもしれない。
「……分かった。
じゃあ、なぜ俺の居場所が分かった」
「あのお方より、あなた様の位置を示す“情景”を授かりました。
おかげで、出会うことが叶ったのです」
(流石は神――と言うべきか。居場所まで把握してる)
ただ、言い方を変えれば監視だ。
本当の思惑は読めない。――今は、気を付けておかないといけない。
「それで?
見守るって言ったが、具体的にはどうするんだ?」
「よろしければ、あなた様とご一緒させていただきたく。
足手まといには決してなりません。
どうか、この願いをお聞き入れください」
(敵対しないなら一緒でも損はないか。
蛇の姿なら目立ちにくいし――)
俺は一拍置いてから、頷いた。
「分かった。
だが、分からないことはまだある。聞いたことには答えてもらうぞ」
「ありがとうございます。
感激の至りです」
そしてサマエルは、どこか愉しげに言った。
「――ところで、あなた様のお名前をぜひお聞かせいただけませんか」
「ヨウだ。よろしく頼む」
「ヨウ様。素敵なお名前でいらっしゃいます。
今後とも、よろしくお願いいたします」
結界の外が、わずかに戻ってくる気配がした。
俺は立ち上がり、レインとセラのいる方角を見やる。
「……行くぞ。仲間を待たせてる」
「承知いたしました」
赤黒い蛇は、音もなく俺の足元へと寄り添った。
こうして会話を終え、サマエルは俺の旅についてくることになった。
サマエルとの話を終えた俺は、二人のもとへ足早に戻った。
食堂に入ると、すぐにレインとセラの姿を見つける。
「ご飯はどうだ?」
そう声をかけながら近づくと、レインは満腹そうに椅子へ深く腰掛けたまま答えた。
「おっ、戻ったか!
ここの飯、かなりうまいぞ」
一方、セラはまだメニューを眺めているところだった。
俺の声に気づき、顔を上げる。
「おかえり、ヨウ」
「セラ、すごいんだぜ。
こんな華奢な体のどこに入るのか不思議なくらい食べてる」
「ここのご飯がおいしくて……」
2人のそんなやり取りを眺めながら、俺は本題を切り出した。
「今日なんだけど、このまま進むと野宿になりそうなんだ。
だから宿で休んで、明日出発したほうがいいと思う。どうかな?」
「それなら問題ない。
もう宿は予約してあるよ」
「レインが探してくれたんだよ」
「ありがとう。助かる」
(できる男だ)
「ヨウも食べたら、宿に向かおう」
「ああ、そうしよう」
そうして俺も食事を済ませ、全員で宿へ向かうことになった。
宿に着くと、店主がレインの顔を見てすぐに声をかけてきた。
「お待ちしておりました。
こちらのお部屋になります」
予約のおかげで、案内は驚くほどスムーズだった。
部屋に入ったところで、俺は2人にサマエルのことを話すことにした。
俺は足元にいた蛇をそっと持ち上げ、二人に見せる。
この蛇が接触してきたこと。
俺の眼の力に強い興味を示していること。
エルロキスの存在。
そして――悪魔であること。
これから共に旅をするということ。
一通り説明し終えると、サマエルが静かに口を開いた。
「サマエルと申します。
ヨウ様のお傍に仕えることが叶いました。
お二方も、以後よろしくお願いいたします」
2人は目を丸くしていた。
特にレインの反応は顕著だった。
「……悪魔が、人間に見返りもなしで協力するなんて。
普通はありえない」
悪魔という存在を知っているからこそ、戸惑いがあるのだろう。
一方で、セラは少し違った。
「すごいね。さすがヨウって感じ。
悪魔まで味方にしちゃうなんて」
驚きながらも、どこか楽しそうだ。
「……本当に、見返りは何もないのか?」
レインが不安そうに尋ねる。
「必要ありませんよ。
ヨウ様を見守ることこそ、私の喜びですから」
「そうか……。
まぁ、敵対しないなら問題はないか」
「仮に敵対するとしても、ここでは大した力は出せません。
私が本来の力を発揮できるのは、ニブル大陸のみですから。
ですので、この姿なのですよ」
レインはその説明を聞いても、神の話に大きく驚く様子はなかった。
アルケイナとの一件で、ある程度の前提知識があるのだろう。
(本来の力、か……)
「なぁ、サマエル。
本来の力って、どういうことなんだ?」
気になって、俺も尋ねてみる。
「はい。
私たち悪魔は、ニブル大陸でなければ本来の力を発揮できません。
この地では、人間相手でも勝つのは容易ではないのです」
「制約みたいなものがあるとか?。
本来の姿で現れることはできるのか?」
「可能ではあります。
ただし、条件がございます」
サマエルは淡々と続けた。
「一定数の生贄を捧げること。
主従契約を結ぶこと。
そして、契約主から魔力の供給を受け続けること。
それらを満たした上で、初めて本来の姿で顕現できます」
「……なかなか厳しいな。
確かに、今は脅威として考えなくてよさそうだ」
「はい。その認識で問題ありません」
(もし契約できれば、相当な戦力になるだろうが……
それは、また先の話だな)
そんなことを考えていると、セラがサマエルを手に取った。
「蛇の姿、かわいい。よろしくね」
そう言って、頬をすりっと寄せている。
(さすがに、その扱いは……)
怒るかと思ったが、サマエルはまったく気にしていない様子だった。
むしろ、余裕すら感じる、気がする。
セラにとっては、ペットに近い感覚なのかもしれない。
「明日はカタリアの町に向けて出発だ。
そろそろ寝よう」
俺がそう促す。
「ああ、そうだな。
明日にはカタリアの町に着けるといいな」
「うん、おやすみ」
こうしてサマエルの存在を2人にも伝え、納得してもらった俺たちは、それぞれベッドに入った。
明日はカタリアの町へ。
3人が寝静まった頃、サマエルは思っていた。
(ヨウ様のお仲間も面白い方ばかりですね。
この先ヨウ様の成長次第では……
今後が楽しみですね)
そうして、静かに夜は更けていった。
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【陽】
種族:人間
称号:冥奪の眼保持者
加護:憎悪の神エルロキス
眼のレベル:Ⅱ
剣術:S
魔術:A+
弓術:E
闘斧術:A
魔法
火 火炎
疾風 暴風砕破
回復
隷従契約
聖
技能
毒支配
暗殺剣:Ⅱ
隠密:Ⅱ
魔法の理:Ⅰ
精神感応
装備
魔剣アルティエルン
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【レイン・ミスティールス】
種族:人間/エルフ混血
剣術:B
魔術:S
弓術:A++
魔法
氷 氷結
水 洪水 激流断砕 災厄潮波
回復 状態回復
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【セラ・ルクシア】
種族:人間
称号:聖陰の光魔術師
加護:愛憎の神
魔術:A
魔法
光の雫 光線 月の旋律
閃光 癒光波
光 光粒
聖 聖域
見ていただいてありがとうございます。
サマエル加入回でした。
敵か味方か、今後明らかに。
そしてセラは、悪魔相手でも通常運転でした。
次回カタリアへ。




