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収奪の復讐者 ~奪われた全てを取り戻す悪魔の眼~  作者: 冬野 ヨル


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17/30

第17話 商業王との邂逅

今回は新キャラ登場。

思わぬ形でとんでもない人物と関わることに。

気楽に読んでもらえたら嬉しいです。

歩き出してしばらくしてから、ようやく関所の影が遠目に見え始めた。

石造りの門と、そこに集まる人の気配。

目的地が近いことを実感し、わずかに気が緩みかけた――その時だった。


街道の端。

倒れ伏した馬車。

そして、その周囲に転がる血塗れの死体。

俺たちは、無言のまま顔を見合わせた。

「……おい、行ってみようぜ!」

最初に動いたのはレインだった。

迷いのない声とともに、彼は駆け出す。

「待って!」

セラが後を追い、俺も続いた。

近づくにつれ、状況はより凄惨さを増していく。

馬車は破壊され、護衛と思しき者たちは刃物で切り裂かれていた。

だが――


「……生きてる人がいる!」

まだ息のある者が1人残っていた。

「大変だ、急いで治療しないと!」

レインが膝をつき、治療に入ろうとした、その瞬間。

「……う……」

かすれた声。

「……俺たちより……馬車の中にいる……お方を……」

言葉を絞り出すようにそう告げると、男はそれきり動かなくなった。

「……っ」

俺たちは、急いで馬車の中を確認する。

近づいて分かる。

立派な装飾、上質な素材。

(……偉い人か?)

中を覗いた瞬間、答えは出た。

護衛たちに埋もれるようにして、1人の男が倒れている。

「大丈夫ですか!?」

セラが真っ先に駆け寄った。

「……う、うぅ……」

男はうめき声を上げるだけで、意識は朦朧としている。

(これは……危ないな)

そう判断した瞬間、セラは迷わなかった。


「―― 光の雫(ライトドロップ)


静かな詠唱。

次の瞬間、柔らかな光が空間に生まれ、雫のように男の身体へと降り注ぐ。

光に包まれた傷が、ゆっくりと塞がっていく。

(……すごいな)

見た目だけなら、俺の回復(ヒール)よりもはっきりと凄いのが分かる。

反射的に、俺は眼へと意識を向けた。


――コピー。


……だが。


<コピー対象外>


文字だけが、冷たく浮かぶ。

(……反応しない?)

なぜだ。

今までなら、どんな魔法であれ、何かしらの感触はあった。

それなのに、今回は完全に“拒否”された。


(コピー対象外……?)

考えが巡るが、その途中で男が小さく息を吸い込んだ。

「……ここは……?」

男の目が、ゆっくりと開く。

「!」

「君たちは……誰だ?」


(今はそれどころじゃないな)

俺は思考を切り替え、前に出た。

「俺たちは冒険者だ。ヨウという。

 こっちはレインとセラ。俺の仲間だ。

 壊れた馬車と死体を見つけて、様子を見に来たんだ」

「外の護衛の1人が、あんたを頼むって言ってな」

レインが続ける。

「意識がなかったあんたを、回復させた」

男は、まだ思うように体が動かない様子だったが、無理に身を起こそうとして、諦めたように息を吐いた。

「……ありがとう。感謝する」

そして、ふと何かを思い出したように目を見開く。

「そうだ……」

「……メルから、テーヴァへ向かう途中で……賊に襲われたんだ」

「……あの賊ども……」

悔しさを噛み殺すように、歯を食いしばる。

「この馬車じゃ、狙われても不思議じゃないな」

俺は男を見下ろしながら問いかけた。

「……あんた、一体何者なんだ?」

男は一拍置き、苦笑する。

「確かにな。金に飢えた賊にとっては、いい獲物だっただろう」

そして、静かに名乗った。

「紹介が遅れたね。

 私は ―― ロス。

 ロス・ヘルディだ」

その名を聞いた瞬間、メルでの門番との会話が思い出される。

メルを事実上支配する、あの男。


――ロス・ヘルディ。

称号:商業王。


俺は無意識にステータスを確認する。

……嘘じゃない。

「あなたほどの方が、どうしてこんなところに……?」

驚きを隠さず、レインが口を開いた。

「テーヴァの女王に会うためですよ」

ロスは、穏やかな笑みを浮かべて答えた。

「女王ほどの方に会うのに、私以外が出向くのは失礼でしょう?」

だが次の瞬間、その笑みは苦笑へと変わる。

「……もっとも、この有様では、会いに行く手段がなくなってしまいましたがね」

命を狙われ、護衛も失ったというのに、ロスは冷静だった。

(……なるほど)

