第25話 毒を支配する眼
エリシアに向けてちょっとした移動のはずがまさかの危険が…
そして久しぶりにヨウが…
エンリルの拠点を後にし、関所へ向かって進んでいた。
だが街道には出られず、森の中を方角だけを頼りに歩き続ける形になっている。
道中では、クモやトカゲ、ハチ、ヘビといった小型の魔物が次々と現れ、
いちいち相手をしながら進まなければならなかった。
俺自身は毒操作の影響で、このあたりの毒にはある程度耐性がある。
だが、レインとセラはそうではない。
「こんなに鬱陶しいなんて……
めんどくさいところだよな~」
レインがぼやく。
「うん……それに気持ち悪いし……。
私、虫は嫌い……」
セラは今にも泣きそうな顔で、虫を怖がっていた。
まあ、無理もない。
“虫恐怖症”なんて言葉があるくらいだ。
そうして魔物を処理しながら進んでいると、やがてキノコの群生地に辿り着いた。
「……キノコがいっぱい」
セラが驚いたように声を漏らす。
俺も、レインも、思わず足を止めた。
少し開けた場所一面が、異様なほどのキノコで埋め尽くされていたのだ。
「なんなんだ、ここは……」
そう呟き、足を踏み入れた瞬間だった。
――地面が揺れた。
「きゃっ!」
「うわっ!?」
レインとセラが声を上げる。
地震自体は珍しくないが、次の出来事に、俺は息を呑んだ。
地面を突き破るように、
巨大なキノコが姿を現したのだ。
「キノコ……!?」
その瞬間、レインが叫ぶ。
「そいつは危ない!」
(……何なんだ?)
「あいつは魔菌獣だ!
すぐに逃げたほうがいい!」
レインの言葉に従い、俺たちは即座に距離を取る。
すると揺れは収まり、巨大なキノコは再び地面の中へと沈んでいった。
「……戻った、の?」
セラが恐る恐る聞く。
「ああ」
レインは表情を強張らせたまま続ける。
「あいつは近づくと本体を出して、周囲に毒系の胞子をばら撒く。
神経、脳、内臓……あらゆる場所を侵す猛毒だ。
そして、動けなくなった獲物を……食べる」
「……っ」
俺もセラも、言葉を失った。
「魔菌獣は本来、この大陸にはいない。
魔大陸から来た外来種だと言われている。
森の奥深くに潜む危険な魔物で……。
昔、一度だけ遭遇したことがあるが、その時は仲間が知識を持っていて、
何とか無事に帰れたんだ」
狂気じみた魔物。
だが――
(だから、か)
俺の眼が、確かに反応していた。
(普通なら逃げる一択……だが、俺にはこの眼がある)
「なあ、レイン。
状態異常を回復する魔法って、あるか?」
「……あるにはあるけど…
まさか、やる気なのか?」
俺は投げかけを無視して問いかけた。
「胞子だけで死ぬ確率は?」
「……回復魔法がなければ、百パーセント死ぬ」
(それなら――)
「二人とも聞いてくれ、少し試したいことがある。
あいつを引きずり出すが、失敗したらすぐ戻る。
万が一、途中で胞子を浴びたら即回復してくれ。
その後、エンリルの拠点まで俺を運んでほしい」
「ダメだ! 危険すぎる!」
レインが即座に否定する。
「やだよ……ヨウ……」
セラの目には涙が浮かんでいた。
(……心が痛むな)
「俺の能力なら……多分、大丈夫だ。
それに、俺の力を見せておきたい」
しばらくの沈黙の後、レインが深く息を吐いた。
「……分かった、ヨウの能力、確かに気になってたしな」
セラは黙ったままだったが、
レインが優しく声をかける。
「セラ、俺はヨウを前から見てきた。
何度も驚かされたし、無茶な相手にも勝ってきた。
だから……今は信じて待とう」
セラは少し俯いたまま、やがて小さく頷いた。
「……分かった。待ってる」
「ありがとう。行ってくる」
俺は一歩、踏み出した。
近づくと同時に、
再び地面が割れ、魔菌獣が姿を現す。
(……来い)
胞子が噴き出した、その瞬間。
俺は意識を“胞子”へと集中させた。
――
<毒操作 → 毒支配>
――
確かな変化が、体の内側で起こる。
(支配……)
俺は、あえて胞子を浴びた。
――だが。
何も起こらない。
体は、問題なく動いている。
――魔菌獣
ランク:S
(なるほど……、このランクは、胞子ありきってことか)
理解した俺は、一気に攻勢に出た。
――火炎
動き回りながら、魔法を連打する。
やがて、胞子の放出が弱まっていった。
(効いてる……。
やっぱり、植物系だな。
炎に弱い)
そのまま剣で切り込み、
時間はかかったが、ついに魔菌獣は崩れ落ちた。
くねくねと身をよじらせながら、地面に倒れる巨体。
(……勝った)
俺は思わず、その場に座り込んだ。
心臓の鼓動が、やけに早い。
怖かったが、この眼に救われた。
(これで……毒を無効化できる力を手に入れた)
そう思ったとき、レインとセラが駆け寄ってきた。
「無事か!?」
「ヨウ、大丈夫!?」
「ああ、胞子の効果を奪ったんだ」
「「……奪う?」」
二人が同時に聞き返す。
「相手の情報を見て、力の一部を奪えるんだ。
全部じゃないし、失敗も多い。
今回は……賭けに勝てた」
二人は思ったより落ち着いていた。
「なるほどな……
だから今までの動きだったわけか」
レインは苦笑する。
「すごいよ、ヨウ!
頼りになる」
セラも笑ってくれた。
「よし、さっさと森を抜けて、関所に向かおう」
二人は力強く頷いた。
それからは、妙な魔物に遭遇する前にと、俺たちは足早に森を抜けた。
やがて、オレンジ色の夕陽が視界を包み込む。
森を抜けたのだ。
前方には、関所らしき建物が見えている。
(……ようやく)
「エリシアだ」
胸が高鳴る。
俺たちは期待を胸に、関所へと歩みを進めた。
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【陽】
種族:人間
称号:冥奪の眼保持者
加護:憎悪の神エルロキス
眼のレベル:Ⅱ
剣術:S
魔術:A
弓術:E
闘斧術:A
魔法
火 火炎
疾風 暴風砕破
回復
隷従契約
聖
技能
毒支配
暗殺剣:Ⅱ
隠密:Ⅱ
装備
魔剣アルティエルン
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【レイン・ミスティールス】
種族:人間/エルフ混血
剣術:B
魔術:A++
弓術:A++
魔法
氷 氷結
水 洪水
回復 状態回復
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【セラ・ルクシア】
種族:人間
称号:光の魔術師
魔術:B++
魔法
光の雫 光線
光
聖
ご覧いただきありがとうございます。
森を抜け、ついに関所へ。
目的地であるエリシアが目前に。
ヨウがついに毒を操れるようになってしまいました。
次回もよろしくお願いします。




