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収奪の復讐者 ~奪われた全てを取り戻す悪魔の眼~  作者: 冬野 ヨル


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第24話 力なき正義

前回出会ったエンリルとどんな展開になるのか。

ヨウとの絡みをお楽しみに。

エンリルと共に野営拠点へ向かう俺たち。


歩きながら、ふと気になっていたことを聞いてみた。

「そういえば……バルグンドの人間が、どうしてテーヴァにいるんだ?」

「ヨウは、このあたりの人間じゃないのか?」

エンリルが少し意外そうに聞き返してくる。

「あぁ。メルの方から来たんだ」

「まだこの世界のことをよく知らなくてな。冒険者をやりながら見て回ってる」

俺はそれらしい答えを返した。

「そうだったのか」

エンリルは納得したように頷き、続けて語り出す。

「今、バルグンドはここテーヴァと、バルグンドの西にあるフィアネアを含めた三国で

 ノクス連邦を結成している。

 当然、戦力や技術の交換も行われている」

「そんな中、数日前のことだ。

テーヴァから、最近モンスターが増えているから調査に協力してほしい、という要請が

 バルグンドに届いた。

 それで、俺たちの王――ペルセウス様が、この件のために俺たちを派遣したってわけだ。」


「なるほどな」

俺は相槌を打つ。

「確かに俺も、これまでいろんなモンスターを見てきたが……」

レインが補足するように言った。

「あのミノタウロス級は、そう簡単に遭遇する相手じゃなかった。

 人里から離れているならともかく、あんな場所で出てくるなんてな」


「そんなことがあったのか」

俺も頷く。

「確かに、あんなモンスターが次々と人を襲うようになったら厄介だ」

そこまで話したところで、拠点が見えてきた。


「あそこが拠点だ!」

エンリルが指を差す。

「気になる話もあるだろうが、まずは戻って一息つこう。

 話はそれからだ!」

そう言って俺たちを天幕へ案内すると、ピエールを医療用の天幕へと連れて行った。


「それにしても……なんだか豪快そうな人だね」

セラが苦笑いしながら言う。

「確かにな~」

レインも笑って頷く。

「悪い人じゃなさそうだし、話しやすい。俺は安心したよ」

「そうだな」

俺も補足するように言った。

「能力で見た限り、相当な実力者だ。

 敵対しない限り、こちらが害を被ることはないと思う」


そうして待っていると、エンリルが天幕に戻ってきた。

「待たせちまったな!

ピエールは、なんとかなりそうだ。

……本当に感謝する!」

そう言って、深々と頭を下げてくる。

(やっぱり、悪い男じゃなさそうだ)


「それで、さっきの話の続きだが……」

エンリルは表情を引き締めた。

「最近、以前よりも強いモンスターが多く目撃されている。

 俺たちは、魔王が送り込んできているんじゃないかと予想している」

思わず聞き返す。

「魔王だと?

どこにいるんだ?」

(地球にいた頃、サタンやルシファーなんて名前は聞いたことがあったが……

 そんな存在が、この世界にもいるのか?)


「この大陸にはいない」

エンリルは首を振った。

「魔族は、基本的に“魔大陸”と呼ばれるニブル大陸にいる。

 これまでは、人間に大きな害をなしたことはほとんどなかった。

もちろん、魔族の中には人間の世界に紛れ込み、暗躍している奴もいるだろう。

だが、表立って敵対することはなかった。

それなのに、ここ最近はやたらとモンスターを見かける」

「……怖いね」

セラがぽつりと漏らす。

「もし魔族が本格的に人間に手を出してくるなら、

俺たちは団結しないと勝つのは難しいと思う」

レインが真剣な声で言った。

「実際に、実害は出ているのか?」

俺は疑問を投げかけた。

「実害か?」

エンリルは少し言葉を詰まらせる。

「……いや、そういう話は聞いていない。

 だが、民間人は怯えているし、手を打つ必要はあるだろ?」


エンリルはそう言うが、どうにも腑に落ちない。

実害が出ていないのに、何を根拠にそこまで踏み込む?