商業王と呼ばれる理由が、少しだけ分かった気がした。

そんな俺たちを見て、ロスは静かに提案する。

「もしよろしければ……

 あなた方に、テーヴァまで護衛をお願いできないでしょうか?

 謝礼は、惜しみません」

3人で顔を見合わせる。

「これは、大事な商談なのです。

 これが成れば、私にできる限りの支援を約束しましょう。

 冒険者であれば、資金も情報も、必要になる場面は多いはずです」

(……確かに)

商業王ロス・ヘルディの支援。

それは、今後の旅において、計り知れない価値を持つだろう。

「分かった」

俺は、はっきりと答えた。

「テーヴァまで、護衛しよう。

 2人とも、いいか?」

「私は賛成だよ。ヨウが決めたことだし」

「俺も異論はない」

2人とも、迷いはなかった。

「……ありがとうございます」

ロスは、深く頭を下げた。

その時、レインが口を開く。

「ところで……

 時間に余裕があるなら、賊を討伐して、奪われた金品を回収するのはどうかな?」

「私の商談は五日後です」

ロスは即座に答える。

「問題ありませんが……あなた方の旅程は?」

「大丈夫だ」

(ロスの恩恵を考えると、短期より長期で見た方が得だ)

俺は、そう判断した。

「じゃあ決まりだな!」

レインが、いつもの調子で言う。


こうして俺たちは、

テーヴァへ向かう前に――


ビスから聞いていた、

賊が潜む洞窟へと進路を変えることになった。


*


ビスから聞いた洞窟の場所、そしてロスの護衛。

奪われた物を取り戻すため、俺たちは森の中を進んでいた。


「そういえばさ、奪われた荷物を取り返すって言ったけど、肝心の洞窟ってどこにあるんだ?」

歩きながら、ふと疑問が口をついて出る。

「見渡した感じ、怪しそうなのは東側の森の方だと思うけど……」

レインが周囲を見渡しながら答える。

「……気を失う前に見た限りでは…」

ロスが記憶を辿るように目を伏せ、続けた。

「あちらの方角へ去っていったような気がします」

その一言で進む方向が定まった。

ロスが覚えていてくれたことに、内心で安堵する。

「それじゃ、行こう」

俺の言葉を合図に、ロスを囲むような形で森の奥へ進んでいく。


森に入ってから、どれほど歩いただろうか。

湿った空気と、岩肌が増えてきた頃――。

岩の一部に、不自然な穴が口を開けているのが見えた。

「あれじゃない?」

セラが指を差す。

(……あそこか)

その時、俺は別のことも考えていた。

(レインとセラの実力……

 実際、どの程度なんだろう)

2人とも頼りになるのは分かっている。

だが、命がかかる場面での動きは、まだ見ていない。

そこで、俺は提案した。

「2人の力をちゃんと確認しておきたい。

 今回の戦い、レインとセラをメインで戦ってみないか?」

「問題ないよ」

レインは迷いなく頷いた。

「……緊張する」

「一度も戦ったことはないけど……多分、大丈夫だと思う」

セラは小さく息を吐くように答える。

「セラは初戦闘か…」

レインは一瞬考え、俺を見る。

「それなら、ヨウが後ろでサポートしながら戦うといい」

俺は頷いた。

「無理はしなくていい。行こう」

俺とレインの言葉を聞いたセラは大きく頷く。

「うん!」


そうして、俺たちは洞窟の中へ足を踏み入れた。

中は思ったほど広くはなく、賊の数も多くなさそうだ。

だが、光の届かない闇が広がっている。

慣れていないと、足元も危うい。


「―― (ライト)


