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収奪の復讐者 ~奪われた全てを取り戻す悪魔の眼~  作者: 冬野 ヨル


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第21話 覚悟の選択

タイトルを「収奪の復讐者」に変更しました。

内容に変更はありませんので、そのままお楽しみいただけます。


気づけば20話超えてました。

今回はヨウたちの覚悟が見える回です。

――女王との謁見。


張り詰めた空気が、肌を刺す。

その先に立っていたのは、

想像していた“王”とは、あまりにも違う存在だった。

年の頃は25歳前後。

息を呑むほど整った容姿。

威厳はあるのに、圧がない。


まるで――

すべてを見通し、すべてを受け入れているかのような眼。

(……本当に、女王なのか?)

同じことを、レインとセラも感じているのが分かった。

「お待ちしておりました、ヨウ殿。

 どうぞ、前へ」

柔らかく、しかし確かな声。

「行こう」

俺たちは一歩、前に出た。

「よくお越しくださいました。

 直接お迎えできず、申し訳ありません」

「私は――

 魔導王国テーヴァ女王、アルケイナ・リオーネです」

一礼し、続ける。

「失礼を承知で、お呼び立てしました。

 どうしても、直接お話ししたいことがあったのです」


アルケイナは視線を巡らせる。

「皆は下がりなさい。

 この者たちと、大事な話があります。

 セリーナ。

 誰であろうと、ここへは入れさせないで」

「はっ。お任せください!」

兵士たちが退出し、扉が閉じられる。


静寂。


「……何の話なんだ?」

俺の声が、女王の間に静かに響いた。

「単刀直入に言います」

アルケイナは、逃げ場を与えない視線で俺を見据える。

「私は――

 あなたが成そうとしていることを止めるために呼びました」


一瞬、時間が止まったように感じた。

「……は?」

レインが、短く息を吸う音が聞こえた。

セラは、ぎゅっと両手を握りしめている。

(止める……?

 何をだ?)

「どういう意味だ」

言葉を選ぶ余裕はなかった。

「言わねば分かりませんか?」

アルケイナは一歩も引かない。

「――復讐の旅を、です」

はっきりとした断言。

胸の奥で、何かが軋む。

「……」

俺たちは、自然と互いの顔を見た。

(なぜ知っている?

 なぜ、そこまで……)


「ヨウ殿」

アルケイナの声は、静かだが重い。

「あなたは、愛する人のために」

視線が、まっすぐ俺に向けられる。

「レイン殿。あなたは、両親のために」

次に、レイン。

「セラ殿。あなたは、村と家族のために」

最後に、セラ。

3人分の“理由”を、一切の迷いなく言い当てられた。

「……っ」

セラの肩が、小さく震えた。

(ありえない。

 ここまで正確に――)

「復讐を願うこと自体は、否定しません」

アルケイナは続ける。

「怒りも、悲しみも、憎しみも……

 それらは自然な感情です。

 ですが……」

声が、わずかに低くなる。

「あなた方が歩むその道は、

 この先、確実に大きな騒乱を引き起こします」


「あなた方の旅は、

 国を滅ぼすほどではありません。

 ですが――

 多くの命と、取り返しのつかない選択を生む未来へ繋がっています。

 私は、それを見ることができる。

 未来を観測する力を、持っているからです」


――未来。


その言葉が、重くのしかかる。

(何を言ってる……?

 未来? 騒乱?)

疑うべきだ。

だが、なぜか笑えなかった。

一国の女王が、ここまでの場を整え、

こんな話をする理由が軽いはずがない。

俺は、無意識に“眼”へ意識を向けた。


――アルケイナ・リオーネ

称号:魔導王国テーヴァ女王

加護:時間の神

魔術:SSS


「!」

「……時間の神」

気づけば、口から零れていた。

「……!」

今度は、アルケイナの方が息を呑む。

「なぜ……

 なぜ、それを?」

それまでの落ち着きが、一瞬崩れた。

レインとセラが、同時に俺を見る。

「……どういうことだ、ヨウ?」

ここまで来たら、もう隠せない。

「俺にも……、神の加護がある」

その言葉に、空気が張り詰める。

「加護?何の話だ?」

レインが思わず俺に尋ねる。


俺は、語った。


この世界に召喚されたこと。

婚約者を目の前で失ったこと。

復讐を誓い、神の加護を得たこと。

帝国から逃げ、ここまで辿り着いたこと。

そして――“眼”の存在。


「俺の眼は、相手のすべてを見通す力じゃない。

 見えるのは、ほんの一部――

 力や状態、そして、場合によってはその奥にある“性質”のようなものだけだ。

 それ以上は、見えない。

 見ようとしても、拒まれることすらある」

話し終えたとき、誰もすぐには言葉を発せなかった。

内容も嘘ではないが核の部分は伏せて話した。


「……ヨウ」

レインが、低く呟く。

「そんな過去が……」

セラは、目を伏せたまま、唇を噛みしめている。


「そういうことだったのですね…

 …私も加護を受けています。

 私が受けているのは、時間の神による加護です。

 過去と未来を観測し、可能性を視る力。

 ですが……

 神そのものの干渉は、観測できない。

 神は理の外にあり、直接、世界を動かすことはできないから…

 だからこそ、あなたの存在は“歪み”として映っていた」

アルケイナの声には、驚きが混じっていた。


歪み――。


その言葉が、胸に刺さる。

「……つまり」

俺は、言葉を探しながら言った。

「俺が動くことで、未来が大きく変わるってことか?」

アルケイナは、はっきり頷いた。

「はい」

迷いのない返事。


しばらく、沈黙が続いた。

その沈黙を破ったのは、アルケイナだった。

「……だからこそ、お願いがあります。

 復讐の旅を、やめていただけませんか?

