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収奪の復讐者 ~奪われた全てを取り戻す悪魔の眼~  作者: 冬野 ヨル


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第16話 三人の旅路

レインとセラとともに、新たな旅へ。

本格的に動き出します。

道中で、あの行商人とも再会します。

レインとセラを仲間に加えた俺――陽は、商業都市メルを後にしていた。

石畳の街道を進むにつれ、背後にあった喧騒が、ゆっくりと遠ざかっていく。


街の匂いが薄れ、風の音だけが耳に残る頃、俺は隣を歩くレインに声をかけた。

「なあ、レイン。次の目的地はどこがいいかな?」

何気なく問いかけると、レインは少しだけ空を見上げてから口を開く。

「水都エリシアはどうだ?

セラの復讐の件もある。情報は集めておいた方がいい」

「私もそれで大丈夫だよ!」

セラは即答だった。

小さな拳を胸の前で握るその仕草に、幼さと同時に、確かな覚悟が滲んでいる。

「よし。それじゃ、エリシアに行こう」

こうして、次の目的地は水都エリシアに決まった。


――だが。

「ただし……」

レインは、わずかに声を落とす。

「エリシアに行くには、ノクス連邦を越える必要がある。

傭兵王ペルセウスが治めている国だ」

「傭兵王?」

聞き慣れない肩書きに、思わず聞き返す。

「ああ。傭兵ってのは、金さえ積まれれば善悪関係なく仕事を請け負う連中だ。

そんな連中を束ねている、腕っぷしの強い王様ってわけだな」

レインは軽く肩をすくめる。

「ペルセウス本人は、そこまで厄介な相手じゃない。ただ……」

一拍置き、続けた。

「連邦全体を完全に抑え込めているかは怪しい。下には欲にまみれた連中もいる。

そういう連中に目を付けられると、面倒なことになるだろうな」

「……怖そうなところだね」

レインの言葉を聞いたセラは、少しだけ肩をすくめて呟いた。

当然の反応だろう。

だが俺は――

(強くなれるなら、むしろありがたい)

胸の奥で、静かな闘志が灯る。


「ちなみにノクス連邦は3国で構成されている」

レインは歩きながら続ける。

「フィアネア国、バルグンド国、そして魔導王国テーヴァ」

「俺たちが通るのはテーヴァだ。アルディアとの国境、オリントスとの国境、その両方で関所を抜ける必要がある。

魔導研究が盛んな国だから、入ることさえできれば、何か得られる可能性もある。

とりあえずは、テーヴァを目指すで問題ないよ」


「レインって、本当に物知りだね」

セラが素直に感心する。


「各地を転々としていた時期があってね。最低限は知っているつもりさ」

(やっぱり、レインは戦闘でも情報でも頼りになる)

「そういえばさっき言ってたアルディアとオリントスって?」

俺が尋ねると、レインは「ああ」と頷いた。

「アルディアは、このメルがある国の名前だ。

オリントスは、水都エリシアがある国だよ」

(そういえば、メルは都市名だったな……)

今さらながら、ようやく理解する。


「道中は長い。分からないことがあったら、何でも聞いてくれ」

俺とセラは、揃って頷いた。


――その時だった。

街道脇に停められた1台の馬車が目に入る。

荷台の横に腰掛けている男。

どこか見覚えのある、気楽そうな姿。

「おや」

男がこちらを見て、口元を緩めた。

「お兄さん、久しぶりじゃねぇか」

「こんなとこで会うなんて、旅ってのは面白ぇもんだな」

「……ビス」

自然と、その名が口をついて出た。

「久しぶりだな。元気そうで何よりだ」

「服も相変わらず、よく似合ってるしな」

ビスは俺の装備をざっと眺め、満足そうに頷く。


「この人、誰?」

セラが小声で聞いてくる。

「紹介する。この人はビス。行商人だ。

俺がメルに向かう途中で世話になった」

(あの時は本当に助かった。

ビスがいなければ、野営に苦労していたに違いない)

「世話ってほどでもねぇよ」

ビスは軽く笑った。

「ただまぁ――兄ちゃんの装備は俺が見立てた。

そこは自慢させてもらうけどな。

ところで、そちらのお2人さんは旅の仲間か?」

「ああ。メルで出会って、一緒に旅をすることになった」

「そうなのか。いい顔してるじゃねぇか。

――2人とも、よろしくな」


「よろしく!」

レインは短く返す。

「へえー、ヨウの服ってカッコいいよね」

「ビスって、センスあるんだね!」

セラの言葉に、ビスはわざとらしく肩をすくめた。

「まぁな。

ただ、似合う装備ってのは、命を守る装備でもある」

そう言って、少しだけ楽しそうに目を細める。

「で? せっかく再会したんだ。

ちょっと荷物、覗いていかないか?

旅は長ぇ。途中で『あれ持っときゃよかった』って後悔するやつを山ほど見てきた」


レインが俺を見る。

「見ていってもいいんじゃないか?」

俺は頷いた。

「私も見たい!」

セラは、完全に興味を隠せていない。

(こういうところを見ると、普通の女の子なんだよな)

何気なく接していると、内に秘めた復讐心など、微塵も感じ取れない。


――ビスは、そんな様子を見てくつくつと笑った。

「そう来なくちゃな。

安心しろ。無理に売りつけたりはしねぇ」

そう言って馬車の荷台を開く。

中には、整然と並べられた装備や道具。

旅人の命を繋ぐ品々が、静かに光を放っていた。


「せっかくだ。3人分の旅の必需品と服も見繕ってやる。

兄ちゃんの服は、さすがにくたびれてる。

お嬢ちゃんのも、ちゃんと整えといた方がいい」

ビスはレインとセラを見て言った。

(確かに、この辺で新調しておくべきだろう。

ザックさんからもらった支度金もある)


提案に乗り、2人とも服を新調することになった。

レインは、白と緑を基調とした、エルフらしさを感じさせる軽装だ。

「おぉ……前より動きやすいし、しかも頑丈だ」

「これは気に入ったよ」

セラは、白を基調とした、アイドルのようでありながら光の魔術師らしい装い。

だが、なぜか部分的に――

復讐を象徴するかのような黒が差し込まれていた。

「こんなかわいい服、着たことない……

私のも動きやすいし、ちゃんと守られてる感じがする。

ありがとう、ビス」

2人とも、心から気に入った様子だった。


買い物を終え、別れ際。

「そういえばだ」

ビスは、ふと思い出したように口を開く。

「この先、テーヴァとの国境近くでな、

金品を狙う賊どもが潜んでるって噂の洞窟がある。

行くなら、気を付けることだ」

一呼吸置いて、軽く手を振る。

「また会った時は、覗いてってくれよな」

そう言って、ビスは街道の向こうへ去っていった。


こうして俺たちは、気持ちを新たに――

関所へ向けて、再び歩き出した。


ご覧いただきありがとうございます。

久しぶりにビス登場の回でした。

旅の準備も整い、いよいよ次の目的地へ。

次回も、よろしくお願いします。

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