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収奪の復讐者 ~奪われた全てを取り戻す悪魔の眼~  作者: 冬野 ヨル


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20/22

第20話 運命の扉

昨夜の出来事から一夜明け、

ついにテーヴァの城へ向かうことに。


昼前。

意識が浮上してくる感覚と同時に、俺は目を覚ました。

窓の外はすでに明るい。

朝というより、もう昼に近い光だ。

(……寝過ぎたか)

だが、体を起こそうとしてすぐに納得する。

昨日までの疲れが、まだ身体の奥に残っていた。

洞窟を抜け、街を歩き、

夜には女王の側近が現れ――

気を張り詰めたまま眠りについたのだ。

これで早く目が覚める方がおかしい。

部屋の中は静かだった。

レインとセラは、それぞれのベッドでまだ眠っている。

レインは仰向けで、胸がゆっくり上下している。

完全に力の抜けた寝顔だ。

セラは毛布に包まるようにして、小さく丸まっている。

(……起こすのは、もう少し後でいいか)


昨日の話は重い。

中途半端な寝起きで聞かせる内容じゃない。

俺は静かに起き上がり、ポーチに手を伸ばした。

指先が触れたのは、昨夜渡された小さなバッジ。

ひんやりとした金属の感触が、あれが夢ではなかったことをはっきりと思い出させる。

(王城に来い、か……)

女王の使い。

アルケイナ・リオーネ。

重要な話がある、と。

理由も目的も分からないまま呼び出される王城。

普通なら断ってもおかしくない。


だが――

なぜか、逃げる選択肢は最初からなかった。

(……どう話すか)

2人には、きちんと伝えなければならない。

隠す理由もないし、

隠したまま一緒に城へ行くわけにもいかない。

俺は身支度を整え、椅子に腰を下ろして時間を待った。

街の音が、次第に賑やかになっていく。


そして、昼に差しかかった頃。

「……よし」

俺は立ち上がり、2人のベッドのそばへ行く。

「起きろ、もう昼だ」

まずレインが、わずかに眉を動かして目を開く。

「……ん?」

一拍置いて、周囲を見回す。

「……マジで昼か」

次にセラが、もぞもぞと体を起こした。

「ん……おはよ……?」

まだ完全には覚醒していない声だ。

2人の視線が、自然と俺に向く。

「どうしたの?」

セラが首を傾げる。

レインは俺の表情を見て、すぐに察したようだった。

「……なんかあったな」

俺は小さく息を吐き、頷く。

「ああ、昨夜のことだ」

「夜?」

セラがきょとんとする。

「女王の使いが来た」

そう前置きしてから、続ける。

「……王城に呼ばれた」

部屋の空気が、ゆっくりと変わった。


2人の視線を受け、俺は昨夜の出来事を簡潔に話した。

女王の側近を名乗る女が現れたこと。

アルケイナ女王が、俺たちに会いたがっていること。

そして――王城への呼び出し。

話し終えると、部屋に短い沈黙が落ちた。


「……女王の使い?

 そんな人が、夜中に……?」

最初に口を開いたのはセラだった。

「ヨウが1人になるまで、どこかで隠れて観察してたってことか」

レインは腕を組み、低く言う。

「ただ者じゃないな。

で、敵意はなかったんだな?」

「ああ。少なくとも、俺にはそう感じなかった」

「でも王城だろ?」

レインの表情に、わずかな緊張が浮かぶ。


セラは、不安そうに俺を見た。

「……大丈夫なの?」

俺は一瞬だけ考え、正直に答えた。

「分からない。

 けど、避けて通れる話じゃない気がする」

「……だよね」

レインは小さく息を吐いた。

「商業王ロスに続いて、今度は魔導女王か。

 ヨウ、相変わらず巻き込まれ体質だな」

苦笑混じりのその言葉に、セラも少しだけ表情を和らげる。


「……でも」

セラは真っ直ぐに俺を見た。

「1人で行くって、言わないよね?」

「言わないさ」

俺は迷わず答えた。

「使いの人も、仲間と一緒に来てほしいって言ってた」

そう言って、昨夜渡されたバッジを机の上に置く。

「これが、王城への通行証らしい」

「なるほど」

レインがそれを見て頷く。

「正規の招待ってわけか。

なら決まりだな」

レインは立ち上がった。

「王城見学ってやつだ。

 緊張はするけど、行かない理由もない」

3人の意見は、自然と一致した。


昼を少し回った頃、俺たちは宿を出た。

昨日までの疲れはまだ体に残っているが、

それ以上に、胸の奥に引っかかるものがあった。


――女王からの呼び出し。


その一言だけで、軽い散策の延長とは訳が違う。

通りを歩く足取りも、自然と早くなる。


「……」

誰も言葉を発しなかった。

俺は無意識に、ポーチの位置を確かめる。

中にあるバッジの存在が、

これが現実であることを静かに主張していた。

(ここから先は、もう“旅の途中”じゃない)

そう思いながら、

俺たちは王城へと続く道を、黙って進んでいった。


しばらく歩くと、視界の先にそれは現れた。

白と蒼を基調とした塔群。

城壁には幾重もの魔法陣が刻まれ、

近づくほど、空気そのものが張り詰めていく。


――魔導王国テーヴァの王城。


「……あそこか」

思わず、息を呑んだ。

(この先で、何を告げられるんだろうな)

だが、不思議と足取りは止まらなかった。


俺たちは並んで、

王城へと続く道を進んでいった。


王城に到着した俺たちは、正門へと歩み寄る。


「止まれ!

 何用だ?」

鋭い声が飛ぶ。

兵士の視線が、俺たち3人を射抜いた。

俺は無言で、昨夜セリーナから渡されたバッジを取り出し、差し出す。

「――失礼いたしました。

 どうぞ、中へお入りください」

態度は一変した。

兵士は一礼し、門の脇へと退く。

(……このバッジ、想像以上だな)

俺たちはそのまま、王城の中へと足を踏み入れた。


中庭を抜け、城内の回廊に入った瞬間――

思わず、言葉を失った。


絢爛豪華な天井装飾。

魔法によって滑るように移動する床と階段。

空中に浮かぶテーヴァを示す光の紋章と、行き交う高位魔術師たち。

(……これが、魔導王国の城か)

地球のテレビで見た“城”とは、明らかに次元が違う。


その時だった。

「お待ちしておりました」

振り返ると、そこに立っていたのは――

昨夜の女、セリーナだった。

「そちらがご同行の方々ですね。

 私はセリーナ・ロレンス。女王陛下の側近です」

丁寧な挨拶に、レインとセラも応じる。

「レインです」

「セラです」

2人の警戒が、わずかに緩んだのが分かった。

「ここからは、私がご案内します。

 どうぞ、こちらへ」

セリーナは踵を返し、歩き出す。

俺たちはその背中を追った。

警戒は解かない。

だが同時に、確信する。

(……案内がなければ、確実に迷う)

城内は迷宮のように複雑だった。


やがて、重厚な扉の前に辿り着く。

「セリーナです。

 お客様をお連れしました」


扉が、ゆっくりと開いた。


ご覧いただきありがとうございます。

少し引っ張っちゃったかも…?

でも、これからの旅における重要な人物との出会いが。

次回もぜひご覧ください。

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