 その代わり、あなた方を最大限支援します。

 この国で不自由なく暮らすことも可能です」


――逃げ道。


甘い提案だ。

正直、一瞬だけ、心が揺れた。

だが。

「……すまない」

俺は、首を振った。

「それはできない。

 婚約者を殺された瞬間から、俺の人生はあの帝国と繋がってしまった。

 グラディウス皇帝を殺すまで、俺は止まれない」

拳を、強く握る。

「たとえ世界が敵になっても、

 ……たとえ、2人が俺から離れるとしても、

 俺は、行く」

そう言ってから、2人を見る。

「レイン、セラ」

「女王の話も、俺の話も聞いた上で――

 どうする?」


一瞬の間。


そして、レインが笑った。

「決まってるだろ。

 俺は、ついていく!

 親の仇は討ちたいし……

 正直、今さら戻れる気もしない」

「それに…」

ちらりと俺を見る。

「お前といると、退屈しない」


次に、セラ。

彼女は一度、深く息を吸ってから、言った。

「……正直、怖い…

 未来がどうなるとか、騒乱とか……

 よく分からない。

 でも…」

顔を上げる。

「私は、復讐だけを糧に生きてきた。

 家族を殺されて、何もせずに生きろって言われても……」

声が震える。

「それは、できない。

 ヨウと、レインとなら……

 私は、進みたい」


――決まった。


アルケイナは、ゆっくりと目を閉じた。

「……そうですか。

 それが、あなた方の選択なのですね」


しばらくして、静かに言う。


「では、せめてお願いです。

 時折で構いません。

 あなた方の状況を、私に伝えてください。

 私は、この国の女王です!

 守るべきものが、ここにあります」

俺は、頷いた。

「分かった。

 できるだけ、この国に害が出ないようにする」


アルケイナは、微笑んだ。

「ありがとうございます。

あなた方の旅は、険しいものになるでしょう。

ですが、覚悟を持って進む者を、私は否定しません」

一拍おいてアルケイナは続けた。

「最後に…。

 あなたの眼は“全知全能”ではない。

 だからこそ、あなたの未来はまだ1つに定まっていないとも言えます。

 これからの選択によって未来は変わります。

 世界を揺るがすほどの選択をしないことを祈ってます」


これが、

俺たちと――

魔導女王アルケイナ・リオーネの出会いだった。


この瞬間、

俺たち3人は“なんとなく一緒にいる仲間”ではなく、

覚悟を共有した存在になったのだ。


*


「……今日はもう遅いですし、部屋を用意させます。

 このまま城に泊まっていってください」

アルケイナはそう言って、穏やかに微笑んだ。

あれほど重い話を交わした直後だというのに、

まるで当然のように気遣ってくれるその態度に、少しだけ拍子抜けする。

(お人よしなのか……それとも、王としての器か)

正直なところ、答えは分からない。

だが――心身ともに限界だったのも事実だった。

俺たちはそのまま案内され、城内の客間へと通された。


静かで、広く、余計な装飾のない部屋。

張り詰めていた神経が、ようやく解けていくのが分かる。

「……今日は、凄かったな」

最初に口を開いたのはレインだった。

ベッドに腰を下ろし、天井を見上げたまま、ぽつりと呟く。


「ほんと……」

セラは小さく苦笑しながら、肩をすくめた。

「情報が多すぎて、頭が壊れるかと思った……」

その言葉に、思わず俺も小さく笑ってしまう。

「……2人とも、ありがとう」

自然と、そんな言葉が口から出た。

「こんな旅に、付き合わせてしまって」


一瞬、空気が止まる。

だが、レインはすぐに鼻で笑った。

「何言ってんだよ。

 俺たちだって、それぞれ目的がある。

 互いに手伝い合ってるだけだろ」

そう言って、俺の方を見る。

「それに……

 今さら途中で降りられるほど、甘くもないしな」

その言葉に、セラも小さく頷いた。

「うん……。

 正直、少し不安になったのは本当だけど」

視線を落とし、それから顔を上げる。

「ヨウと、レインが一緒なら……

 なんとかなる気がした!

 だから……これからも、よろしくね」


胸の奥が、じんわりと熱くなる。

(……本当に、いいやつらだな)

この世界に召喚されてから、

奪われて、失って、憎んでばかりだった。

それでも――

今、こうして隣にいてくれる存在がいる。

(せめて、この2人だけは……。

何があっても、守ってやりたい)

その思いを胸にしまい、俺は静かに息を吐いた。


「……よし」

レインが立ち上がり、軽く伸びをする。

「今日はもう寝よう。

 頭も体も限界だ」


「賛成……」

セラは欠伸を噛み殺しながら、ベッドに潜り込む。


灯りが落とされ、部屋が静寂に包まれる。


「おやすみ」


短いその一言を最後に、

俺たちはそれぞれ、深い眠りへと落ちていった。


――明日からの旅が、

もう後戻りできないものになったことを、

誰もが心のどこかで理解しながら。


ご覧いただきありがとうございます。

女王アルケイナとの対話メインでしたが、重要な選択のお話でした。

3人の関係も、いい意味で変わってきた感じですね。

今後の動きはどうなっていくのか。

次回もよろしくお願いします。

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