其の参 分身の術敗れたり!の巻
「どどんんなな、ももんんででごござざるる」(音声多重)
そこには正真正銘、二人の月影がいた。
二人の月影は、全く同じ身振りで立っている。
「む~、まさかこれほどの術とは・・・」
ひげ太夫の額に汗がにじむ。
「フフン、どうじゃ参ったか?ハゲ太夫」
椿姫は得意満面でふんぞり返っている。
チーン!
その時、ひげ太夫はあることを閃いた。
おもむろに道端の石を拾い、一人の月影に投げつけた。
「えいや!」
「いて!何をするでござるか?」
月影は頭をさすりながらうずくまる。
「ふっふっふ、こっちが本物だな?」
そう言いながら、ひげ太夫は再び石を拾い、もうひとりの月影に投げつける。
「チェストー!」
「いて!何をするでござるか?」
「なに!?」
もう一人の月影も頭をさすりながらうずくまってしまう。
「こっちも本物か?一体どうなっておるんだ・・・?」
「何をしておるのじゃ?」
「いやどちらかが本物で、どちらかが幻影なのだろうと思ったのだが・・・」
「バカめ、月影の術はそんなヤワなものではないわ!」
「ほほう、と言うと?」
「だいたい分身の術が本物と幻影だと、決め付けているところからして間違っておる!」
なるほどと感心した様子のひげ太夫。
「いや姫、種明かしはちょっと・・・」
二人の月影が同時に困った様子で、椿姫に語りかける。
「大丈夫じゃ」
「ナニを根拠に・・・」
ドーン!
「こやつはバカじゃ」
「はぅあ!何!?」
「よし、月影アレじゃ!」
「アレとはなんでござるか?」
「禁断の技、分身の術さらに倍じゃ!」
「!?」
うろたえる月影。
「ひめ、危険すぎます!あの禁断の技は・・・」
「大丈夫じゃ、なぜならば・・・」
ドーン!
「こやつはバカじゃ!」
!?
「むきぃ~」
さすがのひげ太夫も、ここまでコケにされて顔を真っ赤にしている。
「しかし、さすがにアレはマズイでござるよ・・・」
「大丈夫じゃ!行ってしまえ」
「もう後は知らんでござるよ?ナンジャラモンジャラ、ホニャラララ・・・」
ドロン!
モワモワモワ~
煙が立ち込め、やがて晴れると
月影が四人になっていた
「なんと!?」
驚きおののく、ひげ太夫。
しかしよく見ると、何かがおかしい。
四人のうちの一人の、ヨボヨボ感がハンパない。
マスクに隠れて顔はわからないが、腰が曲がりヒョロっとした体格は、風が吹けば今にも吹き飛びそうだ。
さらにもう一人、やけに胸のふくらみのある月影がいる。
「・・・おかしいだろう」
さすがのひげ太夫もつぶやく。
「後から出た二人は、ジジイと女じゃないか!」
!?
一斉に同じ動作で、驚く月影。
しかしヨボヨボ月影は、動作がワンテンポ遅れている。
「・・・さすがにハゲ太夫でも、気付きおったか」
「当たり前だ!」
口惜しそうに椿姫。
「分身の術の正体が、月影ファミリーと見抜くとは・・・。ハゲ太夫、恐るべし!」
「恐るべしじゃない!」
「月影ファミリーの見事なシンクロナイズド感をもってすれば、必ずや騙しとおせると思いきや・・・」
「・・・普通わかるだろう?」
ドロン!
モワモワモワ~
「ひめ~、だから言ったじゃないですか。この技は、禁断の危険な術だと」
煙が晴れて、再び一人に戻った月影が椿姫に言う。
「ハゲ太夫、こう見えてなかなかやりおる」
「普通やるだろう!」
「まあよい、これで勝負は一勝一敗。三番勝負はこうでなくては!」
「それでは最後の勝負はなんだ?」
ひげ太夫が、椿姫に問う。
「そうじゃな、最後の勝負は・・・」
つづく