「俺は……」

言葉を選びながら口を開く。

「襲ってくるなら殲滅すればいいと思う。

 だが、そうでないなら、わざわざ火種を起こす必要はないんじゃないか?」


その言葉に、エンリルだけでなく、レインとセラも驚いた様子を見せた。

「ヨウ、お前……」

エンリルが少しきつめに言う。

「まさか、魔族が良い奴だとでも?」

「善悪の話じゃない」

俺は静かに返す。

「実害があるかどうかの話だ」

しばし、沈黙が流れた。

「ヨウの言うことも、分からなくはない」

レインが口を開く。

「でも、エンリルさんの言うことももっともだと思う。

 魔族の中には、人間では到底及ばない力を持った存在が何体もいると聞く。

 そんな奴らが攻め込むつもりなら、事前に手を打たなければ、

取り返しがつかないことになる」

「私は……よく分からない」

セラが戸惑いながら言った。

「さっきのモンスターは怖かったし、弟さんを助けるために戦ったけど……」


「とにかくだ!」

エンリルが話を断ち切る。

「これは、同じ人間として民間人を守るための義務だ。

 それに、俺たちには傭兵王ペルセウス様がいる。

 あのお方に従うことこそ、俺たち傭兵の在り方だ!」

そして、俺を真っ直ぐに見据えた。

「ヨウ。考え方は違うが、俺たちは俺たちの信じる道を行く。

弟を助けてくれたことには、心から感謝している。

だが、もし今のことで敵対することになったなら……、

俺たちは、容赦しない。それだけは分かっておいてくれ」


「……分かった」

俺は短く頷いた。

ここで言い返せば、言い争いになる。

最悪、戦うことになるかもしれないと思った。

今の俺たちでは、到底かなわない相手。

それに――

エンリルの持つ斧。


雷斧(グロム)ラブリス》

――神の如き裁きの雷が相手を襲う

――使用者の戦いの本能が強いほど、能力が増す


(……相当な代物だ)

そういう意味でも、

まずは俺が、もっと強くならなければならない。

地球での短い社会経験の中でも、学んだことがある。

――力なき正義は、無力。


少しの沈黙が流れた。


「まぁ……ちと重くなっちまったな!」

エンリルが空気を変えるように笑う。

「もう夜も近い。今日はここに泊まっていけ!」

「あぁ、ありがとう。世話になる」

俺が答えると、レインも微笑んだ。

「うまい飯も、ちゃんとあるぞ!」

エンリルはそう言って、セラをちらりと見る。

「……やった!」

セラは少し照れながらも、素直に喜んだ。

(あの時の一言、聞こえてたんだな)

俺は思わず苦笑する。


こうして俺たちは、食事と寝床を用意してもらい、

野宿とは比べものにならない快適さの中で眠りについた。

(明日はいよいよ、エリシアに着けるかな……)


そんなことを思いながら、意識は闇に落ちていった。


――――――


翌朝。

「昨日はありがとう。助かったよ」

俺は代表して礼を言った。

「ごはん、おいしかった」

セラも続ける。

「あぁ、気にするな!」

エンリルは笑顔で返す。

「弟を助けてもらった礼だと思ってくれ。

昨日は少し意見がぶつかったが、同じ人間同士だ。

何かあれば頼ってくれていいし、

暇があったら、バルグンドにも立ち寄ってくれ!」

“同じ人間同士”。

その言葉に引っかかりを覚えつつも、別れ際に水を差すのはやめておいた。

だが、どうしても聞いておきたいことがあった。

「ありがとう。そうさせてもらうよ。

 …ちなみに……バルグンドって、どんな国なんだ?」

その問いに、レインもセラも興味津々といった表情になる。

「確かに、立ち寄る前に聞いておきたいです!」

レインが頷く。

「私も興味ある」

セラも同意した。


「バルグンドは――」

エンリルは表情を崩さず、語ってくれた。

内容をまとめるとこういうことだった。


バルグンドは、今の王――ペルセウスによって築かれた国。

ペルセウスは、傭兵王と呼ばれていて、その下には5つの騎士団がある。


エンリル・ハルディアクスが率いる、斧騎士団(パイルリッター)

ジャンヌ・シュヴェリエが率いる、剣騎士団(ソードリッター)

フーリ・ピアースが率いる、槍騎士団(ランスリッター)

オウル・シュヴェリエが率いる、盾剣騎士団(シルトリッター)

アルジュ・アーチボルトが率いる、弓騎士団(ボウリッター)

それぞれが、その武器のエキスパート集団である。


5つの騎士団が中心となり仕事をこなす。

基本的には金さえ払ってくれれば仕事は引き受けるが、

傭兵の集まりだからこそ粗暴な連中も少なくない


(……5つの騎士団か。

エンリルでさえ、あの実力だからな…

他の団長や、傭兵王本人はどれほどの化け物なんだ……

 敵に回すには、あまりにも分が悪い)

「分かった。気をつけるよ」


俺たちは改めて別れの挨拶を交わし、エリシアへの旅を再開した。


ご覧いただきありがとうございます。

バルグンドについて新たな情報が出て来てワクワクしちぃました。

善悪の話はやっぱり難しい…


次回もよろしくお願いします。

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