セラが魔法を発動させると、柔らかな光が洞窟内を照らした。

「便利な魔法だね」

レインが感心したように言う。

「小さいころ、お父さんと夜に出かけるときによく使ってたんだ」

セラは少し照れたように笑った。

そのまま進み、少し開けた空間に出た瞬間――。


「お前ら、誰だ?」

荒い声が洞窟に響く。

「お前らが略奪をしている賊か。

 依頼だ。奪った物を返してもらう」

「馬鹿な奴らだ」

俺が口を開くと、奥に立つ男が吐き捨てるように言った。

「こんなところまでノコノコ来やがって」


――あいつが大将か。


「やれ! 返り討ちにしてやれ!」

掛け声と同時に、賊たちが襲いかかってくる。

数は15人ほど。

メルでの山賊討伐よりは少ないし、ステータスを見ても、特別強い奴はいなかった。

(問題ないはずだ)

レインとセラが構える。

そして、戦いが始まった。


先制したのはレインだった。

弓を引き、放たれた魔法の矢が連続して賊を射抜いていく。

同時に、セラも詠唱を始める。


「―― 光線(レイ)


集束した光が一筋の線となり、放たれる。

レーザーのような一撃が、数人の賊をまとめて貫いた。

(……いい魔法だ)

俺は反射的に眼へ意識を集中させる。


<コピー対象外>


さっきと同じだ。

コピーできない。

セラのステータスを確認し、魔法一覧を見る。

まだ使っていないのは――


(……(ホーリー)

その瞬間だった。


(ホーリー) コピー>


「……!」

(コピーできた?)

回復魔法も、光線(レイ)もできなかったのに、(ホーリー)はコピーできる。

(光の魔術師……その称号が関係しているとか…?

 セラには、コピーできない“固有の力”があるってことなのかもしれない)

俺は仮説を立てるが、そう考えると、馬車で使った回復魔法がコピーできなかった理由にも納得がいく。

眼でコピーできない、特殊な称号や存在がある――

また一つ、冥奪の眼について理解ができたかもしれない。


そうこうしている間にも、戦況は完全にこちらのものだった。

「お2人とも、強いですね」

ロスが感心したように呟く。


「怯むな! 殺せ!」

賊たちは必死に叫ぶが、

レインの矢とセラの魔法が近づく前に敵を倒していく。

「初戦闘にしては、なかなかやるじゃん!」

「ありがとう、レイン」

2人のやり取りを見て、俺は内心で頷いた。

(……大丈夫だな)

「どうなってやがる……」

大将の男は、完全に腰が引けていた。


「―― (ホーリー)


セラが手を上げる。

白い光が球体となって男を包み込み、次の瞬間、弾けた。

「うわあああああっ!」

悲鳴とともに、男は地に崩れ落ち、戦いは終わった。


ふと、セラの横顔を見る。

……ほんの一瞬。

彼女の口角が、上がっていたような気がした。


「セラ、すごかったな。

 圧倒的だった」

俺が言うと、セラは少し照れたように笑う。

「緊張したけど……ヨウとレインがいてくれたから」

セラが一人だったらこう上手くはいかなかっただろう。

(この先、帝国とぶつかる日が来る。

 その時に――彼女が折れないだけの力を持っていてほしい)


「さすがの戦いぶりでした」

そう思ってるとロスが笑顔で褒めてくれた。

「あなた方に護衛をお願いできて、私は幸運です」

(ロスに力を見せることができたみたいだ)

