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収奪の復讐者 ~奪われた全てを取り戻す悪魔の眼~  作者: 冬野 ヨル


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第13話 忠誠の果て

第三区での作戦が始まりました。

今回はホライゾン側の戦闘回です。

マーカスとブレイク、そしてコールとレオ。

そして、この戦いの先には――。

向かい合うマーカスとブレイク。

マーカスが先に動く。

剣を構えブレイクへ振り下ろす。

ブレイクも剣を構えるがマーカスの剣圧に押され後方へ飛ばされる。

実力差がはっきりしていた。

剣を交える度に剣圧で押されるブレイク。


「俺たちはな……ヴィクターの兄貴と一緒に、底辺から這い上がってきたんだよ!」

既に傷だらけのブレイクだが歯を食いしばり、剣を振り上げる。

「こんなところで、くたばるわけにはいかねぇんだ!」

怒号とともに、斬撃が放たれる。

マーカスも迷いなく踏み込み、剣をぶつけた。

甲高い金属音が響く。

刃と刃がぶつかり合い、火花が散る。

数合、打ち合う。

互いに退かず、間合いを詰め、再びぶつかる。

「……底辺から這い上がったのなら」

マーカスは剣を構えたまま、静かに言った。

「そこから落ちない生き方を選ぶこともできたはずだ。

 この状況を招く生き方をしている時点で……それは“這い上がった”とは言わない」


その言葉に、ブレイクの表情が歪む。

「うるせぇ!

 お前らに分かるか……弱者が踏みにじられる気持ちが!」

荒々しく、剣を振る。

「俺たちはな、あの時決めたんだよ。

 見返してやるって!」

「そしてパイオニアでパーティを組んで、ここまで勢力を広げたんだよ。

 ここからもっと、俺たちは上がっていくんだ!」


「……上がっていく、か。

 お前は上がった先で何をしたいんだ?」

マーカスは剣を受け流しながら、低く言う。


「決まってる、利益を独占して楽しく暮らすんだよ!

 弱肉強食のこの世界で次は俺たちが上に立つ」

ブレイクの言葉にマーカスも問う

「それなら…

 お前たちは、その“弱者”を生み出さないために力を使うべきとは思わなかったか?」

「自分たちさえよければという考えが、お前らを虐げた連中と変わりないと思うがな」


「黙れ、マーカス!」

むきになり剣を振るブレイクだが、傷だらけになった体の限界が近づいていく。

一瞬だった。

ブレイクの動きが、わずかに鈍った。

その刹那を、マーカスは逃さない。

踏み込み。

鋭く、一直線の斬撃。

刃がブレイクの身体を斬り裂いた。

「ぐ……っ……」

膝をつき、崩れ落ちる。

マーカスは剣を下ろし、倒れた男を見下ろした。

「すべてを変えることはできなくても、

 ……お前たちの力で、守れたものもあったはずだろうに…」

マーカスは本来無口な性分だが内に秘めた熱いものがある。

でなければパイオニアで今の地位まで上り詰めることもなかっただろう。

そこを刺激されたマーカスは黙ってはいられなかったのだ。


「……すまねぇ、兄貴……」

ブレイクの視界が、ゆっくりと暗んでいく。


――親もいない。家もない。

生きるために盗み、殴り合い、奪うしかなかった日々。

そんな中で出会った、ヴィクターとレオ。

同じように孤独で、荒んでいて、

それでも三人で笑える時間が、確かにあった。

(……あの頃から、どこで間違えたんだろうな)

(先に行くぜ、兄貴……レオ兄……)

その意識が、闇に沈む。

こうして、マーカスとブレイクの戦いは終わった。


*


第三区――

ダークエルフのアジトのひとつ。


薄暗い建物の内部で、もう一つの殺し合いが始まっていた。

コールとレオ。

廊下には灯りがほとんどなく、壁に吊るされた魔灯が弱々しく揺れている。

そのわずかな光の中で、2人は互いに距離を測っていた。

暗殺剣の使い手同士。

呼吸は浅く、足音すら殺している。

「……まさか、お前も暗殺剣を使えるとはな」

コールが低く口を開く。


「力を見せすぎると不利になるからな」

レオは薄く笑った。

「だが、俺はあんたが暗殺剣を使うことは知ってたぜ。

 俺の剣は、ただ殺すための剣じゃない」

レオの目に、歪んだ光が宿る。

「生き残るために身につけた剣であり、恵まれた連中とは、覚悟が違う。

 ガキの頃から人を殺してきた……その積み重ねが、今の俺だ」


次の瞬間。

床を蹴る音すら立てず、レオの姿が揺らぐ。

速度が跳ね上がった。

「!」

コールは殺気の揺れだけを頼りに刃を構える。

「守ってばかりか?

 それじゃ勝てないぜ、ホライゾンのコールさんよ」

勢いづくレオ。


「……予想より、数段速いな。

 だが――」

コールは短く息を吐く。


そしてレオが踏み込む。


――暗殺剣・縮地


一気に間合いを詰め、懐へ滑り込む。


――斬。


レオの必殺の一閃だ。

当たった。

そう、思った。

だが。


――逆落。


次の瞬間、コールの姿が視界から消えた。

「……っ!?」

廊下の左右、背後、天井近く――

どこにも気配がない。

「どこだ……!」

その刹那。


――絶。


閃光のような斬撃が走る。

レオの右腕が、血飛沫と共に宙を舞った。

「……え?」

一拍の沈黙。

次の瞬間――


「うあああああっ!!

 俺の……腕が……なんで……!」

建物の中に悲鳴が響く。

コールは無表情のまま、静かに告げた。

「お前の暗殺剣も悪くなかった。

 だが――俺の方が、速かっただけだ」

「生け捕りにさせてもらう」

逃げる隙を与えない。

さらに一閃。

残った腕も床に転がる。

「……止血はしてやる。安心しろ」

淡々と処置に入ろうとした、その瞬間だった。


(……なんで、こんなことに……)

レオの視界に、ヴィクターの顔が浮かぶ。


幼い頃から、殺すためだけに育てられた日々。

子供だからと、大人は油断する。

その隙を突いて命を奪えと教えられてきた。

そんな中で現れた、ヴィクター。

剣を振るい、大人すら斬り伏せる男。

拾われ、守られ、

今度は「兄貴のため」に剣を振るう人生が始まった。

そして仕事帰りに出会ったブレイク。

不器用だが、どこか憎めない男。

3人で笑った夜。


(……足を引っ張るわけには、いかねぇ)

レオは歯を噛み締める。

「カリッ」

小さな音。

口の中に仕込んでいた毒を噛み砕いた。


「――おい、やめろ!」

コールが叫ぶ。

だが、間に合わなかった。

泡を吹き、レオの身体が痙攣し、

やがて動かなくなる。

静まり返るアジト内部。

コールは、しばしその場に立ち尽くし――

静かに目を伏せた。

「……自ら死を選ぶか」

こうして、もう1つの戦いも幕を閉じた。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

マーカス vs ブレイク、コール vs レオの戦いでした。

それぞれ立場は違いますが、彼らにもそれぞれの過去や理由があります。

そして次はいよいよ――

ヨウとエルゼルの戦いに近づいていきます。

次回もぜひご覧ください。

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