「それじゃロスさんの荷物を探すとしますか」

レインに従い、俺たちは洞窟内に残された荷物を確認した。


その最中、1枚のメモが目に留まる。


――――――――――

エルフの涙

ダークエルフの心臓

精霊の羽

世界樹の泉の雫

世界樹の枝


加護を受けるには、この5つが必要

――――――――――


「なあ、レイン」

「これ、意味分かるか?」

レインを呼びメモを見せてみた。

レインはメモを見るなり、表情を曇らせた。

「……世界樹の加護だ」

「世界樹の加護?」

「この世界には、ヴァナトリスって国がある」

レインは静かに語り始める。

「エルフ、ダークエルフ、精霊が棲む国だ。

 国そのものが世界樹を信仰していて、

 世界樹と、その近くにある“世界樹の泉”がすべての中心になっている。

 大陸の一番東にある国だ」


さらに続ける。

「詳しくは知らないけど、このメモに書かれた素材を泉に捧げることで、

 世界樹の加護を受けられるって逸話がある」

そして、少し間を置いて――。

「俺は……エルフとの混血なんだ。

 昔は、そこに住んでた。両親と一緒に。

 ……でも、両親はダークエルフに殺された」

沈黙が落ちる。

「それが、レインの復讐か?」

「そうだ」

「それなら、俺もレインの復讐を手伝うよ」

「いいのか?」

迷いはなかった。

この先、敵は必ず帝国だけでは済まない。

なら――利害も覚悟も、ここで共有しておくべきだ。

「あぁ、俺の復讐も手伝ってもらうんだし」

「ありがとう、ヨウ」

俺は頷く。


「レインの復讐に行くとき、ついでにその泉も見てみるか」

俺が呟くと、レインは首を振った。

「それは難しいと思う。

 ヴァナトリスは世界樹信仰の国だし、生活用水は泉が源泉だ。

 人間を敵視している彼らが、そんな神聖な場所に近づけるはずがない。

 ……国に入れるかどうかも怪しい」

「さっき、手伝ってくれると言ってくれたが、

 正直、復讐対象が国の中にいたらそれも難しいかもしれないしな」

「まぁ、この話はまた今度だ」

そう言って、レインはロスの荷物探しに戻る。


(世界樹の加護……

 なんとしても、手に入れたい。

 いずれ入る方法も考えておかないといけないな)

メモをポーチにしまい、俺も再び荷物を探した。


――


「ありました!」

ロスの声が洞窟内に響く。

「本当に、ありがとうございます」

深く頭を下げるロス。

「……せっかくですから、

 金になりそうなものは、持てるだけ回収してはいかがですか?」

一瞬、迷いはあった。

(日本なら、窃盗だな)

だが、ここは日本じゃない。

「ここにある金品の持ち主は、既に亡くなっているでしょう。

 表に出ることのない代物です」

その言葉に、俺は頷いた。

(……確かにな。

 それにここは日本じゃない)

腰のポーチに手を伸ばす。


レインは一瞬顔をしかめたが、黙って了承する。

セラも迷った末に、頷いた。

(2人とも何か思うことがあるのだろう。

 だが、綺麗事ではやっていけないと思った俺は、その場では何も聞かなかった)


こうして俺たちは、金になりそうな物を回収し、洞窟を後にする。


――次は、魔導王国テーヴァだ。



――――――――――――――――――――――――――

【陽】

種族:人間

称号:冥奪の眼保持者

加護:憎悪の神エルロキス

眼のレベル:Ⅱ


剣術:S

魔術:B++

弓術:E


魔法

 (ファイア)    火炎(フレイム)

 疾風(ブラスト)   暴風砕破(ストーム)

 回復(ヒール)

 隷従契約(サーヴァント)

 (ホーリー)


技能

 毒操作(ポイゾナー)

 暗殺剣:Ⅱ


装備

 魔剣アルティエルン


―――――――――――――――――――――――――

【レイン・ミスティールス】

種族:人間/エルフ混血


剣術:B

魔術:A++

弓術:A++


魔法

 (アイス)    氷結(フロスト)

 (ウォーター)   洪水(フラッド)

 回復(ヒール)   状態回復(レスト)


―――――――――――――――――――――――――

【セラ・ルクシア】

種族:人間

称号:光の魔術師

魔術:B++


魔法

 光の雫(ライトドロップ) 光線(レイ)

 (ライト)

 (ホーリー)


ご覧いただきありがとうございます。

新キャラのロスとセラの初戦闘。

普通に強いかもですが、ちょっと気になるところもあったり…?

次回もよろしくお願いします。

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